雑録

2016年発売ノベルゲームまとめ

みなさん、こんにちは。毎年恒例の年間まとめシリーズです。2016年に発売された紙芝居ゲーを振り返っていきましょう。実際にフルコンした紙芝居ゲーしかまとめていないので、世間的に評価が高いゲームでもスルーしてしまったものもあるかもしれないのでご容赦をば(※体験版だけやったのも結構ありました)。個人的な雑感としては、SF要素の強い作品が印象に残っています。具体的には『凍京ネクロ』、『ISLAND』、『BALDR HEART』、『Re:LieF』、『あきゆめくくる』など。多世界解釈を表現するモチーフとして、時間操作的なループを用いるのではなく、AIや科学技術、量子力学を引用するという手法です。情報統合思念体による演算の結果としての並行世界というパターンですね(厳密にいえば異なるかもしれませんが)

目次

  • 2016-01-29
  • 2016-02-26
  • 2016-03-25
    • 『まいてつ』(Lose)
  • 2016-04-28
    • 『ISLAND』(FrontWing)
  • 2016-05-27
  • 2016-06-24
  • 2016-07-29
  • 2016-08-14
    • 『interlude 或るファの音眼 〜ワレナいオ〜 (F lo ater)』(ねこバナナ(同人))
  • 2016-08-26
    • 『BALDR HEART』(戯画)
    • カタハネ ―An' call Belle―』 (10mile)
  • 2016-09-23
    • 『千の刃濤、桃花染の皇姫』 (AUGUST)
  • 2016-10-28
  • 2016-11-25
    • 『学校のセイイキ』 (feng)
    • 『枯れない世界と終わる花』 (SWEET&TEA)
    • 『よめがみ My Sweet Goddess!』 (ALcot)
  • 2016-12-22
  • 2016-12-31
    • 『お泊まり恋人ロリータ』 (夜のひつじ)
  • 補論
    • 体験版はやったのに製品版はスルーしてしまったシリーズ

下倉バイオ・深見真『凍京NECRO』 (NitroPlus) (2016-01-29)

近未来SFバトル活劇モノです。アクションシーンでキャラたちがヌルヌルと動きますが動作の側面だけでなくシナリオも結構面白いです。寒冷化が進み「凍京」と呼称されるようになった都市でアンデッドたちとバトルを繰り広げます。死姦、近親相姦、同性愛、暗夜行路などが主題として挙げられており、下層社会にしがみつきながら生き延びる民衆の姿も描かれ地球の終末が良く表現されていてグッときます。崇高なる死を求めるラスボスが主人公くんたちに芸術的に殺されるために様々な策略をめぐらしてくるというのが全体の背景。そして情報統合思念体が物語を動かす核となっており個別√は思念体がハッピーエンドをもたらすために演算した世界ということが明らかになります。「並行世界は思念体による演算」というモチーフはこの作品含め、様々なゲームで散見されてきましたね。


御厨みくり・鋏鷺・伝野てつ・花見田ひかる『罪ノ光ランデヴー』 (minori) (2016-02-26)

体験版がクライマックスだぜ!!minori作品は体験版までは本当に面白いんです!!しかしメインヒロイン以外の攻略ヒロインは世界観を構成するための部品に過ぎません。それをメーカー側も意識したせいか、あいちゃん以外の二人はかなり荒っぽいシナリオとなっています。そしてあいちゃんシナリオも色々とご都合主義満載だったことが印象に残っています。個人的には「絵本」をモチーフにした設定や、『ごんぎつね』をどのように解釈するか?という場面はすごく面白かったので、主人公くんが絵本書いてあいちゃんの琴線に触れさせ転向させるのだと期待していたわけですよ。しかしあいちゃんは勝手に事故憐憫・自己陶酔していくのでなんともはや。さらにそれに対する主人公くんの提示した解決方法が雑すぎます。終局部だけ紹介しておきますと以下の通りです。メンヘラなお前がそんなに罪とか罰とかを求めるなら、俺はお前の幸せのために、村を放火して記憶に刻んじゃうよーン、ほらほら燃えちゃうよーン(演技臭丸出し)→→メインヒロイン「ヤメテー、ワタシガマチガッテイタワー」。本当に体験版までは面白かったので、どうにかならなかったものかと思ってしまうのは私だけではないはず。


 

はと『ノラと皇女と野良猫ハート -Nora, Princess, and Stray Cat.- 』(HARUKAZE) (2016-02-26)

バカゲーギャグゲーの皮をかぶった哲学思想ゲー。前作『らぶおぶ恋愛皇帝 of LOVE!』がより一般向けになっています。地の文をナレーターが読み上げ、それが実は主人公くんのママンだったというのがグッとくる演出です。メインヒロインのパトリシア√はフツーに面白く、死生観をテーマにしながら人間の常識は後に作られたものであるということを抉り出してくれます。それ以外のシナリオは灰汁が強いことかぎりありません。私が一番好きだった良妻シャチ√はこれから面白くなるぜというところでイキナリ終了します、えーっ天界編はやらないんですか?と思わず叫んでしまいました。一方で黒木さん√は無駄に長く冗長的でしかもとてつもなく面倒くさい系ヒロインなのでかなり根気が必要です。ユウキシナリオは今はやり?のビリギャルもの。家庭環境が不幸な子供たちにも勉強を身につけさせたいという主人公くんママンの思いが主人公くんに継承されていて割と感動してしまったのはここだけのはなし。メリトクラシーの逆説や唯物史観に反逆せよ!!またユウキシナリオはヒロインが成功した後に不良時代の怨恨につきまとわれて苦悩する姿がお約束とはいえなかなか良いものとなっています。


 

進行豹『まいてつ』(Lose) (2016-03-25)

地域復興を目指す地方社会のはなし。民衆を無視した地域復興は失敗に終わり、金融資本サイドはとうとう地域環境を破壊する画一的な製造業の大企業を誘致する手段をとります。伝統的な酒屋で育った主人公くんはお家のために立ち上がることに。最初は家のためという個人的動機から出発した主人公くんですが、地方社会の衰退に直面し危機感を抱くことになります。こうして伝統的な共同体を残したまま鉄道を利用した観光産業の開発に着手するのです。主人公くんたちジモッティーVS金融資本の戦いの火蓋が切って落とされたのでした。まぁ金融資本サイドも郷土愛が溢れているのでトリクルダウンが失敗であることに気づくと主人公くんサイド援助に回ってくれるのですがね。地理ネタが豊富であり、地域の伝統的特産品が丁寧に描かれているので、地域ゲーとしても楽しめます。ご都合主義的な側面や被選挙権とかの突っ込みどころは満載ですがシナリオとしてはよくまとまっているかと思います。たぶん鉄ヲタの人とか地域行政専攻の人とかは複雑な感情を抱きそう。


 

ごぉ『ISLAND』(FrontWing) (2016-04-28)

伝奇系近未来ループモノSF。フローチャートがシナリオ読解や並行世界の把握に効果を発揮しておりフローチャートはこう使うんだぜ!?というお手本のような作品です。前半は現代日本の孤島で伝奇パートが扱われ、後半は2万年後の世界で近未来終末思想モノとなります。そして過去にループして世界改編を目指すという展開。一見すると過去跳躍するという流れなのですがそれはみせかけであり、実は同じ時間をループしているのではなく、時間軸は一定・世界線はひとつという構造です。タイムリープ装置は単なるコールドスリープ装置であり、2万年経過しただけというギミック。この作品の設定として「2万年周期」というものがあり、2万年後の世界にかつてと同じような世界が現れるということなのでした。つまりは伝奇的現代世界をA、終末系近未来世界をBとするとA→B→A’→B’→A”→B”→・・・以下繰り返しという世界観になっていることが明らかになります。この2万年周期のバッドエンドをひたすら繰り返しながらトゥルーエンドを目指し、記憶を保持したままのコールドスリープに成功すると強くてNewGame!となり「A」世界を救うことに成功したところで終局を迎えます。B世界は救済されるのでしょうが、それは読者が脳内補完してね!となるのでした。


 

東ノ助『乙女理論とその後の周辺 -Belle Epoque-』 (Navel) (2016-05-27)

ハイパーアンソニーゲー。アンソニー√は間違いなく面白いです。しかし多くのプレイヤーが期待したであろうルナ様とりそなの邂逅については、服飾パートを活かしきれず、日本組とパリ組の交流ももう少し深められたのでは?という感じでした。またメリル√では遊星さんの夜伽に満足できないままのメリルという形で終わります不完全燃焼・・・。こりゃ本編で投げ捨てられたエッテ√のリベンジも微妙なんだろーなぁとポチポチとエンターキーを押していったらあら不思議!?これはエッテ√ではなくアンソニー√であったでござるの巻き。優秀な兄を持つことが強大なコンプレックスとなり思考停止に陥っていたアンソニーが遊星さんとの交流により主体的意志を確立し、巨大な家父長制に挑むところにはハラショーです。そして攻略不能のベルギーヒロイン「難儀ですね」さんが登場。こりゃードイツとロシアとベルギーで「つりおつ商法」されたら買ってしまいそうなほどの可愛さなのでした。


 

瀬尾順・桜城十萌(サブ)『そして初恋が妹になる』(ALcotハニカム) (2016-05-27)

不幸な家庭環境を背景に持つ、青春なんてクソくらえ系の勤労学生主人公くんが自分なりの青春を見つけるはなし。本作は世間からの評価も低く、実際ご都合主義的な展開も多いのですが、個人的には色々と考えさせられる部分がなくもなく、つまらなくはなかったと思います。特に異色を放っていたのが田中√であり、左派的イデオロギーを掲げて資本主義社会に反逆し始めます。啓蒙されすぎると赤とはいわないまでもピンクっぽく染まりそう。田中先輩の労働意欲や勤労意識には目を見張るものがあり、勤勉を内在的なエートスとする姿には尊敬できるのですが、左派臭を匂わせすぎかも?風刺でとどめておけばあてこすりと笑いでとどまった気もします。プロレタリアートなど代替可能な使い捨ての消耗品。さらに日本ではそんな消耗品にパワハラと教育により高い労働意識を刷り込み、労働成果を要求するのですね。閑話休題。社会からつまはじきにされたアウトサイダーたちが自分たちの共同体意識を醸成するという構造はCLANNADっぽくて嫌いになれないんです。

 

高嶋栄二・竜リン(折畑啓助)・紺野アスタ『見上げてごらん、夜空の星を FINE DAYS』 (PULLTOP) (2016-05-27)

メインは先生救済ゲー。バーンアウトして離職しNEETと化した元教員が社会復帰するはなし。周囲から働け働けと言われながらも先生が働かなかったのは、働かないのではなく働けないのであったという事実が判明するところはすごく印象深いです。再就職を目指して就活するもトラウマとなったPTSDが発動しちゃって面接にも行けなくなる描写は古傷を抉りますね。バーンアウトして離職した教員としては天色アイルノーツの主人公くんなんかも該当しますね。私も初任校の過酷な勤務で磨り潰されて離職し、賤吏に甘んじたうえで、もう一度就活して別の所で専任となったので、このキャラたちと共感しちまうんだよォォ。そんなわけで私は挫折系キャラたちが大好きなのです。それはそれとして先生以外ではひなみんが良い味を出していました。期間限定パッチとして√解放されていたひなみんですが、先生に続いて思い入れのあるキャラであり、正規ルートで出して欲しかったと思いました。ひなみんは部長引退後主人公くんひとりとなってしまった天文部に入部してくれた後輩で、二人三脚しながら部を盛り立ててくれた健気さが際立つのです。これだけでも二次創作作れそうやな。ひなみん良かったです。


 

 

呉(呉一郎)『サクラノモリ†ドリーマーズ』 (MOONSTONE) (2016-05-27)

2016年度「体験版がクライマックスだぜ!!」賞その2。寄生獣ミギーよろしく妖怪的な存在を憑依させ怪奇現象を解決していく伝奇?ゲー風味の作品。途中退場してしまう幼馴染のまどかゲーであり、個別√とか(誤解を恐れずに言えば)ホントどうでもいいような内容となっています。『どこあの』で鬱ゲーを書いたライターさんが久しぶりにシナリオ重視の『ノスタルジア』を書いてくれて、それが結構面白かったので『サクラノモリ』の体験版をやりグッときたので購入したのですが、面白いのは体験版までなんだよなぁと思うこと限りなし。頑張って個別まで全部やりましたが、ラスボスとなるヒデサン√後は、とりあえずやったって感じです。幼馴染まどかは非常によく描けており、主人公くんの趣味であるサイクリング(スポーツ用自転車競技)の描写も面白く、友達-ライバル感覚であった仲良しの女の子がさっさと第二次性徴に突入してしまい関係の再編を迫られるところとかはすごく面白いので、体験版だけやって手を引くのも十分ありかもしれません。


 

NYAON『オトメ*ドメイン』 (ぱれっとクオリア) (2016-06-24)

残念女子を完璧超人女装主人公くんが救済するはなし。女装主人公くん系モノの典型パターンである、一番かわいいヒロインは主人公くんですよという『おとぼく』以来に流布した記号を見事踏襲しています。様式美ですね。個人的にはスルーしてもいいかな?と思っていたのですがライターがNYAONさんではないですか!!NYAONさんといえば屈折した主人公くん像をうまく表現することに長けており、『DMF』、『もしらば』、『さくらッセ』と名作を生み出してきました。そんなNYAONさんが『はれてん』以来じつに5年ぶりくらいに筆をとったのですぞ!!とお布施代わりに購入しました。残念女子という記号を消費して楽しむというキャラゲーに主眼が置かれているという感じでしょうか。個人的に好きだったのは中二病徒シナリオ。これまで旧家に縛られて自我を確立できていなかった少女が、中二病に感染することで初めて自意識を持つことができたのに、高校入学後にヲタ友は脱ヲタしてしまい衝撃を受けるという流れは思わずグッときました。


 

籐太・瀬尾順・天宮りつ『千恋*万花』 (ゆずソフト) (2016-07-29)

体験版では伝奇系剣劇バトルの雰囲気を醸し出していたのですがか、製品版では共通√もそこそこにバトルパートは終わります。ライターによってシナリオの出来不出来が激しいの特徴のひとつ。メインヒロインの巫女√はキャラクター消費の傾向が強く、忍者√はシナリオすら投げられてしまうのですが、ムラサメちゃん√の可愛さとレナ√のシナリオの濃さでよく挽回していると思います。実質的にレナ√がグランドエンドで物語の伏線・構造が回収され、伝奇の謎が解き明かされる、という機能を持ちます。それだけでなくレナ√ではフィンランド出身ということで、フィンランドのお国柄や民族的特性、特産品や産業、労働形態などが盛り込まれており地理ネタが豊富で良く作りこまれていると思います。さらにそれらフィンランドの家族的特徴がレナというキャラクター造形に反映されており、家族みんなで一つのところに住むという日本の家族制度と、お互いの目標を尊重し同居しなくても家族愛を持ち続けるというフィンランドの家族が対比され、レナの心のトラウマが解消される描写は個人的におススメの場面となっています。販促がうまかったのも印象的で、カウントダウンムービーを用いた作品の盛り上がりは一種のワクワク感がありましたね。


 

御影『アマツツミ』 (Purple software) (2016-07-29)

言霊信仰ゲー。言霊により相手を意のままに操れる神としての存在である主人公くんが人間界にあこがれて閉鎖的な村を飛び出します。人間界の(世間の)常識がない主人公くんは暴君ともなれる危うい存在だったのですが、そんな主人公くんに婉曲的に介入してくるのが、世界を覚めた目で見る蛍という少女の存在でした。この蛍が、本作の一強メインヒロインであり、基本的には蛍を救済するための一本道です(個別はありますが枝葉のようなものです)。蛍シナリオはホスピス・コピー体・記憶リセットの記号が題材として扱われています。ホスピスとなり世界を呪ったオリジナルの蛍は「健康だけれども1週間で記憶リセットされるコピー」を生み出せるようになったという設定です。で、主人公くんはこのコピー体の方を思慕するようになり、オリジナル蛍に自己を捧げることによりコピー体を救うという展開です。ちなみに1回クリアするとオリジナルとコピー体を融合させて両者及び主人公くんを救えるご都合主義エンドも用意されています。しかしやっぱり見所は1回目であり、コピー体のためにオリジナルと一緒に死んであげるところは結構好きな場面です。


 

籐太、砥石大樹、御厨みくり、龍岳来(龍乃恩)『フローラル・フローラブ』 (SAGA PLANETS) (2016-07-29)

主人公くんをペテロに比定し聖書を引用しながら物語が進んでいくキリスト教ゲーかつ天使リキエルを救うリキエルゲーでもあります。主人公くんを現世にとどまらせるために攻略ヒロインとの絆を結ばせていくリキエルですが、主人公くんはリキエルを救うために現世の絆を解き放ち、ヒロインを捨ててリキエルを選びます。それでもヒロインたちは主人公くんを救うための力となり大団円エンド迎えるのです。近年のサガプラ作品の傾向としてヒロインたちが主人公くんを救うために大同団結する姿が挙げられますが、総集合場面は反射的に気分が昂揚してしまいますね。その一方で、ヒロインの個別√がグランドエンドのための部品に過ぎなくなってしまうという欠点があります。フロフロではアーデルハイト√でそれが特に顕著です。複数シナリオライターの弊害ということもあり、個別のバラつき具合が散見されます。最後に述べておきたいのは利成の存在。主人公くんの目の前に幻影としてちらつく役割を持つのですが、彼にもまたドラマがあるのです。人生の敗残者となりながらもそれでも自己を保ちながら世間の中で生き長らえ存在証明を行います。ぶっちゃけヒロイン攻略するよりも利成の兄貴っぷりの方が作品としては印象深いかもしれない。


 

閂夜明(天村血花)『interlude 或るファの音眼 〜ワレナいオ〜 (F lo ater)』(ねこバナナ(同人)) (2016-08-14)

伝奇系ビジュアルノベル。非常にペースが遅いので数年に一度出るのを心待ちにしています。作品をプレイしただけでは到底回収できない設定や伏線、世界観であるため、私は到底追い切れていません。しかし現代社会を衒学的に分析するテキストが結構グッとくるので買い続けています。完全に断片的な箴言集として読んでいますが、それなりに面白いですよ。アフォリズム。あと伝奇的な雰囲気も醸し出されていて雰囲気ゲーとしてもOK。作風としては読書を仕込まれたがゆえに内省的になった主人公くんがコミュニケーションの際にいろいろと考えてしまいブッとんだ異性たちに振り回される形をとっています。俺たちはまったくシナリオを理解していない。俺たちは完全に雰囲気で或るファの音眼をプレイしているのだ。


 

卑影ムラサキ , 企画屋(サブ)『BALDR HEART』(戯画) (2016-08-26)

サイバーパンクシリーズ。最近はやりのミーム拡散がテーマ。実際には存在しない電子体がミーム拡散により多くの人々により観測されたことにより実体を持ったという展開で、それがメインヒロインであるというわけです。SKYシリーズと比べると世界観はこじんまりとしており、結局はジジイの未練が物語を動かす根源です。デザイナーズチャイルドとセクサドールが駆け落ちしたけれども夫婦生活は破綻し、ジジイはやり直しを求めます。死んでしまった電脳体の情報を全ての情報が蓄積されているというアカーシャ(阿迦奢)から抜き出し肉体に転化させようとするのがリンカーネーション(輪廻機構)であり、主人公くんはこの陰謀を阻止するためにバトルを繰り広げることになります。またバルドシリーズでは兵器開発が一種の醍醐味でしたが、某艦これの影響を強く受けており、従来の兵器開発が兵装少女として擬人化されてます。


 

J-MENT『カタハネ ―An' call Belle―』 (10mile) (2016-08-26)

2007年に発売された名作のリメイク。人工人形を題材にした百合ゲー。私は現役の時に2007年版をプレイして挫折していたのですが、10年の時を経てリメイク版を読破しました。史劇を通して様々な登場人物を描き出す群像劇ということを念頭においてプレイしましょう。物語のテーマは流布されている歴史とその真相の齟齬を解明すること。具体的には、国を裏切り逆賊とされていた宰相の汚名を雪ぐのです。シナリオの流れとしては、ワナビであるムキィー系ヒロインが実績を残すべくを演劇の脚本を書き上げることを目指します。そしてパトロンから支援を引き出す条件として脚本の舞台となる場所の現地訪問を要求され、皆で大陸1周旅行と洒落こみながら演劇に出演する役者たちを集めていきます。構造としては「AIR構造」であり、現代編から過去編へと飛び、そこで物語の真相が明かされ、宰相が逆賊でないことが明かされます。そしてまた現代へと移り、演劇の完成を目指す中で、過去編の真相が究明されていくというスタイルをとっています。


 

榊原拓・内田ヒロユキ・安西秀明『千の刃濤、桃花染の皇姫』 (AUGUST) (2016-09-23)

ユースティアと同系統で主体的な意志の確立を唱えるゲーム。『コードギアス』を読んでいると思っていたら『朝霧の巫女』だったでござるの巻き。米帝に植民地支配され、皇族が宰相の傀儡と化した日本が舞台。主人公くんたちはクーデタを起こそうとした準備していたけど、結局蜂起は失敗に終わります。そして逃亡先で前世編が紹介され、真の敵は善悪二元論的な「悪意」の存在であることが明かされるのです。「ひかり ある かぎり やみ も また ある……」というドラクエ3のゾーマよろしく、主人公くんたち皇族サイドが存在する限り、「悪意」はどんなに討伐しても討伐しても手を変え品を変え次第に強大になりながら襲い掛かってくるという寸法です。最初は米帝VS日本という構造でしたが、米帝すらこの「悪意」の意図により形成されたに過ぎないことが暴露されます。悪役を張っていた宰相が実は良い奴パターンだったこともあり、あーあって感じが半端ないかもしれません。最後は主人公くんが主体的な意志を確立したことにより悪意が成敗されます。どこまでいっても主体的な意志の確立ゲーなのでした。


 

 

平乃ひら・雫将維・えある・とべあきら『Re:LieF 〜親愛なるあなたへ〜』 (RASK) (2016-10-28)

イジメを受けていた主人公くんがAIとの交流を経て精神的な成長をするはなし。幼少期、主人公くんはAIに指導されて上達したピアノの腕前によって、自分をイジメた世間を見返そうとしていました。しかしここで交通事故発生→植物人間状態となります。こうして昏睡した主人公くんの意識は仮想空間で保護されるのですが、この仮想空間に「社会復帰プログラム」で釣られた攻略ヒロインたちがやってきます。体験版はここからスタート。グローバル資本主義に適応できず磨り潰された若者たちが、再チャレンジする社会を要求するため、再び学園生活を送ることになります。体験版の語り部となるのはリストラされた女性。上司のパワハラに委縮しビクビクオドオドした結果、己のパフォーマンスをうまく発揮できず、発表がうまくできないようになってしまい、リストラされてしまったのです。この女性は以来プレゼンがトラウマとなってしまうのですが、主人公くんたちのチームにより過去の呪縛から解き放たれプレゼンを成功させるという内容となっています。しかしこの体験版は本当に釣りであり、再チャレンジモノを期待して買うとなんともはや!幼少期のイジメを克服するのと、社会に出てから適応できず敗残者となった若者では全然違うよなぁと思ったのでした。


 

山崎彬・内田弘樹シュヴァルツェスマーケン 殉教者たち』(age) (2016-10-28)

冷戦構造化の東ドイツ(ドイツ社会民主共和国)をモチーフにした架空戦記の後編(分割商法)。わりと面白いのですが、これ分割商法にしない方が良かったのではないか?と思うことしきりです。主人公くんは東ドイツから亡命しようとしたときに家族を虐殺されたことをトラウマに持つ少年。ゆえに当初は閉鎖的で内向的かつ自分が生き延びられればそれでよいという利己的な行動を繰り返していましたが、西ドイツ(ドイツ連邦共和国)からやってきた一人の少女によって次第に考えを改めていくようになります。こうして上官の意図を汲み取れるようになった少年は大局的な視野や自己の生存証明を獲得していきます。ここまでが前作の「血の紋章」。本作の「殉教者たち」は前半部分で大規模吶喊作戦を成功させるまでが描かれ、後半で東ドイツ革命が描かれます。原作小説以外の並行世界エンドをウリにしていたようですが、上官エンドもイモウトエンドもなんか消化不良であり、やっぱり正史が一番面白かったのはここだけのはなし。やっぱり革命を成功させるためのドラマはグッときます。


 

なかひろ『学校のセイイキ』 (feng) (2016-11-25)

抜きゲーと化してしまった聖域シリーズの成れの果てでございます。なかひろ先生はどこか影持つ主人公くんが問題抱えたヒロインたちとの交流を経て成長していく姿を描くのがとても素晴らしいと思うのです。聖域シリーズでも『彼女のセイイキ』は「没落お嬢様の虚勢」が丁寧に描かれていましたし、『妹のセイイキ』も粗製乱造されるイモウトモノの中でも頑張ってたと思います。しかし、しかしですよ!?『学校のセイイキ』はキャラクター表現やフラグ生成過程をすっ飛ばし生殖行為に突入。段取りを大切にし、因果交流による関係性変化を期待していると大変な目にあってしまいます。ロシアっ子は聖域シリーズ最初から伏線が張られ、すごく楽しみにしていたのですが、ご覧のあり様でした。メーカー様、なぜ方針を抜きゲーにしたのでしょうか・・・・


 

雪仁『枯れない世界と終わる花』 (SWEET&TEA) (2016-11-25)

社会の不条理と戦う孤児たちが、世界の不条理を背負うことになり、主人公くんはその解放を目指して世界改編に挑むおはなし。世界観としては、天使と呼ばれる存在が人間を人身御供として神に捧げることにより世界が維持されているという設定です。この天使の役目を持つシスターが社会の不条理と戦う主人公くんたち孤児を保護してくれて、絆を結びます。しかしシスターは最後の時を迎え死亡。何も言わずにシスターが去ったため、仲間たちは裏切られたと思ってしまいます。さらにそこへ流行り病が発生し、孤児仲間たちは死にかけてしまうのです。ここで主人公くんは神に祈ったことによりヒロインズたちが天使に存在を昇華させ何とか生き延びます。しかしこれはシスターの天使としての役目をヒロインズたちが引き受けることになっただけで、苦しみの連鎖は引き継がれることを意味していました。主人公くんはヒロインズたちを天使としての役目から解放させ、世界を改編するため神の意志へと挑むのでした。


 

モーリー・空下元『よめがみ My Sweet Goddess!』 (ALcot) (2016-11-25)

前世で罪を犯したアンゴルモアが人間に転生、善行を積んで天界復帰を目指すはなし。ハイパーインセストタブータイムだったのが印象的。炉利ママァことアイリスは前世では主人公くんのイモウトであり主人公くんが闇堕ちすると魂を自己に取り込んで息子として転生させる。そして今度は息子と結ばれるのである。業が深い。またリコリスは主人公くんの娘。前世で主人公くんはもう一人のイモウトと結ばれており孕ませていた娘がリコリスなのでした。で、リコリス√では自分のイモウトとの娘と結ばれてしまうというこれまた業が深い展開。まぁ古事記の世界とかではよくあることですね。そしてシナリオとしてはフツーだったのですがキャラクター造詣として特筆すべき存在として「アルミホイル系委員長」の存在を明記しておかねばなるまいて。一種のこじらせ系女子ともいうべきでしょうか?手段と目的をはきちがえてしまい正しくあることが自己目的化してしまった面倒くさい少女の類型を描いたのでした。


 

渡辺僚一『あきゆめくくる』 (すみっこソフト) (2016-12-22)

量子力学ブコメディな哲学思想ゲー。遺伝子操作されたデザイナーズチャイルド、宇宙から飛ばされたコネクトームを書き込まれた光人間、ウィルスを投与された理系複合人格少女ドゥルキス、そして並行世界を認識できる情報統合思念体が攻略ヒロインです。観測による確定が主眼とされており、現在の観測によって過去が変わる論や、現在の私たちはシミュレーションの演算による多世界解釈の一部に過ぎないのだ論が登場して大興奮すること請け合いです。また本作の量子力学要素は、SF系作品の2016年を締めくくるような印象にあり、『凍京ネクロ』、『ISLAND』、『BALDR HEART』、『Re:LieF』などを思い起こすのでした。それだけSFモノで量子力学的作品が生み出されているのかもしれません。そして事実上グランドエンドである轟山サトリ√において、全ての並行世界を認識できる少女がどの世界線でも自分と主人公くんが結ばれないことに愕然として干渉をしかけてきたことが提示されます。宮沢賢治の「因果交流」を引用して、仰向けになりながら自らの思想信条を語り合う場面は意識的に『サクラノ詩』をパロってるんですよね?個人的に好きだったのは量子力学解説担当のウィルス「ドゥルキス」さん。クール系少女に(こちらの理解はともなく)専門的な話を説かれるのが好きという属性を持っていることもあるのですが、それを差し引いても面白いです。現在の観測によって過去が変わるというのは歴史哲学的な側面もあるのでグッときました。幼馴染√は白露擾乱編がきちんとあればもっと面白かったかもしれない。


 

porori『お泊まり恋人ロリータ』 (夜のひつじ)

社会人の悲哀シリーズ。傷の舐め合いモノ。前職がキツくて転職した主人公くん。新しい仕事が始まる前の空白の時間に炉利少女と出会います。その炉利少女は良いところの子女なのですが私生児であり存在を疎んじられていたのです。ネグレクト状態であり満足に食事も与えられない少女に慈悲をかけたのが全ての始まり。Pity is akin to love.よ。しかしそんな憐みの心は少女に見抜かれており、いつか自分が邪魔になると指摘されるところはおススメですよ。シナリオ的には短編なのでわざとライトにしてあるのでしょうが、個人的には主人公くんが資本主義社会に磨り潰されて辞職することになったいきさつや炉利少女での家庭や学校での迫害っぷりなどの掘り下げをして欲しかったです。あと生殖行為よりも歯磨きとかの描写の方がきゅんきゅんきたのは私だけではないはず。人生に疲れた時にプレイするのが良いかと思われます。