金色ラブリッチェ「GOLDEN TIME(僧間理亜グランド√)」の感想・レビュー

ホスピス死に泣きゲー。ヒロインが自己の存在証明して死ぬ最後の瞬間まで寄りそい、葬儀を見届けましょう。
理亜は幼少期から重度の脳腫瘍であり、幼少期から長くはないと言われ続けても、何とか生き長らえてきました。
父親は介護疲れで死亡してしまい、母親も耐えられなくなって理亜を見捨てたため、家族関係も複雑でした。
そんな理亜が選んだ自己の存在証明は、今を時めく歌手「マリア・ビショップ」となり、歌を残すこと。
もうすぐ死ぬからと封じ込めた幼少期から募らせた想いを解放させ、最期の時を輝かせましょう。
主人公くんは理亜の人生を肯定し続け、理亜は自分の人生に満足して死んでいきます。
グランドエンド後にシルヴィア√2週目の最終場面で子供作ってマリアと名付けられておりCG回収。
その後EXTRAでしんみりとした音楽とともに理亜のCG振り返りが行われ結婚式CGでフルコンとなります。

僧間理亜はその人生において何に生き甲斐を見出し、如何にして死んだか。


  • 幼少期から好感度マックスなのに死ぬからフラグを立てられないヒロインの壁を乗り越えろ!!
    • 僧間理亜は主人公くんに対して幼少期から好感度マックス。その理由はホスピスであり腫物として扱われていた理亜に対して主人公くんが対等に接してくれたからでした。それは子ども心的な強引さからくるものでありましたが、理亜にとっては救いだったのです。こうして理亜は主人公くんに対してゾッコンとなったのです。理亜は幼少期に主人公くんに言われた音楽をやれとの言葉を糧にして、マリア・ビショップに扮して歌に生きる決意をします。人生の残りの時間を歌にブッコむんだ!!と。
    • 成長してから理亜と再会した主人公くんでしたが、理亜のことを幼少期のマブダチと判別できませんでした。ノベルゲーム特有のご都合主義的な過去忘れる系展開といえばそうなのですが、一応理由付けもなされています。主人公くんは理亜のことを男だと思い込んでいたというのがその理由であり、幼少期において理亜は脳腫瘍の手術を頻繁に行っていたため頭蓋骨がくりぬかれており頭皮も坊主状態だったのでした。そのためシルヴィアが断髪した金色の髪で作ったカツラをつけた理亜を、幼馴染のマブダチとは気づけなかったのです。
    • 理亜は主人公くんのことが好き好き大好き好き好きなのですが自分がホスピスであることからシルヴィアと主人公くんをくっつけさせようとします。そして二人の子どもにマリアとつけてくれと頼むのでした。それ故、理亜は主人公くんと再会してもその好意を押し隠し、主人公くんの幸せが自分の幸せだといわんばかりに、主人公くんを支援してくれるのです。だからこそ、その他のヒロインのシナリオではフラグ構築に理亜が重要な役割を果たしているのです。
    • さて、理亜を攻略するためにはホスピスだからという理由で拒む理亜の壁を乗り越えなければなりません。主人公くんの好意を受け容れ、理亜もまた主人公くんへの好意を吐き出すのですが、湖に落ちて病院送りへ。理亜は周囲に箝口令をしき、主人公くんに病院を教えません。主人公くんは自力で理亜の病院を探す必要に迫られます。ここで主人公くんの背中を押すのが慈母ヒロイン:玲奈であり、主人公くんは愛する女のために過去のトラウマへ立ち向かうことになります。幼少期のキャンプで理亜と知り合ったなら、幼少期にキャンプに参加した友人ズなら何か知ってるかもしれない。野球部問題で人間関係にいざこざがあったかもしれないが、愛する女の為ならばと奮起することになるのです。この過去の問題との向き合い方が、一番の見せ場だと個人的には思うのですが、詳しい描写はなされず、なんかソッコーで解決します。・・・まぁ部活問題は玲奈√のテーマだったしな・・・。こうして過去を払拭し、執念で病院を探り当てた主人公くんは、理亜の心の壁を突破したのでした。


  • 死にゆくヒロインに対して最後まで人生を肯定してやり悲哀ではなくカッコつけて接する。
    • デレた理亜は破壊力バツグンです。幼少期から拗らせた深い思い、さらに再会後も封じ込めていたその想い、それが一気に放出されたのだから当たり前といえばそうなのですが、すきすきーと甘えてくる姿は感慨深いですね。そんな理亜は自分が生きた証として最後の存在証明をなそうとします。主人公くんに求められるのは、理亜をホスピスとしてではなく一個のフツーの人間として理亜を扱うこと。理亜の両親はホスピスの娘に対してせめて最後の時を使って惜しみない愛情を注ごうとするのですが、いつまでたっても理亜が死なないため、先に家族関係が崩壊してしまうのです。心労で父親が死んだことから母親は理亜にブチ切れてしまったのでした。だからこそ、主人公くんにはホスピスとして扱って欲しくないと頼むのです。この作品のテーマとなっている「カッコつけること」に関してですが、死にゆくホスピスへの不安を封じ込め精一杯フツーにせっしてあげることがカッコつけることなのですね。
    • 理亜が最後にやり残したことは、王女シルヴィアと音楽で共演すること。幼少期、主人公くんが何気なく言い放った「音楽の才能があるんだったら音楽やって才能伸ばして二人で発表してくれ」云々というコトバ。この主人公くんの言葉はシルヴィアにとっても理亜にとっても支えとなって、二人が生きる生存理由にもなったのです。もうすぐ死ぬと言われていた理亜が、主人公くん及びシルヴィアに再会できたのは、まさに奇跡。奇跡は起きないから奇跡っていうんですよ!!だったらやるしかないじゃないか!!ということで最期の命を削って練習に励み、二人の共演は大成功に終わるのでした。


  • 葬儀エンド
    • シルヴィアとの共演を果たした理亜は、最後にやり残したことを終えたかのように倒れ、病院へ。このまま死んでしまうのか!?というところで、主人公くんは理亜のために奮起します。目が殆ど見えなくなり、それ故に発達した聴覚に理亜が苦しめられると、病院から攫ってかつて教会であった音楽堂へ連れ去ってあげます。そして主人公くんは過去のトラウマである野球部問題を打ち明け、まだ俺は全然カッコよくないから俺がカッコよくなるまで死ぬなと励ますのですね。そして朝日が昇ると学園の屋上へダッシュ。今まで、理亜と主人公くんは夕日が湖に沈むシーンを見てゴールデンタイムと称し黄昏への憧憬を抱いてきました。しかし、夕暮れの黄昏だけでなく、朝日が昇る所だってゴールデンタイムではないか!!陽はまた昇るのだと唱えます。
    • こうして生きる力を取り戻した理亜は、死ぬまで諦めずに精一杯「フツーの時間」を生き抜きます。終局部にダイジェストモードでお送りされる理亜の楽しそうな余生の描写は、感涙に咽び泣くことこのうえありません。そしてついに理亜は息絶え、葬儀が執り行われます。火葬場から立ち昇る理亜を焼いた火の煙の一枚絵は、是非ご覧になって欲しい所です。理亜が死んだ後、主人公くんは理亜の終末医療において自分が行ったことは正しかったのかと苦悩することになるのですが、攻略ヒロインズから肯定を得ます。そして理亜といつもゴールデンタイムしていた屋上の貯水槽に行くと、そこにはシルヴィアが待ち受けていました。幼少期に理亜はシルヴィアに主人公くんと結婚して子どもを作りマリアと名付けてくれと頼んでいたことや、シルヴィアが断髪したのは理亜にカツラを作ってあげるためだったことが語られます。二人は指輪を箱から取り出し、そこに金のラブリチッチェマークを入れて、自分たちが出会ったきっかけのように、また後で次の子どもたちのきっかけになるようにと、願いを込めて湖に投げ込むのでした。
    • これが円環の理展開になっており、箱が過去跳躍して、3人の出会いのきっかけを作ったのは自分たちだったんだぜ構造でタイムリープ伏線が発生!シルヴィア√2周目が解放されます。グランドエンドを終えてもCGが埋まらないのですが、グランド後のシルヴィア√2周目の終局部でオマケ追加イベントが追加されます。シルヴィアと主人公くんの間に娘が生まれており、約束通りマリアと名付けられているのです。伴奏:シルヴィアと歌:マリアで共演する転生エンド?を見ることができます。そして最後にEXTRAでは理亜のイベントCGがしんみりする音楽とともに振り返られ、そして理亜と主人公くんの結婚式CGを見るというのも、憎い演出でビターエンドとなります。