Summer Pockets「ALKA TALE」の感想・レビュー

冷え切った仲の父子家庭の娘が、崩壊した家庭に耐え兼ねて過去跳躍し、西暦2000年夏をエンドレスエイトする話。
うみは主人公くんとしろはの娘であり、夏休みをループさせる度に幼児退行していく。
それゆえ自分に素直になることができて、母親(しろは)との思い出を創ることができた。
このうみを含めた疑似家族編でしろは√を再構築することが「ALKA TALE」編の見どころである。
しかしうみの生誕と引き換えにしろはが死亡することは確定しており、何度ループしても過去を覆せない。
うみは自分の観測が現在を確定させてしまっていることを悟り、輪廻から解脱するのであった。
ONE+KanonAIRCLANNADリトバスにナツユメナギサとWith Ribbonと12の月のイヴを混ぜたような感じ。

Keyの過去作品のセルフオマージュが炸裂。その他、過去跳躍と未来改編とループも。

  • 家族崩壊している父子家庭の娘が、現実に耐えかねて過去跳躍
    • 加藤うみは主人公くんとしろはの娘。現代の時間軸では既にしろはは死亡しており、最愛の妻を亡くした主人公くんは娘をニグレクトしており、父子家庭は冷え切っていました(CLANNAD汐√)。母親の十三回忌に置いていかれたことを知ったうみは、ショックを受け現実に耐えかねてしまいます。そのためうみは過去跳躍の異能を使って、父親の若い時代にやってきます(12の月のイヴ)。娘がループして父親のフラグ構築を眺めるというわけです(With Ribbon)。うみは夏休みをループさせ、父親の恋愛劇を見るなかで、冷たい父親も昔は優しい人間であったことを知っていくのです。しかし、ループの代償には幼児退行の負荷がかかるため、ヒロインを攻略するごとにうみが舌ったらずになっていくわけですね。セーブポイント作ってリロードした人にはわからない仕掛けで、面倒でもヒロインを攻略するたびに最初から始めていくと徐々に幼児退行するうみの様子を体験できます。最初は大人びていたうみでしたが、段々幼児化するにつれて自分の本音を曝け出せるようになっていきます。
    • あと、過去跳躍する本作の舞台は2000年夏であることが判明し、ちょうどAIRが発売された年であるため、そりゃー懐かしくなるに決まっており、セルフオマージュもするわけだぜと納得できます。


  • 疑似家族生活編
    • うみの願いとは親子三人での幸せな生活を送る事。ループを繰り返したうみの今度こそ逃げないという心意気に感化された主人公くんは、うみのために疑似家族を形成することを決意します。母親役をしろはに頼み、うみが体験したかった家族の夏休みを作り上げていきます。ここで主人公くんが取った手法は未来日記ジャポニカ学習帳の日記にうみのしたいことを書かせてそれを実現させてあげようというもの。主人公くんの奮闘っぷりや、しろはの母性、そして仲間たちとの絆が存分に描かれます(リトバス)。紬の歌唱指導と鴎の創作絵本作成が挿入されたのもナイスだと思いました。(特にこの絵本創作で主人公くんが悲劇を打破するためにオリジナルの結末に改編したところとかが巧み)。一連のおりがみは泣く(ホントウ)。
    • しかしこの未来日記がリアル未来日記ではないかとしろはが疑念を抱き始めます。ホントウは起ったことを過去跳躍して書いているだけなのですが、しろははうみが使っているのは、自己が苦しむ未来予知の能力ではないか?と思い込んでしまうのです。この未来予知に苦しむしろはも、本編でのしろは√と同じように(若干は異なりますが)、主人公くんの奮闘で解消されていきます(灯篭流しイベントで船に潜り込むのが堀田ちゃんではなくうみになったりするなど)。特に、しろはのじーさんとの水中格闘技でのトラウマ克服にうみの声援で覚醒するところはおススメな描写です。惜しむらくはここでも蝶番の儀式はダイジェストなので、サマポケエクスタシーがでたら是非描写して頂きたいところですよね。

  • 幼児退行の加速と存在忘却。そしてしろはの死とエンドレスエイト
    • 主人公くん・しろは・うみの三人は幸せな家族ごっこを続けるのですが、夏の終わりと共にうみの幼児退行は加速していき、徐々に箸を使えなくなり折り紙を折れなくなり話すことも出来なくなっていきます(kanon真琴√)。さらにその上、次第にうみの存在を忘却していき、認識できなくなっていくのです(ONE)。必死になって存在忘却と抗うシーンは、分かっていても泣くに決まっているだろーって感じで泣きゲー炸裂です。既に忘れ去った後で、何かを忘れてしまったことを嘆きながら打ち上げ花火を見るシーンが急所を抉りに来ます。そしてその時の一瞬だけ、うみの存在が思い出され、きちんとしたお別れを告げることができたのでした。号泣。
    • そしてうみの存在は思念体だけとなりますが、そこから観測だけは続いていきます(AIR第三部)。しろはと主人公くんは無事に結ばれ、しろは√の後日談が描かれていきます。そして当然の如くしろははうみを妊娠するのですが、ここでしろはの未来予知が発動し、自分が死ぬ運命を観測してしまうのです。ここで主人公くんに相談できなかったのが、しろはの強さであり弱さだったのでしょう。一人きりで未来を変えようとしたしろはは無理がたたって出産の際に死んでしまうのでした。このことに耐えきれない観測者としてのうみは時間軸を過去に戻し、再チャレンジするのですが、何をやってもしろは√に入り、しろはが死んでしまうのです。永遠のループとエンドレスエイト状態へ。そしてうみは悟るのです。自分が観測しているから未来が確定してしまっているのだと。こうしてうみは観測をやめ、現実を受け容れることでループをやめることができたのでした(ナツユメナギサ)。


 

「ALKA TALE」終了後

 

関連

本編

REFLECTION BLUE