捻くれモノの学園青春物語 体験版の感想・レビュー

やれやれ系主人公が斜に構える一方で、人一倍クラスカースト固執する『俺がいるお前だけかよ』。
演出などをすごく頑張っているのは分かるが、タイトルどおり主人公を受け容れられるか否か。
キミは、グチグチ言い訳ばかりしつつも、思いっきり後ろ髪惹かれている主人公を容認できるか!?
これはもう主人公が(プレイヤーにとっての)ヒロインであり、親の目線で成長を見守るゲー。
色々と理由をお膳立てしてもらい、やらされてるからやってまーすというポージングの主人公。
本当にイヤなら何を言われてもイヤを貫けよ……と思うも、それじゃあ物語にならないよという話。
世を拗ねていじけ、不貞腐れて駄々をこねる主人公が覚醒するカタルシスが見所になる。
あと攻略ヒロインの「裏表」をウリにしているのに体験版でそれを体験させなくてどーする!?

完全にプレイヤーが思春期主人公を親のような気持ちで眺めるゲーム

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  • 学校生活で活躍できないため悪態をつき毒づくも、その行為こそがすっぱいブドウの原理であり、しかも眼をかけてくれる教員に行動原理を依存する
    • おそらく十中八九のプレイヤーが思った事でしょうが、やたらと『俺がいる』の比企谷八幡のニオイがする主人公です。この主人公を受け容れられるかどうかが、第一の関門となってくるでしょう。別に大衆が想定する「フツー」の学校生活に馴染めなくとも自分の価値観ややりたいことを貫き通せばそれで十分青春じゃない?しかしこの作品の主人公はフツーの青春をけなす一方で人一倍フツーの青春に拘るので、何ともはやなのである。しかも、その問題解決手段が、自分に目をかけてくれる教員にお膳立てしてもらっていること。自分ではやりたくないんですぅ~~~権力者にやれってい言われてるからやってるんですぅうう~~~~というポージングが凄まじいですね。
    • 『俺がいる』の冒頭の比企谷八幡も、学校空間を小馬鹿にするのなら全無視スルーすればいいのに、無視できないからこそ変な作文書いて理屈をこねてごねますが、生徒を育てる気のない教員だったら評価Cにされて放置されるだけで終わります。まぁ、それでは教育にも物語にならないので、教員のお膳立てをこなしながら成長していく思春期高校生を親のような気持ちで眺めることが、この系統のウリなのでしょう。モラトリアムの期間が長くなかったからこそ起こるスチューデントアパシーです。



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  • 主人公が己の惨めさを噛みしめるシーンは良かったかと思われます。
    • 主人公は親戚の理事長から青春倶楽部を作るよう命じられ、非リア充を集めて部活を結成します。体験版での面白い所の頂点は、主人公が自分の無力さを確認し理事長に慰められるシーンでしょうか?球技大会なんてサボってしまって映画でも見に行けばいいのに主人公は悪態をつきながらも律儀に参加し、そして自分が誰からも必要とされていないことを確認し、何もすることのできない惨めさを味わうことになるのです。孤独に黄昏る主人公のもとへ理事長がやってきて、その事実を突きつけると共に、優しい言葉をかけるシーンが印象深いものとなっています。
    • で、この後さっそくイベントが発生。体験版での青春倶楽部の活動のお試しなので、どんなイベントかと思ってワクワクしていたら、なんとまぁ茶番でした。権力欲にかられる少女が「男子更衣室に痴女が出没するという事件」を捏造するのですが、その真相を暴くというものです。みんなで協力して問題を解決し、捻くれ主人公が楽しそうな表情を浮かべることができて良かったねと親のような気持ちで見守りましょう。最後はみんなでプール掃除をして青春を満喫☆とかいうオチになります。
    • 選択肢とか犯人あて推理タイムとかの演出を頑張っていることは分かりますが、12月発売の作品群の中で戦うのはちょっとキツイかもしれません。一番のウリは「捻くれモノ」の主人公の成長ですが、ラノベならいざ知らずノベルゲーをやる層がこの主人公に自己投影できるかといえばできないでしょうし、かといって教師や親の目線を持てるほど老齢でもないかと思うので、ターゲット層がビミョーと言わざるを得ない作品と言えるでしょう。

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