『さくら、もゆ。 -as the Night's, Reincarnation-』「杏藤千和シナリオ」の感想・レビュー

パパゲー。孤独に陥りやすい少女:千和を3人の父親が温かく見守る話。
千和は両親から愛されず永遠の命のための供物として育てられていた。
千和の両親はカニバリズムに走った為、殺害され、千和は孤独となる。
そんな千和を歪んだ過去を持つ三人の男たちが育てていくのだ。
主人公くんは千和と父親の絆の過去を解き明かしていくこととなる。
最後は出産で千和が死にかけるもパパの力で母子共に健康エンドを迎える。

如何にして杏藤千和魔法少女となりしか?

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  • (1)フラグ構築編
    • 主人公くんは設定として、かつて夜の魔王を倒した元魔法少女たちの願いを叶える役目を負っています。そのため、少女たちの願いが叶えるに値するかを判断するため、関係性を深めることが要求されています。それ故、フラグ構築をさせなばならないのですが、どのヒロインも最初から割と好感度マックス状態であり、なかでも千和の好意は周囲にバレバレ状態でした。千和は幼馴染ズの後押しもあり、デートをして告白に漕ぎつけます。しかし主人公くんは恋愛などを深く考えたことなどなく、ドッキリテレビのように仕組まれたものだと判断してしまうのです。一世一代の告白を踏みにじられた千和・・・学校を休み、転校騒ぎも起こって主人公くんは慌てます。そしてバラエティ番組「未成年の主張」よろしく学校の屋上から思いの丈を叫び、関係性を修復したのでした・・・とフツーの作品ならここでハッピーエンド~~とかなるのでしょうが、ところがどっこい!千和の父親が殺されると、ここからクソ長いクソナガスクジラなファンタジー展開の始まり始まり。千和の魔法の願い事を知るために、千和の過去の真相に迫ります。



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  • (2)両親から愛されなかった少女
    • 杏藤千和は、両親に愛されない子どもでした。千和の家系はヒトデナシと言われる永遠の命を追い求める家系であり、子どももその供物にしかすぎなかったのです。その家に伝わる伝承はこうです。寂しさを抱える少女たちを怪物は夜の国に攫い、さくらの木に少女の命を捧げる代わりに夜の世界で不死にするといった内容です。そのため、夜の世界で不死となった少女をさらに人肉食すれば永遠の命が得られると思ったのでした。千和の両親たちは、娘に悲劇を与えることでさっさと怪物に連れ去られる生贄にしようとしていたのでした。しかし、千和が攫われる前に、別個体の不死となった少女をゲット。両親たちはその少女を貪り食います。これに激怒した怪物たちにより千和の本当の両親たちは殺されてしまったのでした。血だまりのなかで悲しみにくれるところへ現れたのが、千和の両親を殺した怪物。千和は怪物たちにより育てられることとなったのでした。



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  • (3)パパ1号ソルさんを間接的に殺してしまったことが、千和魔法少女になった要因
    • 杏藤千和を育ててくれたパパ1号がソルさんです。ソルさんは怪物出身ではなく元々はフツーの人間でした。かつて妻と娘と3人家族で幸せに暮らしていたのですが、娘の誕生日にケーキの蝋燭の不始末で火災が起こり、妻と娘を亡くしてしまいます。悲しみに暮れるソルさんは自らの命を引き換えに娘を蘇生することを決意。その代償にソルさんは怪物として夜の世界を生きることとなり、悲劇の少女を攫ってはその命をさくらに捧げるお仕事に従事することとなります。
    • 千和の本当の両親がカニバリズムした少女は、ソルさんたちが不死にした少女でした。結果として、千和は両親を殺した怪物に育てられることとなります。ソルさんは千和にたっぷりと愛情をこめて接し、千和もソルさんに懐き、もう一人の怪物ナハトさんと一緒に幸せな時間を過ごします。ソルやナハトといった怪物への名前も千和が考えたものでした。
    • けれども幸せな時間は長くは続きません。千和は現世でソルさんの娘の噂を耳にします。かつてソルさんが自分の命と引き換えに救った娘は、もう老年となっており最後の時を迎えようとしていました。それを知ったソルさんは娘に会いに行ってしまいます。時間の流れも住む世界も違うソルさんたちは、現世の人間と触れ合えば寿命を削ってしまいます。ソルさんは娘と最期の時間を過ごせたと言えば良かったのですが、ソルさんもまた死ぬこととなったのです。そうです、千和が間接的にソルさんを殺したといってもいいでしょう。千和はソルさんを蘇生するという願い事を叶えるために、55年後の未来へ飛び、魔法少女となって夜の魔王と戦うことになったのです。



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  • (4)パパ2号ナハトさんの千和を思う父性
    • はっきりいって千和√はナハトパパゲーです。もうシナリオの大半はナハト!ナハトさんの父性をご堪能ください。
    • ナハトさんは夜の世界の怪物出身で、現世の悲哀少女を攫ってさくらに捧げる役割を与えられていました。孤独で寂しがり屋のナハトさんですが、ソルさんとの出会いや、千和との交流を通して、孤独の心が癒されていきます。それ故、ナハトさんは千和が間接的にソルさんを殺し、それを蘇生するために未来に行ってしまうと、衝撃を受けます。そしてどうすれば千和が本当に幸せになれるかを考え始めるのです。死者の蘇生は余りにも大きすぎる願い事であるため、失敗するだろうと想定します。さらには、その代償として千和が生涯孤独を通すであろうことをもまた予想するのです。そのためナハトさんは、千和に願い事を使わせない計画を練り始めます。未来で再び千和と再会することを願って。未来で待ってる。
    • ナハトさんの計画とは、ソルさんの影武者を用意し実はソルさん死んでなかったよ~ん展開を用意することでした。この計画に選ばれたのが、パパ3号の遠矢さんであり、「十夜」の関係者であることが伏線として張られています。55年後の世界で見事千和たち魔法少女が夜の魔王を倒し帰還すると、千和はソルさんと再会できた!!となります。そしてソルさんの影武者であるパパ3号の遠矢さんは本当の愛情を注ぎ、ハルが高校卒業するまで温かく見守るのでした。



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  • (5)主人公くんとタイムパラドックス問題
    • 夜の世界で起こったことを人間は成長すると忘れてしまいます。千和は55年前の過去から来たので、どう足掻いても世界の修正力により主人公くんと結ばれないのです。どうすればいいの!?主人公くんはナハトさんから夜の世界から排除され、どうにもならなくなってしまいます。ここでついに千和を選び抜くことを決意し、クロの力を使って再び夜の世界へと舞い戻り、ナハトさんと対峙ます。ナハトさんの目的は千和と伴侶になるのに相応しい人物かを見極めることでしたので、割と善意に満ちた展開となります。青春の3年間をお互いの存在を忘れ触れあえずに過ごすことを代償に、記憶忘却を防げることになります。そして3年後の千和の卒業式。主人公くんはフラグ構築編で行った「未成年の主張」をここでも行い、見事千和と結ばれたのでした。
    • エピローグでは、身体の小さい千和が赤ちゃんを産めないと医者に告げられショックを受けるのですが、それでも生みたいと願ってしまいます。案の定、千和の容態は悪くなり死にかけます。エピローグでCLANNAD渚展開かよ~~~とプレイヤーの多くが思った事でしょう。しかし、優しい世界は続き、ナハトさんの力で千和の容態は回復に向かいハッピーエンドを迎えます。もう最初っから最後までナハトさんゲーでした!!!



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