国史概説008 「明治国家は天皇超政だったから纏め役が必要で政党政治になったが、結局政党政治は滅び纏め役が不在となってしまった」

権力分立体制・内閣制度・政党政治

  • 概要
    • 明治国家は権力分立体制であり、それには必然性があった。
    • 権力分立体制をまとめるために、内閣制度と政党政治があった。しかし政党政治は敗れ去り、纏め役が不在となってしまった。

前回の復習

  • 根本的な矛盾
    • タテマエ上は天皇親政だが実態は天皇超政
    • 明治国家は正統性を天皇に置いてしまったので、天皇が失敗すると国家が倒れる。そのため天皇は政治の世界に関われない 権威付けだけに役割が限定される。
  • 今日の話はこのはなしの続きから
    • タテマエとしては、天皇の親政 天皇の元に行政・司法・立法・陸海軍がぶら下がっている (※今現在も法律は天皇の名前で出ている) 
    • 実際には、天皇超政 権力分立状態 纏め役がいない 天皇超政なので権力分立体制にならざるを得ない
  • 最終的に誰がまとめるの? それが問題になってくる

1)権力分立体制

  • 権力分立体制の纏め役の必要
    • 天皇は実際には仕事しない 纏め役は内閣総理大臣がせざるをえないということになってくる 天皇はノータッチ

2)内閣制度

  • 内閣制度には古典的な研究がある → 辻清明「統治構造における割拠性」論 【資料1】(井上毅の単独責任論) 
    • 大臣の単独輔弼責任制
    • チームとしてまとまっているのではなく、複数の大臣がバラバラに天皇にぶらさがっている状態
    • それぞれの大臣が別個にやる 提案をしたのは井上毅(憲法第55条) 
    • 井上毅「内閣なんて作らない方が良い」。内閣チームいらない。内閣が数の力で天皇を圧倒するようになってしまうから、内閣をそもそも認めたくない 
    • 伊藤博文憲法を作る時に、井上毅は第55条で大臣に「各」を入れてくれと強く主張した 内閣を一つのチームにしないために 
    • 井上毅の主張では、天皇が問題のある国務大臣を個別に首にできる
    • このことが明治憲法・内閣制度の根拠となった 
    • 内閣総理大臣の力が低下 各大臣の力が強くなってくる

 

  • 首相の権限は弱体化していった!?【資料2】【資料3】【資料4】
  • 明治国家は、内閣は横のつながりと総理大臣の力が弱くて 大臣がバラバラ 割拠性 
    • セクショナリズム セクションが自分のセクションの利益ばかり追求して国家全体の利益を考えない
      • 現在も無縁ではない → 教室の管理・トイレットペーパー(各学部がバラバラに買っていた)・ドアのタイプや施錠時間がバラバラ!
  • セクショナリズムに明治国家は毒されていた これを頭に叩き込んだ上で 辻さんへの反論
  • 辻さんへの反論
    • 井上毅は単独輔弼制を組み込んだ 井上毅はチームとしての内閣を作らせたくなかった
    • しかし、実態は「大臣はまとめて大臣となり、全員の大臣が選任され、全員が総辞職する」となった 
    • 総辞職をさせないために、井上は単独輔弼制度を組み込んでいたのに皮肉な結果に
    • 井上はそれぞれがバラバラに天皇の意向で任命されることを想定していた 
    • しかし辻さんの結論は「単独輔弼責任のために内閣が総辞職するシステムになった」 井上毅のねらいとは別 井上が一番したくなかったこと
  • ではなぜ、この矛盾が生じてしまったのか? → 「閣議
  • 法律と予算を作る 立憲主義 
    • 内閣が法律と予算の「案」を作り議会にかけて実際のものとなる
  • 表向きは好き勝手にできるかと思いきや 閣議で話し合いをしなければならない 
    • 閣議の場では全員一致でやらなければならない 全員一致で責任を負う 内閣官制 第5条1〜7 全閣僚が責任を負う
    • ☆【重要】内閣で失敗したらその責任は全員が取る 閣議を前提にすると総辞職するようになってしまった 
    • ☆【皮肉な結果】井上毅憲法の上に単独輔弼制度を作ったのに、井上が自分で作った内閣官制で閣議を法制化してしまったので、内閣総辞職するようになってしまった・・・
  • 【検証】内閣職権から内閣官制で内閣総理大臣の権力は弱くなったのか? 
    • 同輩者中の主席 同じ核の人間の中のたまたま一番上になっているだけ? イギリスのプライムミニスターはこれだった(予算を扱う大蔵大臣が筆頭 チャーチルは第一大蔵大臣 第一大蔵大臣は形骸化した)
    • 伊藤博文は日本の場合、内閣総理大臣を作った 日本固有の大臣の制度を作った 他の大臣のリーダーとなる
    • しかし伊藤博文は内閣職権の時、欲張りすぎた 不可能だった 各省庁がミスをしたら責任を取らねばならなかった 行政すべてに目を光らせて責任を取るのは無理
    • 巨大権力・巨大責任だと内閣総理大臣の地位が極めて不安定だった 末端のミスからガラガラと崩れる 不祥事があると見はってないから問題起こったんじゃないか!責任を取れとなる
    • 二つの内閣が外務大臣の失敗で倒閣したので改善が必要とされた → 内閣職権から内閣官制へ 
    • 【結論】権限が弱体化したことで、内閣総理大臣の責任が軽くなって安全になり(一人の大臣が失敗しても倒閣されなくなった)、内閣も安定した 
      • しかし閣議は全員一致となったので、総辞職する内閣が出来ていった。
  • 閣議と連帯責任【資料5】 美濃部達吉憲法講話』
    • みんなが責任を取るという事は、意見が同じ人たちじゃないとダメだよね。だったら内閣を作る時から、意見が同じ人で作ったほうがいいんじゃない!?
    • 同じ政治的意見の集団 それは政党 政党内閣が自然として出てくる
  • 井上毅天皇親政をまもる為に内閣官制を作った 政党政治反対のものだった だから単独輔弼制にした
  • 天皇超政 → 纏め役必要だね → 政党政治が必要だね【合理的結論】

3)政党政治の正統性

  • 政党政治は諸手を挙げて正しいと歓迎されていたわけではない
    • 政党はいかがわしい 政党政治は許されないという考え方が一般的だった 
    • そのため、政党政治が正しいことを証明しようとしていた。
  • 憲法と政党
    • 「党」の語源は偏ったグループ 日本語の場合も悪党 党というのは悪い集団のことを指す
    • ポリティカルパーティー part[y] 部分的なもの 国家の一部分 私利私欲で結託している一部の集合のこと
    • ヨーロッパの政治学においても 「党」に政治を任せてはならない 
      • 端的な証拠 どの憲法も政党という言葉が出てこない 憲法の上には存在しないものとして無視されている
    • 事実上議院内閣制を認めているにも関わらず「政党」という言葉は出てこない 現実には存在するがその政党が国政を牛耳るのは認めていない
    • 社会主義国家においては政党が明確にでてくる それぞれの共産党が国家を支配する 政党が出てくる
    • マイナスからのスタートで政党が正しいと説明するところから始まった 
  • 政党の正当化(公党論)
    • 超然主義 政府は不偏不党で公正な立場 だから政党の言う事には国家は左右されませんよ 超然としていますよ 政党を敵視
    • 政党敵視だったので、「公党」という概念を提示 国家全体のことを考えている集団ですという意味で「公党」をつかった⇒「愛国公党」 国家全体のために奉仕
    • 現在の政党でもディスられたら公党を侮蔑することは許されないとかいう
  • 政党政治の正当化
    • 1:理想主義憲政論(従来の見方)
      • イギリスの議院内閣制をモデル 国民の支持をもとに内閣を作るべき 国民の利益を反映 天皇が親政するはずなのに出てこれないから、選挙をすればみんなが納得
      • 一番多くの票を集めた政党の党首がトップになる 
      • 【欠陥】イギリスのプッシュだよということを強調すると「君臨すれども統治せず」(天皇超政)となり、「天皇親政」を否定することになってしまう 国を独占しようとしていると言われてしまう → 適当なところで議論を変える必要がある  
    • 2:実用主義憲政論(従来の見方)
      • 先進国がやってる事を真似しろ 発展している国は政党政治をしているから俺達も真似するんだ! 実用の観点から役に立つでしょ!
      • 【欠陥】 あんまり欧米の真似ばかりするのはどうよ!?となってしまう
    • 3:不磨の大典
    • これらの3つをバランスとってやっていく

4)三権分立との矛盾

  • 抑制と均衡を保つ
  • 議院内閣制は 行政と立法を融合していく思想 権力融合思想 三権分立は融けていく
  • 政党政治が進むと立法と行政が融合していく 三権分立をとる人々にとっては危険視されるもの
  • 狂ったやつらにより破壊されたのではなく、もう一つの別の正義により、政党政治の正義が崩壊する
  • 昭和7(1932)年に政党政治が滅びた後は、てんでばらばらになってしまう
  • 挙国一致内閣で各セクションが代表を出すがセクショナリズムで割拠性 自分の利益を一方的に伝達するだけ
  • 権力分立体制の纏め役の不在
  • まとまり役を欠いた弱いなかで 陸海軍が相対的に浮上してくる ※日中戦争してるから。 → 次回へ続く!