白木沢旭児「植民都市・安東の地域経済史-2つの帝国のはざまで-」(白木沢旭児編著『北東アジアにおける帝国と地域社会』北海道大学出版会、2017年、pp.95-140)

  • 概要
    • 中国と朝鮮との国境に位置する中国側の都市安東は、中華帝国及び日本帝国の双方から強い影響を受けつつ都市形成を遂げたため、特異性を有する都市。そのような植民都市・安東の歴史を通じて北東アジアの帝国と地域社会を考察するという内容。
  • 目的
    • 安東を都市・地域史として正面から取り上げ、植民都市・安東の特異な形成過程を明らかにし、日本帝国が主導する地域経済と中華帝国が形成する地域経済の両側面を解明すること。
    • 満洲国期における三大工業の衰退および新たな工業発展の要因について分析し、日本帝国および中華帝国という2つの帝国という視点から安東地域経済史を描く。
  • 構成
    • はじめに
    • 1 植民都市・安東
      • 1.1 植民都市・安東の誕生
      • 1.2 安奉線改築工事と鴨緑江架橋
      • 1.3 居留民団による新市街の管理
    • 2 2つの帝国-商人の世界-
      • 2.1 新市街と旧市街の人口
      • 2.2 商工業者の地理的分布
      • 2.3 安東商業会議所
      • 2.4 安東総商会
      • 2.5 安東商工公会
    • 3 2つの帝国-工業発展の諸相-
      • 3.1 工業発展の概観
      • 3.2 三大工業
      • 3.3 新興工業
      • 3.4 大東港構想と日系大企業の安東進出
    • おわりに
  • 結論
    • 植民都市安東の旧市街と新市街について
      • 旧市街は中華帝国が、新市街は日本帝国が建設した植民都市。まったく性格の異なる都市として成長していく。基本的には分断された都市構造を有していたが、相互に浸透する部分もあった。
    • 満洲国建国以前の「満蒙の権益」
      • 本国による法支配とは別個の植民地における法秩序が存在し、居留民は赴任した領事を現地(植民地)の法秩序に巻き込みながら、権益の保持を図っていた。
    • 満洲国の成立と工業の変化
      • 満洲国建国により日本帝国が中華帝国を圧倒するが、「主権国家満洲国の諸政策は安東の産業に大きな影響を及ぼす→→製材・木材工業は水豊ダムの影響を強く受け、柞蚕業、油房業は停滞の段階に入る。そこに登場したのが東辺道開発、大東港築港計画。
      • 1930年代…新興工業がいくつも生まれ、工場数が増大し続けた
      • 1940年代…主として中国人を主体とする重化学工業化の進展が見られた
      • 満洲国末期」…日系大企業による工場建設が開始される
      • 1930年代以降の安東の工業化は、中華帝国・中国人によるものを主とし、日本帝国・日本人によるものを従としながら着実に進展していた。