1 通信情報
X機関の設立(pp.80-84)
- 組織的暗号解読活動の始まり
- 1929年、軍令部第二班(情報)に四課別室が新設。橘村の通信傍受所で組織的暗号解読活動始まる。ターゲットは米英。
- 陸軍との共同作業によりアメリカの外交暗号、グレー・コード(AF2)、米海軍の二次換字暗号(AN2)の解読に成功。対英活動には着手せず(難解な外交暗号のため?)。
- 「X機関」の成立
- 1932年、四課別室に和智恒蔵が赴任、上海に対中国通信傍受組織「X機関」設立。
- 第一次上海事変での実績
- 情報機関の拡充
- イギリス省庁間暗号の解読
- 1934年、和智は民間人として上海X機関内に新設されたB作業班(英国担当)を指揮。上海英領事館で暗号書を盗撮しようとするが失敗したため、札幌の英領事館から暗号書を盗み出す。上海X機関はイギリスの省庁間暗号解読に成功。しかし1935年に暗号が変わってしまう。
- 大和田受信所と盧溝橋事件
- 1936年、通信傍受に特化した大和田受信所設置。盧溝橋事件で北京の米海軍補佐官からワシントン宛ての通信を傍受、解読。
- 海軍の通信情報活動の具体的な目標
- 陸海の連携不足
- 海軍は1938年にはアメリカのブラウン・コードを解読したが、陸軍が解読できたストリップ暗号は解読できなかった。1945年になるまで海軍は陸軍が解読できたことすら知らなかった。
- 対米政策
- 1937年、米太平洋艦隊、ハワイ演習以降もハワイに留まる→海軍はハワイ方面にシギントの重点を置く。
方位測定の活用(pp.85-87)
- シギント機関の軽視
- インテリジェンスではなく「通信」分野という認識
- 暗号解読<通信傍受
- インテリジェンスへの着目
- 「昭和16年度帝国戦時通信計画」における特務班の任務
- 「対米英通信諜報を主目標とし、対ソ支通信諜報を副目標とする。通信諜報作業の主目的を戦術的情報資料の獲得に置く」
- 暗号解読が出来ない場合の考慮
- 海軍シギントの特徴
- 暗号解読よりも、方位測定などの情報分析から、米艦隊の所在や規模を割り出す戦術的な通信情報利用に重点を置く。
- 連合国商船放送(BAMS)から作戦の行動方面を推測 → マーシャル作戦、硫黄島作戦の開始時期を特定
- 暗号解読が進まなくとも、通信解析により、連合国の作戦意図を読み解く。
- 海軍の後進性
- 陸軍情報部300名、海軍特務班の人員は百数十名。
- 通信情報要員の育成に遅れ → 組織的教育が開始されたのは1945年
- 小括
- 海軍の暗号解読は振るわず。逆に決定的場面で暗号を解読される(ワシントン軍縮、ミッドウェー、山本長官撃墜事件など)
- 海軍の通信情報活動は低調だったように見えるが、戦前には海軍が米英の暗号を解読し、戦中には方位測定などから米軍の進路を予測した。
2 人的情報
軍令部第三部特務部(pp.87-90)
- 小柴直貞の活動
- 特務部については小柴直貞が記録を残しており、中国や東南アジアでの活動が分かる。