【間野山研究学会2日目】実際に歩いてみて体感した『富山県南砺市桜ヶ池エリアウォーキングマップ』の現状と課題

簡潔に述べれば、マップ作成者と『サクラクエスト』のファンと地域住民が乖離してしまっていることが一番の問題点。
ウォーキングマップはこちら(お知らせ - 桜ヶ池エリア ウォーキングマップができました! | 南砺市)

  • 問題点まとめ
    • (1)ウォーキングマップの作成者のねらい(「トレイル」)とユーザーのニーズ(「聖地巡礼」)が乖離している。
    • (2)『サクラクエスト』が生み出した観光資源(すなわち「南砺市と間野山市との姉妹都市提携」及び「聖地巡礼スポット」)を放棄してしまった。
    • (3)南砺市や桜ヶ池エリアの人々の意志でできたものではなく、地域住民の認知度も皆無。観光スポット周辺の住民の認知を図るための取り組み(啓発・普及活動)をしていない。

以下、問題点詳述

  • (1)ウォーキングマップの作成者のねらい(「トレイル」)とユーザーのニーズ(「聖地巡礼」)が乖離している。
    • 第1回間野山研究会1日目の研究発表においてウォーキングマップ作成者が、趣旨説明と作成の意図を発表したが、そこでは『サクラクエスト』とは全く関係がなく、「トレイル」のコースとしてマップが作成されたことが明らかになった。しかし、このマップを手に入れようとする人々は『サクラクエスト』を目的としていることが少なくない。すなわちユーザーが必要としていることは、『サクラクエスト』と関連のある場所を訪問したいという聖地巡礼の欲求なのである。しかし、このマップを開いたところでその欲求は満たされることはない。コンテンツツーリズムを行う人々の目的は、舞台となった場所の発見・キャラと物語の追体験・そして現地で作品を味わうことである。
    • このウォーキングマップでは西回りコースと東回りコースが掲載されているが、訪問スポットが全て歴史と信仰である。これではトレイル目的の人々もよっぽど歴史とか伝承のファンでない限り現地を歩こうとは思わないだろう。コースごとにターゲットを絞り込んで、聖地巡礼コース・歴史伝承コース・他などなどとコースごとにテーマを付与するべきと思われる。特に、ユーザーのニーズは聖地巡礼なのだから、聖地巡礼コースは入れるべきであろう。
    • マップ作成者は「アニメとは関係ない桜ヶ池の魅力」を熱弁しており、失敗の要因を地図作成上の問題に帰している。すなわちトレイルのための地図は概要図と詳細図とガイドマップの3種類必要だが、『富山県南砺市桜ヶ池エリアウォーキングマップ』は概要図のみであるため、実際に人々が歩かなかったと原因分析している。故にウォーキングマップ作成者のねらいとユーザーのニーズの乖離が全く歩み寄れない。このままでいくとしたら、ターゲットとするユーザー層を歴史・伝承ファンに絞り込み、その層に宣伝広報活動を仕掛けるしかなくなってしまう。
  • (2)『サクラクエスト』が生み出した観光資源(すなわち「南砺市と間野山市との姉妹都市提携」及び「聖地巡礼スポット」)を放棄してしまった。
    • 上記(1)とも関連するのだが、現実世界の南砺市とアニメ上の架空の間野山市が姉妹都市提携したことをウリにしていたが、全くそれと絡んだイベントを起こせていない。ウォーキングマップでは「桜ヶ池エリアは、『サクラクエスト』の重要なロケーションモデルであるだけでなく、同作品の制作会社である株式会社ピーエーワークスの本社所在地でもあります。作品に思いを寄せながら歩いてみると、桜ヶ池周辺の小径は「間野山トレイル」に。一味違った風景が見えてくるはずです。」と述べれられているが、マップにはアニメで出て来た風景は一切掲載されていない。せっかくアニメの都市と姉妹都市提携を結んだのに、その『サクラクエスト』の部分を切り捨ててしまっている。アニメをきっかけに現地を訪れてもらって、その時の体験で地元愛を持ってもらうとのことだが、そこでの体験が『サクラクエスト』とは全く関係がない。せっかく、既にある『サクラクエスト』の舞台装置という観光資源を自ら投げ捨ててしまっているように思われる。
  • (3)南砺市や桜ヶ池エリアの人々の意志でできたものではなく、地域住民の認知度も皆無。観光スポット周辺の住民の認知を図るための取り組み(啓発・普及活動)をしていない。
    • 今回、市民モニターのご婦人の方が一人参加してくださった。私は偶然、同じコース(東回りコース)となったので、色々と現状をうかがってきた。市民モニターの話の要旨は以下の通り。
      • このウォーキングマップ(トレイルコース)は、地域住民には全く認知されていない。
      • そもそも地元住民は桜ヶ池エリアに来ない。桜ヶ池エリアに来るのは高速道路の利用客かアニメファン。
      • 訪問する歴史・伝承系のスポットも解説を受ければ、その場所が意味のある場所だと分かるが、フツーはただの風景にしか過ぎない(このことからウォーキングにはマップを配るだけではダメで価値観の再発見を行わせる案内人の存在が必要だという事が分かる)。
      • ただマップを置いておくのではなく、ウォーキングの団体などに配る必要がある。
      • この市民モニターの方は、転勤族が多い職場に勤務しているので、南砺市おススメスポットを紹介する活動をしている。だが、このウォーキングコースをおススメしたことは、これまで一度もない(※モニターの方は前回のウォーキングも参加している)。
    • 市民モニターの方は、ウォーキングが終わったら早々にお帰りになられたので、余計な真似とは思いながらも、帰り際にマップを数枚渡し職場で紹介してくださるようお願いしておいた。私は特に間野山研究学会の学会員でもないのだが。

個人的に考えた改善点

  • サクラクエスト』を観光資源としてウォーキング/トレイルに組み込む
    • アニメをことさら捨象し、「トレイル」をウリにしようとするのではなく、『サクラクエスト』の観光資源(「間野山市と南砺市姉妹都市提携」および「作品の聖地巡礼スポット」)を活用すべき。
    • そのためウォーキングマップに聖地巡礼コースを取り入れるべき。
  • 地域住民への教育普及啓発活動を行う
    • 地域住民の認知度を深めるためには、実際に地域住民の団体に歩いてもらうべき。
    • 実際に歩いていていると、訪問スポットの周辺住民に何をしているのかを聞かるので、チラシ(レジュメ)を渡せるようにしておくべき。
      • ※今回、南砺市で観光関係に携わる地方公務員が参加していたので、名刺を渡して簡単に趣旨説明してもらえば地域住民の認知度が上がったのではないかと少し後悔した。
    • 訪問スポットが、「ただの風景」ではなく「価値のある意味のあるもの」として再認識してもらうためにも案内ガイド(教育普及啓発活動用ガイド)を養成するべき。(価値観の創出)
  • ターゲット層をきちんと明確にする
    • トレイルをウリにするのなら、地域・地元のウォーキング団体に宣伝・普及活動をするべき。
    • このまま訪問スポットを「歴史・伝承系」だけ行くのなら、ターゲット層を歴史伝承好きに絞るべき。
    • 歴史・伝承系なら、学校の郷土教育に利用できるので、小中学生に歩いてもらうべき。