【講習】高校卒業段階(大学入学時)の子どもたちのアイヌ認識とその改善について

ゴールデンカムイ』を読ませればいいのでは?

  • 本日の主な内容
    • (1)高校卒業段階(大学入学時)の子どもたちのアイヌ認識の問題点及びそれを克服する授業について
    • (2)クマ祭文化複合体説

  • (1)高校卒業段階(大学入学時)の子どもたちのアイヌ認識の問題点及びそれを克服する授業について
    • 講習担当者は、自分の所属する教員養成系大学に入学してきた子どもたちに毎年アイヌ認識に関するアンケートをしているとのこと。しかしながらアイヌ認識は低く、アイヌ文化成立以前の時代区分を言えないどころか、未開・野蛮といった原始的イメージが先行していたり、奴隷差別史観として捉えていたり、個別事項が歴史全体の中に位置づけられていなかったりする等の問題点がある。
    • この問題を克服するために、講習担当者は五つの観点を挙げており、「先史時代を知るため物質文化からアプローチする」、「気候条件を確認する」、「地理的条件を確認する」、「時代区分の対比を行う」、「各文化における特徴を代表的遺跡や出土品から分析する」ことを掲げている。この点を踏まえた上で、「続縄文文化」が本州以南の影響を受けている事、「オホーツク文化」が大陸の文化の影響をうけている事、擦文文化が本州の文化の影響を受けながらオホーツク文化を包摂していく事、以上の特徴を示すことが重要であるとのこと。
    • ちなみに13世紀にアイヌ文化が成立することが強調されていたが、奥州藤原氏の滅亡により残党が蝦夷地に渡って、アイヌ文化が成立したと唱えられていた。奥州藤原氏は北方交易を行っており。蝦夷地に落ち延びた後、文化融合が起こってアイヌ文化の成立に影響したのだとか。山川の日本史リブレットが推薦された。→023.奥州藤原三代 | 山川出版社
  • (2)クマ祭文化複合体説
    • クマ文化複合体説とは、アイヌ文化の中核や真髄を、クマ祭りを中心に機能的に結合した文化要素の構造体として、捉えたものとのこと。「クマ送り儀礼」(イオマンテ)は和人との関係が深い。何故ならば、儀礼において大量の食糧や酒が蕩尽されるため、和人との交易によって財を得た有力者しか開けないからである。和人との交易で得た鉄器や宝物を漁撈・狩猟に使用することで生産性を増大させた。これにより川筋に設置された集落での定住性が強化され、コグマ飼育型熊祭を血縁集団と団体儀礼が成立・維持されるようになった。そしてクマ祭りに必須な鉄器類は日常にも使われ、彫刻などのアイヌ工芸を発展させた。
    • 講習会の試験は、旧石器とマキリ(アイヌの鉄製小刀)の写真が提示され、これらを対比し「クマ祭複合体説」を踏まえてアイヌ成立文化の以前と以後について述べるというものであった。
      • まず、ここで注目されるのが、旧石器にはなくてマキリにはある彫刻。この彫刻がクマ送りにより発展した「アイヌ工芸」だと指摘できる。
      • 次に、提示された写真のマキリは破損していた。この破損が講習会で何度も繰り返された重要なポイント。送り儀礼においては「死のアナロジー」として、わざと器具の一部を壊すとのこと。器物には霊が宿るが、そのままでは自由になれない。そのため、器を壊すことで、器の中にある霊を自由にするという解釈なのだとか。
      • 以上により、旧石器とのマキリの対比から「彫刻」と「破損」を読みより、「クマ祭複合体説」を踏まえてアイヌ文化の成立以前と以後の特徴を論ずればよい。