- この本の趣旨
内容抜粋
- 略奪と労働力使役としての賠償(pp.44-45)
- ドイツ人捕虜の精神状態(p.66)
- 多数派屈辱感、自己嫌悪に囚われながら、生き残るための生存競争に必死だった。この点では強制労働収容所の「人間が人間に対して狼となる」状態と同じである。異なるのは、「遠くない将来に」帰国できる希望がある点で、それまで音楽などの娯楽、文化活動に慰め、生き甲斐を見出して堪えられた点であろう。
- ドイツ人捕虜の過酷な使役(pp.83-84)
- 満州棄兵政策(p.89)
- ……「関東軍作戦計画訓令」(昭和20年1月)中の「対ソじきゅせん考案の基本方針」には、次のように記されていた。「持久作戦により主たる抵抗は国境地帯に於いて行い、これがため兵の重点は成る可く前方〔国境より〕に置き、これら抗戦部隊はその地域内に於いて玉砕せしめる。兵力の二重使用、武器資材の追送補給は原則として予定しない」。……まさに棄兵である。
- 満州敗残兵(p.103)
- 敗残兵の小説形式の回想記としては、五味純平の『人間の條件』(1956-58年)に勝るものはない。「無敵関東軍」が敗れた時の惨状、天皇制軍隊の階級制度と一般社会、植民地に対する優越と差別を、主人公「梶」上等兵の部隊と周辺の出来事をとおして見事に描いている。そのインテリ文学青年の「梶」も、敗残兵仲間や中国人を殺してしまう。他方、ソ連の略奪、暴行を被害者たちから聴いて、ソ連に対する好感も消え去る。捕虜になって尋問されたときに「あなた方の理想が正しかったから、ドイツにも日本にも勝ったに違いない。けれども、勝利者にだって戦争の犯罪はあるのですよ」と語った。
- 主人公は収容所を脱走し、雪の中を彷徨して倒れ、恋人を瞼に浮かべながら息を引き取る。同名の映画でも有名なラストシーンである。
- カニバリズム(p.139)
- 抑留生活川柳(p.144)
- はじめてのみんしゅしゅぎ(p.145)
- 千島列島占領戦(p.182)
- 企業の国有化、計画経済導入(pp.187-188)
- 一九四六年二月の幹部会令は南樺太のソ連編入のほか、大企業、鉄道水運、通信、公共事業の国有化を規定し、実際に六八二の企業が国有化された。
- 企業が国有化されると、日本人の働き方にも変化が生まれた。企業は自立性を失い、計画経済の下でソ連官庁出先機関、ソ連人管理職の指揮下で動かされるようになり、日本人労働者にも作業ノルマと厳しい労働規律が課されるようになった。
- 石炭産業では、欠勤や職場放棄、「消極的サボタージュ」に近い労働ぶり、きわめて不十分な規律が横行した。その原因は、食糧供給が悪く、賃金の遅配があり、医療衛生サービスも不十分だったからである。通訳がごく少数しかおらず、作業指示伝達が困難だったこと、労働者が計画・ノルマ制度に馴染めず、本土に帰りたくて仕事に身が入らなかったことも大きな要因だと思われる。