彼女、甘い彼女 体験版(夜のひつじ、2015)の感想・レビュー

2016年8月の新作に3段階の時系列順を踏む冬ゲーがあった。
しかし段階時系列踏みゲーとしては『幼馴染と十年、夏』がとても良いと思っている。
そんなわけでメーカー「夜のひつじ」をぼんやり眺めていたらなぜか体験版をやってみる気になったのがコレ。
かつて流行った陰鬱系主人公くんの内面描写が閉塞感をとても良く表現されていると思う。
またヒロインも俗っぽくなく情緒を大切にする思考などが出来ていてほんわかするのであった。

雑感

  • 主人公くんの特性
    • 主人公くんは高校三年生。家庭環境がうまくいっておらず受験を前に学習意欲も低下しており閉塞感に苛まされていました。こういう感情をうまく昇華して個人の目標を社会に位置づけられればいいのですが、そうは言っても難しいのもまた事実。現実にウンザリしていくと焦燥感だの孤独感だの諦念だのが生まれてくるわけですが、これを受け入れてくれる聖母が本作の攻略ヒロインなのです。主人公くんの制服のほつれから家庭環境を察し、裁縫スキルで直してくれるところはとても素晴らしい。
  • 攻略ヒロインの特性
    • 攻略ヒロインは女子校育ちで友達もおり、予備校にも通うリア充なのですが、一風変わった側面を持っています。思春期の麻疹のようなものでしょうが、他者の感情に確信を得たがる少女だったのです。ヒロイン自身は明るく快活なのですが「人文・社会系のモノの見方」を発動させてしまい、凡庸な大衆とはどこか馴染めないところがあったのです。そのため、会話を楽しんでいるのは自分だけではないのか?という負の思考に陥ってしまうのでした。こうしたこともあってかヒロインは河原で泣き出してしまい、それをケアするところから関係性はスタートします。
  • フラグ構築の機能
    • ヒロインは自分と会話していて相手が楽しんでくれているという根拠づけをせずにはいられなかったのです。で、ここからがトンデモ展開。相手が楽しんでくれるという明白な根拠となるものが主人公くんの生殖器だった!!というノリです。興奮して勃起してしまうことが性的快楽ととはいえ、楽しんでいるという客観的根拠となるのです。こうしてメインヒロインは主人公くんを受け入れる聖母であるとともに、主人公くんに受け入れてもらう承認欲求の装置となり相互依存的な関係が構築されるのでした。