この恋、青春により(体験版第1弾ADVパートダイジェスト版)の感想・レビュー

甲子園目指して練習に打ち込んでいたが、不祥事で出場辞退になったので、残りの時間で恋愛に取り組む。
京子ゲーであり最初から好感度マックスなので話の展開と関係性変化のために当て馬ヒロインを登場させる。
「第三者の登場による恋愛感情の変化」のパターン。京子のやきもきする描写を楽しむことが要求される。
祭りに誘われ有頂天になった京子が、主人公くんと当て馬ヒロインとの接吻を目撃して涙目体験版エンド。
この後、恋心を自覚した京子ちゃんがどのような経緯で主人公くんと結ばれるかが物語の主題である。
京子の感情変化に重点を置かれているため、シナリオは淡々と進み主人公くんも主体性がないように感じる。

雑感

  • 京子ちゃんゲー
    • 第一印象としてはすごくあだちみつる作品の雰囲気を感じます。正ヒロインはすでに決定しており、関係性変化をより深めるために、当て馬ヒロイン及び男性キャラを配置させる構造です。恋愛感情が未発達でありオクテな正ヒロインの揺れ動く感情の機微を繊細に描いています!と述べることもできるでしょう。その一方で京子ちゃんも数ある「面倒くさい系ヒロイン」の道を順当に歩んでおり、昨今はなぜこんなに面倒くさいヒロインが跋扈するようになったのかとも思う側面もあります。
    • 京子が面倒くさい系少女になったのにはきちんと理由があり、その過去は京子と主人公くんの家庭環境及び野球に求められるのですが、体験版ではそれが伏線として匂わされるだけで語られません。まぁ体験版で早々に手の内を晒すのもアレだと思いますが、きちんと描いておかないと京子ちゃんが単なる面倒くさい系少女に陥ってしまいそうです。(1)京子の父親が子どもたちに野球への道を強いてしまったこと、(2)京子の兄がおそらく怪我で選手生命を絶たれたのであろうこと、(3)主人公くんも腕を故障しかけていただろうこと、(4)プロ野球選手であった主人公くんの父親。これらが京子√で扱われるテーマとなってきそうです。そう考えると、野球が再び題材として取り上げられるでしょうが、それをどう料理するかが、みものとなるかと思います。雑誌連載での現在の『おお振り』では野球部員の怪我と故障とトレーニングが題材となっていることもあり、割とタイムリーであり楽しみかもしれない。


  • 主人公くんと野球とのかかわりについて
    • ダイジェスト版だからでしょうが、主人公くんの主体性の無さが浮き彫りとなっており、主人公くん何もしねぇ!と思ってしまいます。主体性を発揮したのは京子を祭りに誘ったぐらい??主人公くんの人物像の伏線として「野球への情熱が冷めかけている」ことがうかがわれるので、そこらへんをもう少し内面描写で掘り下げて欲しかったものです。特に、野球部の出場辞退の原因となった不祥事では、事前に主人公くんが万引き事件に気づいており、それを止めることもできました。しかしながら敢えてそれを放置してしまったことが、主人公くんと野球のかかわりを象徴しているのではないでしょうか。もし仮に主人公くんが野球への情熱を失せておらず甲子園を本気で目指しているのであれば、その万引きをしようとしている部員を説得し、対処していたのではないかと思います。主人公くんは逮捕された部員が万引きを犯す前に「野球が楽しいかどうか」を尋ねるのですが、それは根源的に主人公くん自身への問いだったのかと勝手に推察されてしまいます。主人公くんは出場辞退について野球をやめるための良い機会であるとも述べますし、実際に部活動禁止が解除された後でも大会がないとはいえ全く野球部に顔を出さなくなり野球もしなくなってしまうのです。この主人公くんと野球へのかかわりが掘り下げられると話に深みが出そうですね。