改定案がでる以前、アクティブラーニングの影響もあり、新学習指導要領では「内容」だけでなく、「教え方」や身につけるべき「諸能力」に重点が置かれるとされていた。その予想のように改定案では行う「活動」や身に付けるべき「歴史的諸能力」が学習指導要領において明確化された。文部科学省が求める「活動」とはどのようなもので、身に付けるべき「歴史的諸能力」とはいったいどのようなものなのだろうか。
ここでは平成29年2月14日に公表された中学校学習指導要領案の中学校社会科歴史的分野の「活動型」学習や「諸能力」の記述ついてまとめていく。
社会科全体の目標
- 第1 目標
- 社会的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して……
- (1)
- ……調査や諸資料から様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする…
- (2)
- 社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を多面的・多角的に考察……
- ……社会に見られる課題の解決に向けて選択・判断したりする力……
- ……思考・判断したことを説明したり,それらを基に議論したりする力……
- (3)
- 社会的事象について,よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとする態度……
1 目標(歴史的分野)
- 全体
- 社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動
- (1)
- 諸資料から歴史に関する様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする
- (2)
- 歴史に関わる事象の意味や意義,伝統と文化の特色などを,時期や年代,推移,比較,相互の関連や現在とのつながりなどに着目して多面的・多角的に考察したり,歴史に見られる課題を把握し複数の立場や意見を踏まえて公正に選択・判断したりする力,思考・判断したことを説明したり,それらを基に議論したりする力
- (3)
- 歴史に関わる諸事象について,よりよい社会の実現を視野にそこで見られる課題を主体的に追究,解決しようとする態度
2 内容(歴史的分野)
A 歴史との対話
- (1) 私たちと歴史
- ア-(イ)
- 資料から歴史に関わる情報を読み取ったり,年表などにまとめたりするなどの技能
- イ-(ア)
- 時期や年代,推移,現在の私たちとのつながりなどに着目して,小学校での学習を踏まえて歴史上の人物や文化財,出来事などから適切なものを取り上げ,時代区分との関わりなどについて考察し表現する。
- ア-(イ)
- (2)身近な地域の歴史
- ア-(ア)
- 地域の歴史について調べたり,収集した情報を年表などにまとめたりするなどの技能
- イ-(ア)
- 比較や関連,時代的な背景や地域的な環境,歴史と私たちとのつながりなどに着目して,地域に残る文化財や諸資料を活用して,身近な地域の歴史的な特徴を多面的・多角的に考察し,表現する
- ア-(ア)
B 近世までの日本とアジア
- (1)古代までの日本
- (2)中世の日本
- イ-(ア)
- 武士の政治への進出と展開,東アジアにおける交流,農業や商工業の発達などに着目して,事象を相互に関連付ける
- 中世の社会の変化の様子を多面的・多角的に考察し,表現する。
- イ-(イ) 中世の日本を大観して,時代の特色を多面的・多角的に考察し,表現すること。
- イ-(ア)
- (3)近世の日本
- イ-(ア)
- 交易の広がりとその影響,統一政権の諸政策の目的,産業の発達と文化の担い手の変化,社会の変化と幕府の政策の変化などに着目して,事象を相互に関連付ける
- 近世の社会の変化の様子を多面的・多角的に考察し,表現すること。
- イ-(イ)
- 近世の日本を大観して,時代の特色を多面的・多角的に考察し,表現すること。
- イ-(ア)
C 近現代の日本と世界
- (1) 近代の日本と世界
- イ-(ア)
- 工業化の進展と政治や社会の変化,明治政府の諸改革の目的,議会政治や外交の展開,近代化がもたらした文化への影響,経済の変化の政治への影響,戦争に向かう時期の社会や生活の変化,世界の動きと我が国との関連などに着目して,事象を相互に関連付ける
- 近代の社会の変化の様子を多面的・多角的に考察し,表現すること。
- イ-(イ)
- 近代の日本と世界を大観して,時代の特色を多面的・多角的に考察し,表現すること。
- イ-(ア)
- (2) 現代の日本と世界
- イ-(ア)
- 諸改革の展開と国際社会の変化,政治の展開と国民生活の変化などに着目して,事象を相互に関連付ける
- 現代の社会の変化の様子を多面的・多角的に考察し,表現する
- イ-(イ)
- 現代の日本と世界を大観して,時代の特色を多面的・多角的に考察し,表現すること。
- イ-(ウ)
- これまでの学習を踏まえ,歴史と私たちとのつながり,現在と未来の日本や世界の在り方について,課題意識をもって多面的・多角-的に考察,構想し,表現すること。
- イ-(ア)
3 内容の取扱い(歴史的分野)
- (1) 内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする
- イ
- 調査や諸資料から歴史に関わる事象についての様々な情報を効果的に収集し,読み取り,まとめる技能を身に付ける学習を重視すること。その際,年表を活用した読み取りやまとめ,文献,図版などの多様な資料,地図などの活用を十分に行うこと。
- ウ
- 歴史に関わる事象の意味・意義や特色,事象間の関連を説明したり,課題を設けて追究したり,意見交換したりするなどの学習を重視して,思考力,判断力,表現力等を養うとともに,学習内容の確かな理解と定着を図ること。
- ク
- 民俗学や考古学などの成果の活用や博物館,郷土資料館などの施設を見学・調査したりするなど具体的に学ぶことを通して理解させるように工夫すること。
- イ
- (2) 内容のAについては,次のとおり取り扱うものとする。
- 「課題を追究したり解決したりする活動」については,歴史を追究するために,課題意識をもって学ぶことを促す適切な学習活動を設けるような工夫をする
- 「年代の表し方や時代区分」の学習については,導入における学習内容を基盤にし……継続的・計画的に進めること。
- 「時期や年代,推移,現在の私たちとのつながり」については……事象相互の関連などにも留意し,それぞれの時代でこれらに着目して考察することが大切であることに気付かせること。