雑録

水葬銀貨のイストリア「TRUE END」の感想・レビュー

物語の全ての悲劇の根源は「長寿系炉利BBAの寂しさ」だったというおはなし。
人魚として覚醒した主人公くんこと茅ヶ崎英士は全ての悲劇を回収することに成功。
そして最後はラスボスでもあり裏ヒロインでもある炉利BBA紅葉をポーカーで打ち倒す。
紅葉が長寿で寂しくて何度も悲劇を起こすというのなら、主人公くんがすべての悲劇を防いでやる!
こうして紅葉の心の隙間を埋める生涯をかけての攻防が、今、始まったのでしたとさ。
茅ヶ崎英士の活躍はこれからだ!!ルクル先生の次回作にご期待くださいエンド。

裏ヒロインは紅葉であり正ヒロインは小夜だが最後まで主人公くんにはべるのは玖々里


  • 宗名先生射殺編
    • 主人公くんは小夜の父でもあり、自分の養父でもあり、ポーカーの師匠でもある宗名先生を射殺しています。このことは幾たびも触れられてきましたが、どのように射殺したのかがグランド√では克明に描かれます。拉致監禁事件により主人公くんのこと架空の兄とし、心の平穏を保つようになった小夜さん。しかし次第に症状は悪化をたどる一方だったのです。主人公くんはこの小夜のPTSDを何とかするために治療費を求めるようになったのですが、これに目をつけたのが久末紫子だったのです。紫子は主人公くんを変装させカジノに入り浸りになるようにさせました。これにより主人公くんは小夜のためにという一方で家を留守がちにしてしまうのです。このことが小夜の症状を悪化させているとも知らずに。そしてついに小夜は錯乱し、窓から飛び降り自殺を図ります。本当にこの作品は自殺未遂が好きね。
    • そんなわけでラストチャンスと言わんばかりに主人公くんは我が身を賭博の対象としてポーカー勝負に挑むのですが、そこには宗名先生も参加していたのです。他の参加者を蹴散らしタイマン勝負となったのですが、ここで主人公くんは死にたくないという欲求が出てしまいます。これを見た宗名先生はわざと自分が敗北し、主人公くんを勝たせたのでした。けれども主人公くんの詰めは甘く、治療費を獲得したものの、治療を受けられるとは確約されていませんでした。このことが茅ヶ崎征士に利用され、主人公くんが宗名先生を射殺すれば小夜の治療を優先的に受けられるようにしようと持ち掛けられます。こうして主人公くんは引き金を引き、宗名先生を殺したのでした。
    • ちなみにこの時に、小夜を人魚の涙で治療したのは久末紫子さん。



  • 宗名先生は妻を寝取られており小夜は主人公くんの異母兄妹でした。
    • 大学助教授であった宗名先生は賭博場で静琉さんに出会います。静琉さんはカジノの花形ディーラーであり、誰しもが性交をして孕ませたいと望んでいたのです。そんな静琉さんと恋仲になったのが宗名先生だったのですが、茅ヶ崎征士もまた静琉さんを狙っていたのです。しかしこの時にはもう既に宗名先生と静琉さんの関係は深まっており、茅ヶ崎征士が付け入る隙はありません。そして茅ヶ崎征士は露骨に静琉さんにアプローチを仕掛けたせいで賭博場のチンピラたちにリンチにあって死にかけます。そんな茅ヶ崎征士を助けてしまったのが静琉さんであり、人魚の性質である無償の奉仕を発動させ、人魚の涙で傷を癒してしまうのです。助けてもらった茅ヶ崎征士は静琉さんを強姦。この時に孕んだのが小夜さんであり、主人公くんの異母妹となりました。
    • 宗名先生は静琉さんを堕胎させたかったのですが、どんな命でも生みたいと静琉さんは言い出します。これにはさすがの宗名先生も納得できません。レイプ犯の子どもを自分が育てるだと!?最終的に静琉さんの意志を尊重することになるのですが、悲劇は重なるもので、静琉さんは出産によって死んでしまうのです。最愛のヒトが亡くなり強姦魔の子どもが残った。悲しみに暮れる宗名先生でしたが、生まれたばかりの小夜さんを見ると、そこには静琉さんが残した命が息づいており、小夜さんを育てる決意をするのでした。



  • 茅ヶ崎桜の執着
    • 主人公くんたちの実母;桜に関する話。様々な悲劇が付与されている我らが主人公くんですが、母親が自分たちよりも茅ヶ崎征士を優先するというトラウマも植え付けられています。茅ヶ崎征士は肉欲を解消するために容姿の良い哀れな女;桜を口説き落としていたのですが、メンヘラ気味であった桜は茅ヶ崎征士に婚姻を求めます。なんと与えられた避妊薬を飲まずに主人公くんを孕んだのです。この執着心に茅ヶ崎征士は桜を見直すようになり、籍を入れたのです。桜の盲愛はとまらず、茅ヶ崎征士のドメスティックバイオレンスにもめげません。茅ヶ崎征士は思い知らしめるために二人目を孕ませまた(この子どもが夕桜)のち、蒸発するのでした。主人公くんと夕桜にとって不幸だったのが、桜は子どもよりも夫を優先させたことでした。桜は英士と夕桜を愛しており、母子家庭で低賃金長時間労働に身を粉にして働いていたのですが、貧窮には理由があり、毎月少なくない額を茅ヶ崎征士の銀行口座に振り込んでいたのでした。主人公くんは常々、二番目に愛していると言われていたので、このこともまた主人公くんに心の傷を残していたのです。



  • 茅ヶ崎征士撲殺編
    • 各個別√ではアッサリと殺害されてしまう茅ヶ崎征士ですが、グランド√では主人公くん自らが茅ヶ崎征士を撲殺します。ここで夕桜の伏線が回収されます。夕桜が窓を開けっぱなしにすることを好み、日夜金属バットの素振りを欠かせない理由が判明します。夕桜は小夜と親友になり、偶然遊びに来ていたのですが、そこで拉致監禁にあったのです。窓から逃げようとしてもロックを解除できず逃げられなくて、バットを持って戦っても倒せなかった。そんな過去があったからこそ、監禁事件終了後も、常に夕桜は窓を開けるようになり、茅ヶ崎征士を撲殺する日を夢見てバットを振り続けてきたのでした。兄が辛い過去を背負ったからこそ、茅ヶ崎征士を殺すのは自分でなければならないと意気込む夕桜でしたが、殺しきることができません。夕桜に人殺しの罪を負わせたくない主人公くんはピンチに駆け付け、夕桜の代わりに茅ヶ崎征士に引導を渡すのでした。撲殺。



  • 如何にして小夜はメンヘラとなりしか
    • 主人公くん窓から飛び降り自殺
      • 監禁事件の後、小夜は主人公くん依存症となってしまいます。そして主人公くんがいないと発狂するようになってしまいます。この小夜発狂、幼少期の頃のものは本物であったものの、成長後の発狂は実はブラフであり、小夜が主人公くんを繋ぎ留めておくためのものであったというのが注目するべきポイントでしたよね。しかしながら幼少期に小夜発狂を起こさせた最後のトリガーを引いたのは主人公くんであったことが判明します。
      • 上記のように小夜は実は主人公くんの異母妹だったのですが、主人公くんは小夜に強姦により孕まされた子であることを知ってほしくなかったが故に、自分は兄ではない言ってしまうのです。これにより小夜はPTSDを発動させ、主人公くんに死んでくださいとまでと叫んでくるのです。ここで主人公くんの心が折れます。監禁事件で凄惨な目にあい、ついには死んでくださいとまで言われてしまう。こうし主人公くんは、小夜の兄依存を解消するために、兄としての自分が小夜の目の前でいなくなればよかろうと思い、自分は兄だよ、小夜の兄だよ、そして死ぬと小夜の目の前で窓から飛び降ります。幼少期の小夜にこのことが耐えられるはずもなく、最後に発狂スイッチを押してしまったのは主人公くんだったのですね。
    • ちなみにこの時に自殺した主人公くんを治癒したのが、久末柴乃。この治療により小夜のトラウマやPTSDは完全に解消されます。これ以後、小夜は主人公くんを引き留めるために、わざと発狂する演技をするようになっていくのです。



  • 久末紫子の姉妹事情
    • 個別ヒロイン√では玖々里姉妹の凄惨な人魚姫の悲劇が描かれましたが、悲劇の人魚姫姉妹はもう一組いましたよというおはなし。神峯灯さんがまだ衛宮さんたちのように正義の味方を志していた頃、久末姉妹に出会います。久末道理は人魚の涙による奇跡の治療を行っていたのですが、新たな人魚を手に入れるため、人体実験をもおこなっていました。この実験の一種として、人魚の子どもは人魚であるという仮説があり、久末道理は自分の子種で人魚を孕ませまくっていたのです。これにより誕生したのが久末紫子と柴乃の姉妹。最初は柴乃が人魚として覚醒し、柴乃は命を削りながら他者を癒す涙を搾り取られていきます。
    • そんな中、希望を与えてしまったのが、正義のヒーローと名乗っていたころの神峯灯であり、久末病院に潜入すると、姉妹を救いだす約束をします。神峯灯はこの後、強制排除されてしまったので、姉妹を助けられなかったのですが、柴乃は最後まで希望を抱いて死んでいきます。これまで泣けなかった紫子は、実のイモウトの死を目の当たりにして、涙を流し、人魚として覚醒します。紫子は茅ヶ崎征士に利用されながらも久末病院の支配を脱します。
    • 紫子が抱いていたのは、自分たちの涙を利用するだけ利用して感謝も何もされなかったという怨念。そのため、自分のために泣いてくれる人魚を探していたのです。グランド√に入る以前、玖々里を犠牲にするか、夕桜を犠牲にするかで選択肢が与えられるのですが、どちらを選んでも、別に選ばれなかった方が死んだりはしないという事情が明かされます。自分のために泣いて欲しかったと述べる紫子ももう寿命が尽きかけておりました。この時に主人公くんが人魚として覚醒し、紫子のために涙を流すのです。これにて紫子の未練は解消。しかしながら人魚の涙は人間を治癒するためのものであり人魚には効かないことが紅葉によって意図的に隠されており、主人公くんが涙を流しても、紫子は復活することなく、泡となって消えていくのでした。



  • 炉利BBA八椚紅葉は寂しがり屋さんエンド
    • ラスボスバトル。紅葉も案の定、人魚でしたよってはなし。紅葉もかつて無償の奉仕により人魚として目覚めたのですが、人間に利用されるのがバカバカしくなり泣くのをやめた存在でした。本来なら、人魚は涙を流さなければとても寿命が長い生き物だったのです。しかし人魚はほっとくと何にでも自己犠牲を示してしまい死んでしまうのです。それゆえ、紅葉は人魚の保護を実行していたのです。それは自分が寂しくないように手元に置きたいがためだったのです。主人公くんには脳内分泌物を弄ってまで自分に欲情させることまでします。悲劇を与えれば人魚として覚醒する人々が増えるので、紅葉は様々な悲劇を引き起こしてきたのです。
    • つまり全ての根本原因は「長寿である炉利BBAの寂しさ」にあったのです。このことに気づいた主人公くんは狂言状態で行うポーカーで紅葉を屈服させ、紅葉の寂しさを埋めるのです。紅葉が悲劇を生み出すというのなら、自分はその全ての悲劇を止めてやると。こうして紅葉の寂しさを埋めるための生涯にわたる闘いの火蓋が切って落とされるのでした。紅葉との戦いに際して、主人公くんの傍らに残ったのは、主人公くんに無条件信頼を捧げる玖々里。主人公くんは生涯のライバル(紅葉)、自分の理解者(玖々里)、そして神峯灯や小不動ゆるぎなどの協力者を得て「TRUE END」を迎えます。