雑録

森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』(2010年、角川書店)を読んだ。

図書館で借りた。
世界の歪みを修理固成するお姉さん(世界五分前仮説)が世界を修復する話。
お姉さん自身は、自分が「世界の歪みの修復者」だとは認識していない。
主人公のアオヤマくんが世界の謎を解き明かすが、世界修正の完了はお姉さんとの別れをも意味していた。
おねショタであるだけでなく、ツンデレ科学者系クラスメイトモノでもある。
小ネタとしてアオヤマくんを通して研究ノート術を披露してくれる。

雑感

  • 世界の歪みを修理固成するお姉さん(世界五分前仮説)とのおねショタの話
    • 本作のメインヒロインはお姉さん。おねショタものである。ショタ担当であるアオヤマくんは、小さな科学者であり、様々な研究を解き明かしていく。お姉さんの正体は世界の歪みを修復するために発生した修理固成のための装置。世界五分前仮説よろしく、お姉さんが自分のものだと思っている記憶や過去や人間としての知識は、世間との整合性を持たせるために付与されたものである。
    • アオヤマくんの街には「海」と称される時空を歪める球体が発生しており、お姉さんはペンギンを創出し、「海」分解することで、世界の歪みを修正する。しかし「海」とともに歪みも小さくなるとお姉さんの存在意義は薄まるため体調不良となる。お姉さんが街(=歪み)から離れようとしても同様である。アオヤマくんはペンギンではなくジャバウォックを創出するよう提案する。ジャバウォックはペンギンを食べるため、歪みは大きくなりお姉さんの体調も良くなる。
    • 最終的にお姉さんは世界の歪みの修正作業を完遂する。お姉さん=「世界の修正のための装置」であるため、歪みが無くなったら消滅する。アオヤマくんは、お姉さんとの別離を経験し、人を好きだという事はどういう事なのかを悟る。お姉さんはいなくなったが、おねショタものは別れの経験でもある。アオヤマくんにはツンデレ科学者系クラスメイトがおり、フラグが成立した。

本作は度々死生観が描かれると共に生命の象徴として地母神信仰に対する強い拘りがある。

地母神信仰とそれが未発達なハマモトさんに関する描写

「ハマモトさんにはおっぱいが存在しないね」とぼくは言った。
「大人じゃないもの」
「ふしぎだなあ。なんだかふしぎだなあ」
〔……〕
ぼくが存在するおっぱいと存在しないおっぱいについて考えていると、となりの水の下からハマモトさんが飛び出してきて
〔……〕
ハマモトさんはフンと鼻を鳴らした。
「アオヤマ君はおっぱいが好きだから、お姉さんのことが好きなんでしょ?」
「ぼくはおっぱいが好きであることを認める。でもお姉さんを好きであることとはべつだ」
「でもお姉さんにはおっぱいが存在している」
「おおいに存在しているね」
「もういい!」
〔……〕
もうぼくには何がなんだかわからなかった。そのあと、ハマモトさんは唇をかんでだまってしまい、話しかけても返事をしなくなった。まるで雪の女王みたいに冷たい顔をしてパラソルの下に座り、レゴブロックで青い壁をもくもくと作っている。
(pp.232-233、pp.254-255)