シュヴァルツェスマーケン 殉教者たち「共通√〜カティア√」の感想・レビュー

内戦を乗り越え社会主義国ドイツ民主共和国を解放し東西融和を果たすはなし。
政治的信頼性を保証するため義妹を直接処刑せざるを得ず精神崩壊した主人公のテオドール。
そんな彼にカティアは自らが新政権の象徴となることを示すことで奮起させる。
カティアの姿は大衆を触発し大きなうねりとなって革命を起こす引き金となるのだ。
一方テオドールは政敵(戦闘国家の形成を提唱する一派)を打ち倒し、革命を成功に導く。

概要


  • 共通√(アイリスの目的編)
    • 前作「紅血の紋章」で精神的に成長したテオドール。現実を受け入れる強さを得た彼は中隊の中でも頭角を現していく。しかしテオドールは吶喊を繰り返す中で、中隊長のアイリスが仲間を踏み台にしながらも自らの命を顧みず救わんとするその姿に疑問を抱くのであった。このアイリスの背景を紹介するのが共通√の主題となる。政治的信頼性を疑われていたアイリスは自ら兄を処刑することで生き残った。また多くの人々に救われながら、その命を犠牲にしてきた。アイリスの命はもはや個人のものではなく、託されたたくさんの人々の意志を引く継ぐ命だったのだ。そのためアイリスは密告と暴力により国家が成り立つ東ドイツを変えるために生きることになった。作中ではアイリスが反体制派から託された役割として「第666戦術機中隊を『東ドイツ最強』の戦術機部隊として鍛え上げ、有事の際の切り札とすると同時に、国家保安省や軍の政治総本部の注意を引き付けること」と述べられている。中隊はあまたのしかばねの上に成り立っていた。だからこそ中隊は想いを抱えて散っていった者たちの結晶であり、記念碑でもあるため、アイリスは中隊の威信のために命を懸けていたのだ。アイリスを旗印にして革命を起こせ!!という展開になる。



  • 兄妹対決編
    • ここでテオドールの妹;リィズの謀叛のお時間です。案の定、リィズは国家保安省の飼い犬であった。せっかく革命を起こそうとしていた矢先に、機先を制せられてしまう。リィズは兄以外の存在はどうでもよく愛する兄との安寧の日々だけを夢見ていた。世界には兄以外いらない、兄さえいればそれでよいというセカイ系思想を展開するも、兄によりその願いは拒否される。兄妹戦術機対決がここでの戦闘シーンでの見せ場である。テオドールは自らの政治的信頼性のために、直接リィズを処刑するように求められる。リィズは最後まで兄;テオドールのことを想い、反体制派がどのように思われているのかを知らしめるために呪詛の念を吐く演技を凝らしてみせるのだ。そしてリィズを殺害したテオドールは、自分はいったい何をやっているんだと自己嫌悪しながら精神崩壊してしまうのであった。



  • 東ドイツ革命編
    • 精神崩壊したテオドールを立ち直らせたのは、カティアであった。カティアは自ら「東ドイツの英雄将校を父に持ち西ドイツで育った自分なら、アイリスの代わりに新政権の象徴となれる」と提案する。カティアのこの姿はテオドールの心を打ち、再び立ち直らせる。テオドールの前に立ちはだかるのは国家保安省の実質的トップとなったベアトリクス。彼女はテオドールを前にして、東西ドイツの統一は世界情勢として誰も望んでいないことを語る。統一ドイツが誕生すればヨーロッパに強国が生まれる。英仏はヨーロッパにおいてドイツが主導権を握ってしまうという危機を覚えるし、米ソ対立に際してヨーロッパという第三軸が生まれることにもなる。だから誰もドイツ統一など望んでいないのだと。そしてベアトリクスは、東ドイツ東ドイツとして生き残るには、徹底的な管理支配による戦闘国家を作り上げる道を示すのである。このようなベアトリクスに対し、カティアはキリスト教的隣人愛を唱えて対抗。東ベルリン市民たちは立ち上がり、革命を起こすうねりとなる。一部の知識人が革命を起こそうとしてもその火は燃え上がらない。ジリ貧になり追い詰められた民衆が理想に鼓舞され立ち上がることで始めて革命はなるのだ!!カティアの演説に力を得たテオドールはベアトリクスを打ち倒す。こうして東ドイツは解放され、流民たちはアイルランドの一区画に辿り着いたよエンドを迎える。


備考

社会主義思想

いやホントグローバル資本主義の代替案を示せないからポピュリズムになったのでは?

灯火の継承

架空戦記 ドイツ民主共和国(東ドイツ)

この6行目って文脈的にドイツ民主共和国東ドイツ)ではなくて西ドイツ(ドイツ連邦共和国)だとおもうんだけど。