フローラル・フローラブ「美鳩夏乃シナリオ」の感想・レビュー

「階級格差間恋愛モノ」。あるいは「身分違いの恋」。イニシエの昔から使われる物語構造。
途中まで主人公くんが努力して承認されるんだろー(ホジホジ)という感じで読んでいたのだが・・・
主人公くんの必死の努力は穿き違えたものであり、政治的多数派工作のはなしに繋げたのは面白かった。
またラスボスの叔母が最終的な味方であり彼女を取り込むことができるか?という展開も好き。
最後は主人公くんのメンバーが集結し、地位や財産、格式に拘る美鳩一族から承認を貰う大団円。
あと伏線回収として火災の真相が明かされます。

美鳩夏乃のキャラクター表現とフラグ生成過程


  • 階級格差間恋愛
    • 美鳩夏乃は地方領主のお嬢様。無償の愛を持ち主人公くんを救済してくれます。しかしその代償として運を使い果たしており災難がたびたび襲い掛かってくるため、救済された主人公くんがそれを守護するというパターンです。夏乃は最初から好感度マックス。共通√で主人公くんが自分を受け入れ肯定できるようになると、黒髪ヒロインとの天秤イベントが発生し、夏乃を選ぶとフラグが成立します。
    • 夏乃√で題材とされるのは「階級格差間恋愛」であり、お嬢様である夏乃と孤児出身の主人公くんの生まれの違いが描かれていきます。当初主人公くんは諜報と謀略により美鳩一族を突き崩そうとします。しかし自分が上流階級から認められなければ先はないと悟り、テーブルマナーや儀式作法を身に付け正攻法で挑むのでした。まぁここまではありがちで友情努力勝利で主人公くんが認められるんだろーと適当に読んでいました。しかしそこは上手くアレンジをきかせ、「主人公くんの努力などどうでもよく、最初から予定調和で主人公くんを認めないことに決まっていた」という流れにしたところはグッときました。主人公くんに必要だったのは礼儀作法を身につけることなどではなく、多数派政治工作をすることだったのです。
    • 夢破れた主人公くんでしたが、それを支えるのは夏乃の役目。一度は主人公くんを裏切り逃げ出したこともあった夏乃でしたが、ペテロを引用しつつ二度目は主人公くんを裏切らず戻ってきます。そして今一度、美鳩一族と対峙することになったのでした。今度は主人公くんは自分のホームグラウンドに美鳩家を呼び出します。主人公くんを蔑視する有産階級に対して、主人公くんズメンバーから掩護射撃がなされるところは燃える展開。アーデルハイトからは騎士の叙勲を、教会姉妹からは法王の謁見を、黒髪ヒロインからは愛情の保障をそれぞれ受けます→大団円的なノリ。
    • そして主人公くんはラスボスの真意に気付くのです。ラスボスの叔母は、主人公くんに割と露骨なメッセージを送り、自分を味方につけるよう促していたのです。と、いうのも叔母は夏乃を溺愛しており、美鳩一族の長にしたいと考えていたのですが、親族の反対派閥もまた多かったのです。故にこの機会を利用して夏乃を長にしようと画策していたのでした。これを見抜いた主人公くんはラスボスと手を組むことに成功し、夏乃を盛り立てるぜ!とハッピーエンドを迎えることになります。



  • 火事の真相
    • 主人公くんは火事の前後の記憶を喪失していましたが、夏乃と情交を深めることで、それを思い出していきます。幼少期から縁談を持ち込まれるようになった夏乃は辟易して主人公くんのもとへ逃げてきます。その際主人公くんはかつて自分が住んでいたマンションの部屋が空いていることを確認し、そこで逢瀬を重ねるようになります。電気もつけられず蝋燭で明かりを灯す日々。しかしこの生活を通して二人の価値観の相違が顕在化してしまうのです。世間の厳しさを知る主人公くんは窃盗を行うのですが、この行為を夏乃は受け入れられず口論に発展。その時たまたま地震が起こって蝋燭が倒れ、マンション火災が発生したというのが真相だったのですね。
    • この時主人公くんを救ってくれたのが養父の実子であり、主人公くんがカネを盗んだミュージシャンであり、夏乃の叔母が学生時代に惚れていた相手であり、リキエルから祝福を受けた天使だったのです。この際夏乃はリキエルと契約し、主人公くんの命と引き換えに自分の運を使い果たすことと、主人公くんが天に召されないように「地上の鎖」となることが義務付けられたのでした。また夏乃はその人性として誰にも頼らずに生きていける属性を保持していたため主人公くんの「地上の鎖」となるのはとても難易度高いと通告されます。故に報われなかったとしても常に好感度マックスで主人公くんに接し、また主人公くんの幸せのためには自分が身を引く覚悟も背負わなければならなくなったのでした。