夏海公司『ガーリー・エアフォースⅤ』(KADOKAWA、2016年)の感想・レビュー

世界設定考察系展開その2。インベーダーはどこから来たのか問題について。
侵略者は非物理層の存在で、別の層のエネルギー投影が、人間世界に反映されるとのこと。
で、主人公くんは精神攻撃を受けて、現実にはあり得ない自分が望んだ世界を見させられる。
これにより侵略者は人間の望みを叶える存在であることが示唆されている。
人間が望んだがゆえに、人間は滅びようとしているのか?という展開でした。

異星人侵略者の正体について

  • セカイ系と思いきや、敵の説明とか詳細にやるんすね。
    • セカイ系作品は、主人公くんとヒロインの関係性が世界の危機に直結しており、二人の周囲の人間関係が全てであり、世界や社会や世間がどうなろうとも構わないという展開です。それ故、なんで戦争しているのかとか、どうして世界の危機が生じたのかとかは、詳述されませんでした。当初本作品を読んだときの印象も、異星人侵略者はただのツールにしか過ぎないような感じだったのですが、背景説明をきちんとするようです。その場合、「作者の考えたSF的世界観の提示」をうけいれることができるかが問題となってきます。
  • 本作の「作者の考えたSF的世界観」
    • 本作の場合ですと、侵略者は人間が住んでいる空間層とは別の層に属する存在であるようです。そのため、層(レイヤー)を降りて来たと表現されています。別の層の存在が、人間の層ではガラス質の飛翔体に見えていると説明されています。
    • この侵略者に毎回主人公くんはアプローチされるのですが、今回は「実現することのない自分の望んだ世界」を見せられます。主人公くんの本質はやはりママンにあるようです。第1巻でも死んだママンへの憧憬がこれでもかというぐらい描かれていましたしね。主人公くんはこのマザコン気質を突かれてしまい、死んだはずのママンとの幸せな生活を見させられるのです。このまま主人公くんは夢世界へ埋没してしまうのか!?という所で恋人が頭によぎりママンの幻影から解放されるという構図です。嫁姑関係か!?とツッコミたくなってしまいますね。
    • 以上のことから、侵略者は別の層から人間の層へ働きかける存在であり、しかもその目的が人間の望みを叶えるものだということが判明したわけですね。と、なるとじゃあ人間の望みを叶えようとしているんだよ!?とか無限に疑問が浮かんできてしまいます。
  • 可愛い女の子と一緒に手に汗握る空戦を繰り広げる様子を楽しむ作品ではない
    • 何かやたらと小難しい世界設定考察系の話に突入しており、読んでてしんどく感じます。まだ人間同士の国際関係の対立とかの架空戦記的展開ならついていけるのですが。作者の頭の中にある空想世界を読み解くのは、結構大変です。
  • 今回の演算装置少女 フランスのラファールちゃん
    • 第5巻ではフランスの演算装置少女:ラファールが出てきます。どのような内容が語られたかというと、機械だからこそ機械を嫌い、人間のフリをするというものです。ラファールは当初フランス軍女性として振る舞っており、執拗にグリペンちゃんたちを毛嫌いします。しかし、その人物こそ人間ではなく演算装置だったのです。ラファールちゃんたちは、軍用機になかなか適応することができず、だったらたくさん作ればいいじゃない!ということで代替可能な使い捨て量産機として作られていたのです。ラファールちゃんが育った兵器工場では、一人、また一人と仲間が使い潰されていきます。しかも人間形態を保つ必要がないので、培養器にその肉片が漂ったままでも生かされる・・・そんな現実を目の当たりにしたラファールちゃんは、ショックで飛行能力を失ってしまいます。その後、高い演算能力を買われて生かされていたのですが、航空機を飛ばすというアイデンティティを消失したため、宙ぶらりんな存在となってしまい、そのため人間になりたかったので、機械の少女だちを否定したわけです。そんなラファールちゃんが再び航空機を飛ばせるようになるまでが描かれていきます。