雑録

国史概説009 明治国家の陸海軍は政党政治・総力戦体制に適応できず制度疲労して崩壊

  • 今回のテーマ
    • 日本の国家体制は戦時体制となるがそれはどのようにできてくるのか

1)組織

  • 天皇の軍隊 → 皇軍
    • 陸海軍は天皇に直属する軍隊 → ただ天皇の軍隊という言い方は、あくまでもタテマエとして天皇が率いているということになっているだけ。
    • 天皇親政は明治国家のタテマエ  実際は天皇超政 個別具体の案件には関わらない 
    • 軍隊においてもこの論理が適用されていた。 大元帥として振る舞うが 実際は天皇超政 軍隊には直接かかわらない
    • 実質的には=国軍だった 明治大正は国軍と自称していた 皇軍というようになったのは1933年昭和8年荒木貞夫が言い出した 皇軍の方が新しい
    • 国家の軍隊 天皇は国家の統治者だが陸海軍は天皇に属しているのではない 天皇の親衛隊ではない 
  • 陸海軍は政府に口を出さない 【史料1】軍人勅諭 明治15(1882)1月4日
    • 「朕は汝等軍人の大元帥なるそ」
    • 「世論に惑はす政治に拘らす」 → 政治とは関係を持たない
  • 政府は陸海軍に口を出さない 【明治憲法の第11条】
    • 天皇は陸海軍を統帥す → 陸海軍は天皇が指揮命令するものだと解釈される
    • 政府の言う事で陸海軍が左右されない 天皇の命令だけを聞く 統帥権の独立 → 天皇親政のタテマエに属している
  • 統帥権の独立という制度は昭和の時代に非常にマズイことになる
    • しかし誤解しないでいただきたいのは、そもそもの趣旨は陸海軍は政治に口出してはいけないという意味 相互に口出しすることを禁止しているのだということを頭に入れて頂きたい
  • 昭和の時代に軍国主義となったのはかなり間違った理論
    • この国は天皇親政がタテマエで天皇超政でやっていく
    • 下々の軍人がこのタテマエを支えている
  • 戦前の陸海軍は陸軍と海軍が全く別の組織
    • 人材登用の運営も全く別にやっている
【陸軍の場合】
  • 陸軍という一つの組織は存在しない
    • 中央の官庁→陸軍省参謀本部教育総監部 この3つがまとまって陸軍の運営をおこなう
    • 陸軍省は陸軍についての法律予算を作る 行政官庁 100%陸軍の軍人たち 陸軍省 陸軍大臣、内閣の一員 中央の省庁は文官のイメージだが、陸軍省は軍人たちが働いている 法律・予算を作る行政官僚なので戦争はしない
    • 参謀本部 トップは参謀総長 実際の戦争が行われている時に作戦を立てる 戦争を回していく
    • 陸軍の教育総監部 トップは教育送還 陸軍の教育をする 陸軍は学校をメチャクチャ学校を持っている 全部で10数個学校を持っている 戦後の自衛隊が1個の学校をもってないのに比べると隔世の感がある 
  • 戦闘部隊 師団
    • 1師団→3〜4旅団(歩兵・騎兵・砲兵)→3〜4連隊→大隊→中隊→小隊
    • 師団に命令しているのは天皇という建前
    • 法律・予算の命令は陸軍大臣ができる
    • 教育総監は教育内容を命令できる
    • 師団は17あって最終的には25になる→師団長は25人いる
【海軍の場合】
  • 海軍の組織
    • 海軍省
    • 軍令部
      • 昭和8年に名前を変える もともとは海軍軍令部 海軍が取れる 総長となった 陸軍と海軍は同格にしたかった 参謀本部と名前の格を同じにした
    • 連合艦隊
      • 師団にも相当するが普段は軍事演習の統轄をしている教育機関でもある 大演習ができるように練習してきてね! トップは連合艦隊司令長官 戦争が起きれば戦う
小括
  • あくまでもタテマエは天皇が自ら大元帥として統帥している 天皇がまとめているからOKとなっている 
  • 中央官庁が6つもあるけど、天皇が自らまとめているということになっているのだが、実際は6人の長官がいて同格 だから俺に口出しするなよなとなってしまう
  • 6人が意見が合わなくなったら簡単に崩壊する 一つのまとまった行動をとるのは難しい

2)近代化の旗手としての陸海軍(明治)

  • 当初は、もっともモダンでもっとも合理的でもっとも頭が良かった
  • 【国家指導者兼陸海軍指導者による統率】
    • なぜ明治はバラバラにはならず一体化していたのか? それは、陸海軍指導者が国家指導者だった
  • <陸軍>
    • 陸軍−山県有朋桂太郎寺内正毅 彼らが陸軍をイチから作った → 全員総理大臣を経験している
    • 国家指導者としてスタートした人が専門分野として選択したのが陸軍だった!
  • 自らの利益ではなく、国家の利益で行動している 
    • 陸海軍の利益を押さえつける立場にもなる
    • 制度は独立しているが、トップが国家の指導者でもあったので、運用では国家の陸海軍だった
    • 明治では構造的な欠陥は露呈せず、順調に発達していく
将校
  • 職業軍人とは
    • 少尉以上の階級を持っている人々を指す
  • 軍隊は階級制度
    • 大将 中将 少将 大佐 中佐 少佐 大尉 中尉 少尉
    • 一度少尉になったら理屈の上では死ぬまで軍人として勤務する 
    • 陸軍省参謀本部教育総監、師団長も佐官クラス
  • 将校たち 近代的な登用制度で採用される
    • 少尉になるためには・・・ 陸軍は士官学校、海軍は兵学校 卒業したら少尉になれる
      • 学校御制度によって人材を育成し供給していく 一般の官僚においては情実任用がある(YOU 明日から大蔵省で働いちゃいなよ☆)
      • 情実任用の事例:マキノノブアキは留学したいと言い出した件 官僚制度が学歴も試験も不問だった時代に陸海軍は学校卒業しないとダメよといっていた
  • 資格任用制⇔情実任用制 
    • 現代は資格任用制になっている 陸海軍はもっともはやく資格任用制をとった
  • 軍人は定年制が存在する 
    • 戦前の日本には定年制がなかった 昭和8年、9年の段階で官僚組織の若返りが問題になる(大久保政権から勤めていた人が!!)
    • ドンドンドンドン早期退職で人を削っていく 使い物にならない奴らは切り落としていく その代わりに年金あげるから 恩給制度・年金制度がセットになっている
    • 一定の若さ・人数に保つ人事管理制度をやっていた。
  • 身分を問わず頭の良さ・体の良さで決まる 
    • 給料をもらいながら生活費用を用立てしてもらえる 身分制社会で鬱屈していた人達にとって出世の機会だった!
    • 試験は筆記試験(大学レベル)・実技あり・スーパー圧迫面接がある 頭・身体・度胸 男として一番優れた人間が行く 男の中の男は軍隊へ行く!(戦前)
  • 近代化の旗手
    • → 軍人の制服 初めて着る洋服 陸海軍と警察、中央官庁のみ 着物に対して洋服は近代化の旗手の象徴 オシャレ集団
    • 【史料3】→岡田啓介の軍靴のエピソード
    • 陸軍はベッド 海軍はハンモック、ナイフとフォーク 
    • 扱うのはヨーロッパから輸入した最新兵器 兵器は全部輸入品 陸海軍では語学に堪能 陸軍は英仏露仏中 海軍は英語 メチャクチャ語学が出来て新しいものに敏感
兵士
  • 兵士にとっても近代!
    • 徴兵制
      • → まず健康診断 検査をするのは医師 明治の若者にとって医師ははじめて出会う西欧近代 
      • 若者は甲乙丙に分類され 甲種となったら兵士となるが・・・1師団2万人×25 人数決まっている 甲種の中から抽選で決める
      • 男としては甲種合格を目指す 国家公認のお墨付き 村の英雄じゃ!となる が、一方で抽選は外れたい。両義的な感覚をもたらす
      • 軍隊生活には何が待っているかというと、洋風の暮らしが待っている ベッド、テーブルと椅子 
      • 時計に従って暮らす 朝は6時に起きて、夜は9時か10時に寝る 時計に従い動く 分の単位で
      • 朝昼晩の白米が食べられる 支給が1日5合半 
    • シンタイキセイ 
      • クロサワアキラ 七人の侍  百姓たちに槍を持たせようとするが・・・ 百姓たちは真っ直ぐ立てない 誰一人真っ直ぐ立てない そんな姿勢をしたことはない
      • 真っ直ぐ立つということは近代 歩き方も。明治時代は右手・右足を両方出していた。着物が崩れるから。 右手・左足を闊歩と呼ぶ 江戸時代以前の日本人はしなかった 軍隊が輸入した 全員に叩き込んだ 着るものが上下セパレートになったことにより歩き方も変わった 
    • 軍隊に行って帰ってくると村の人達から見ると近代化の姿そのものとなる
  • 兵士の補足 
    • 兵士になると二等兵となる 最初の年は全員二等兵 軍隊は3年だから二等兵一等兵上等兵となる 
    • 将校と兵士だけだと意思の疎通がとれなくなっちゃう 兵役は3年だが軍隊に残って下士官(カシカン)に残る人もいる 将校と兵士を橋渡しになる
    • 兵士の暮らしは農村漁村よりマシ ご飯もいっぱい食べられるし 
  • 外の世界の方が良い食べ物を食べるようになったのは大正期 
    • 軍隊は米はあるけど、おかず全然ないじゃん!となって逆転するが、明治は白米を腹いっぱい食えるぞ!

3)政党政治・総力戦体制と陸海軍

  • 大正時代になると転機を迎える
    • まず政党政治 内閣が政党員となる 
    • 軍人勅諭に反して世論に惑ってるじゃんとなる! 今日は政友会、明日はその敵の憲政会となったりする 
    • 予算が必要 政友会内閣だったらそこで予算を認めてもらわねばならない → 政党政治に翻弄されるようになる さらに積極的にかかわろうとしてくる
  • 総力戦体制
    • 戦争のスタイルが変わる 日清日露は1年で終わるが、第一次大戦は4年 ものすごく長くやってる 戦争は陸海軍だけでやるものではなくなる
    • 実際には兵士となっていない国民もみんな戦争に関わっていく 戦争の新しい形態に陸海軍も対応せねばとなってくる
    • しかしここで統帥権の独立が問題になる 不合理になってしまう 時代遅れになってしまう 戦争は国家の全てを傾けて戦争をするから
    • 田中義一宇垣一成統帥権の独立では対応できないと考えたので、首相となって国を作り変えようとした 総力戦の構築の先駆者だった!!

4)反近代の権化としての陸海軍と戦時体制(昭和)

  • 軍縮と刷新
    • 田中義一宇垣一成は総力戦に合わせて陸海軍を作り変えようとした → 軍縮を行う!
    • 陸軍の将校・兵士を大リストラしている 旅団を削減している(3旅団体制にしている) ゴッソリなくなる 軍隊が4分の3になる
    • 宇垣の軍縮の前に山梨軍縮も行われ師団が3つ消える 陸軍の規模は3分の2に縮小する 
    • 削減された人たち → 恩給を貰って無職になっている 国家の為に命を投げ出そうと決意をしているのにプライドが傷つく
    • リストラされた元軍人たちは、宇垣が政党政治家として自分たちを出世のために踏み台にしたと不満を抱く
  • 最新兵器への敵視
    • 宇垣一成は総力戦に対応するためにリストラして近代兵器(戦車・機関銃・航空機)を買う→リストラされた人々は俺を首にして戦車を買ったのか!?と思う
    • 最新兵器に対する敵視が生まれる 鍛え上げられた将校兵士が軍隊のキモという風潮が生まれる→精神主義!!
    • 精神主義がはびこることになる → そうなると反近代に変わっていく
    • 明治38年のサンパチシキ歩兵銃を太平洋戦争まで使い続ける
  • 日本には戦車道がなかった(ガルパンの話が始まる)
    • 最新兵器への敵視が生まれたため、戦車に批判的だった
  • 飛行機の場合
    • 航空機は落ちたら死ぬので誇りが生まれる
  • 陸軍は精神主義の権化となった
    • 統帥権の独立を改修できないので総力戦体制構築できず
    • 参謀総長軍令部総長が作戦を立てるので、口出しするな!となってしまう
    • 大本営政府連絡会議
      • 大本営が決めたことを政府に一方通行で連絡する 政府は政府で決まったことを連絡する 戦争方針を話し合うことはせず一方通行 昭和20年までずっと続く
  • 統帥権の独立を守ったまま戦争は陸海軍だけがやることになってしまう
    • 総力戦を誰もが求めているのに・・・ 陸海軍はあくまで戦争だけをやっている 政府は口を出さないでください
総括
  • 戦争をやっている陸海軍が日本を牛耳っているようにみえるがそうではない。
    • 戦時体制を支配しているのでもない 軍国主義なわけではない
  • 天皇親政のタテマエと天皇超政という実態の矛盾に帰結する 
    • 天皇がまとめなければならないのに天皇が何もすることができない矛盾
  • 天皇の戦争責任
    • 最終的には聖断をするしか戦争終結手段がなくなる 
    • 天皇には戦争を終結させる手段があった じゃあなんで戦争を始めたんだよ!となる 天皇の戦争責任が追及される
    • 天皇に責任が及ばないように明治国家が作られていたのに、制度矛盾が起こってしまい、崩壊する
    • 聖断で戦争が終結したために、明治国家は崩壊するしかなかった。