そして初恋が妹になる「偽妹1号√」の感想・レビュー

児童虐待を受けたが故に卑屈になり相思相愛なのに愛情を拒絶してしまう主人公くんを救済する話。
類似テーマは結構あり、有名どころでは『かにしの』の「みやび√」が挙げられますね。
妹の将来の幸せを阻害するものは排除する。それが自分であったとしても云々という場面が結構好き。
個人的には兄力を最後まで貫き通し妹のために自分を犠牲にするバッドかビターエンドが良かったんだけど。
最後の最後でヒロインが主人公くんの「親から裏切られたトラウマ」を解消することになりハッピーエンド。
メーカーさま、紙芝居ゲーには鬱エンドも必要だと思うのですよ。離別エンドがあれば個人的には名作。

雑感


  • 妹のためと言いながら根底にあるのは卑屈なんだぜ
    • 主人公くんの学校は突如廃校となり身の振り方を考えなければならなくなります。主人公くんは「高卒」という資格を取れれば良いという考えの持ち主なので、それなりのフツーの学校を希望します。しかしイモウトは優秀だったので東京の有名進学校に転入することが可能でした。理事長もそれを熱心に進め、主人公くんもそれを望みます。しかし妹は兄と一緒が良いと駄々をこねるのです。ここから主人公くんは自分の存在が妹の将来の発展性を奪ってしまっているのではという疑念に苛まされるようになるのです。共に児童虐待を受けたため偽兄妹の契を交わして連帯し世間の荒波を生きてきましたが、それぞれが自立した方が良いのではないかと考えるようになるのです。有能な妹は自分から離れて社会的上層に行くべきだ。そう考えて偽兄妹の契りを解約しようと言い出す主人公くん。ここで偽妹2号の本当の家族が見つかり、あっさりと主人公くんから去っていこうとする姿を見て偽妹1号がブチ切れる描写は結構好きです。妹のためとか言いながら、有能な妹とは釣り合わないと卑屈に思い、身をひことする主人公くんも大好きです。



  • 例え卑屈であったとしても妹を思うココロを貫けよ!!
    • 主人公くんと妹は相思相愛であり、偽妹なので血も繋がっておらず戸籍上も兄妹ではありませんでした。主人公くんがイモウトを受け入れられさえすれば、ハッピーエンドになるのです。この主人公くんの心情変化を如何に描くかが物語後半のテーマとなっています。周囲からは、責任から逃げるな卑屈になるなお前が妹を幸せにしてやるんだと発破をかけられるのですが、最後まで自分の信念を主人公くんは貫き通すのです。しかしこの主人公くんの信念の根底には「親から裏切られたトラウマ」があったのです。親からさえ捨てられた自分が到底誰かから愛されるわけがない強い頸木が主人公くんに嵌められているのです。このトラウマを癒そうと妹は何度もチャレンジするのですが、結局失敗してしまうのでした。そしていよいよ別離を迎えます。ここで選択肢が出て最後まで主人公くんが信念を貫き通せば、それがトラウマによるものであったとしても商品として成り立ったのではないでしょうか?妹の幸せを願うという信念ビターエンドが欲しかった。また最近の作品では寝取られ展開は殆ど見なくなりましたが、エピローグで別のオトコとくっついて幸せそうにしている様子を手紙の近況で知ってバッドエンドとかもトラウマ必須なはず。しかしまぁ本作品はマルチエンディングなどクソくらえとハッピーエンド固定でございます。最後の別れ際にとうとう妹は主人公くんの傷を癒すことに成功するのでした。「愛する女のために駅や空港まで疾走する」というお約束の様式美も提供され二人は結ばれるのでした。