アオイトリ・体験版v1「始まりの3日間」の感想・レビュー

閉鎖空間(僻地の学園)における超常の存在(神・悪魔・吸血鬼等)を題材にした死生観を巡る少女救済モノ。
体験版では自殺を願う厭世した吸血鬼の少女に生命への意志を付与するところまでプレイできる。
主人公くんはかつて一人の少女を自殺させており、その少女が悪魔として物語を進めさせるピエロとなる。
この悪魔少女を救済することがおそらく物語全体の目標となるのでしょう(と勝手に思っている)。
さぁサブヒロインを救って主人公くんを覚醒させ、自殺させた少女の魂を救おうではないか!!
体験版ラストは主人公くんを覚醒するためのパーツとなるヒロインが提示されお開きとなります。

概要

  • 赤月みゅうと先生のようなハーレムSF伝奇のような感じ
    • ハーレムモノの漫画を良くお書きになる漫画家として赤月みゅうと先生がいらっしゃるのですが、その物語の最後は超展開になることが多く、壮大なSFや伝奇オチとなります。『アオイトリ』の体験版をプレイして彷彿とさせたのが、赤月みゅうと先生の作品群でした。『アオイトリ』は最初から設定盛りだくさんであり、主人公くんは閉鎖空間である僻地の女子校に存在する唯一の男子であり、学生かつ神父でもあります。そしてその特性としてセクロスして中田氏すると交わった相手を幸せにできるという異能を保持していたのでした。幼少期に女子校に遺棄された主人公くんは、次第に性奴隷として搾り取られるようになったのです。そんな主人公くんがなぜ諾々と肉棒と化しているというと、かつて偶然たまたま自己都合で性奴となることを拒否した相手が自殺してしまったからでした。主人公くんはただ自分が肉棒ではなく普通の人間で在りたかったと願っておりそれがたまたま当該女子だっただけに過ぎなかったのですが、自分の意志による拒絶で他人を殺してしまったことに良心の呵責を覚えたのでした。以来、自分は人を殺してしまったという十字架に悩まされることになり、それが故に性奴隷としての自己を受け入れて、僻地の閉鎖空間的な女子校で過ごしてきたのです。

  • 吸血鬼の少女救済
    • 主人公くんが僻地に囚われていたのは、悪魔皇子候補生だったからでした。イエス様と対局の存在として位置づけられる主人公くんはその異能を抑制するために、神の領域に封じられていたのです。しかしある時、吸血鬼少女が結界に綻びを入れたところから物語が動き始めます。悪魔が主人公くんにガラケーで連絡を入れてくるのですが、その悪魔はかつて主人公くんが自殺させた少女だったのです。悪魔は主人公くんを覚醒させて悪魔の王とするために様々なアプローチを仕掛けてきます。具体的には死者の蘇生。そして主人公くんを覚醒させるための装置が、それぞれのヒロインであるという配役な感じがしますね。
    • 最初に主人公くん覚醒のための装置となるのが、吸血鬼ヒロインです。あー、吸血鬼モノって紙芝居ゲーには何種類もありますよねー。月姫とかドラクリウスとかドラクリオットとかー。御多分に漏れず、不老不死で長時間を過ごすために厭世的になったり人間性を失ったりすることが描かれていきます。本作吸血鬼枠であるメアリーさんは、ちょうど厭世感がマックスになってたところで、本人は人間性として理性持ったまま死にたいから自己の尊厳のために自殺するわ!ってところ。メアリーの決意はかたく、その意志を覆すことはできなさそう。
    • それでも主人公くんはメアリーを救いたいと悪魔と取引をします。ここで悪魔が自己の正体を匂わせ、主人公くんに対しあなたが自殺させた少女の蘇生とメアリーの生存のどっちを取るの?と問いかける所が体験版の一番の見せ場ではないでしょうか?悪魔が示した解決策は主人公くんの血液を吸血鬼に飲ませること。これにより太陽の光を克服できた吸血鬼ヒロインは、自己の未練を解消でき、終わってしまったかつての生に区切りをつけることができたのでした。また少女救済救済の原理(少女を救うことで主人公くんも存在を承認されて救われる)によって、一人の少女を自殺させてしまったという悔恨に囚われていた主人公くんも一歩を進めることができたのです。