雑録

『さくら、もゆ。 -as the Night's, Reincarnation-』 「柊ハル√」の感想・レビュー

二重ループギミック!お互いを助けようとしてバッドエンドを繰り返す話。
「俺が君を助ければ、未来の中で俺が死に」
「君が俺を助ければ、現在の中で君が死に」
未来を改編するためには、お互いが根底に抱える問題を解決しなければならない。
主人公くんにとっては出来るだけ悲惨な死に方をしたいという自殺願望。
ヒロインにとっては虐待した母親との和解。
全ての問題が解決されると改編に成功し、ハッピーエンドを迎える。

二重ループギミック!バッドエンドのオンパレード!

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  • (1)【1周目】被虐待児:柊ハル編~主人公くん(壮年期)がハルの母親を道連れにメガンテ
    • 柊ハルは母子家庭で母親から児童虐待を受けていました。母親はハルを自分で監禁しておいて、第三者に誘拐されたと嘯き、マスメディアに登場しては悲劇のヒロインを演じて援助資金を巻き上げていたのでした。母親のプランの終局部は、娘が誘拐犯に殺される姿をテレビの生中継で放送すること。ハルママはテレビスタジオにおいて芸能人たちとそれを見守り、殺害後に涙を流すという計画が仕組まれていました。
      • 【伏線回収】このハルの家庭の問題も、「遠矢」の一族が背景にあります(※千和√・姫織√参照)。猫又族の十夜が救った少女の子供が遠矢であり、その遠矢は母親を救うために実家に戻ることを決意し、千和の第三の父親となります。しかし遠矢には自分の娘がおり、自分のホントウの嫁と娘を蔑ろにする結果になってしまいます。この見捨てられた娘がハル母。すなわちハルにとって遠矢は祖父。千和の喫茶店に遊びに行った時、フツーに祖父である遠矢とニアミスしとるやんけ!
    • で、ハルは母親に殺されそうになるのですが、これを救ったのが主人公くん(おじさんver)でした。主人公くんは幼少期から自殺願望があったのですが、壮年期になっても未だに自殺願望があったのです。かつてヒーローになることを祈った主人公くんは、出来るだけ悲惨な死に方をしたいと願い、悲劇の少女を救うお仕事に就きます。ハルを救済する件もそんなお仕事のうちの一つだったのです。ハルを母親から救った主人公くんは世間からは指名手配されますが、ハルの心を癒していきます。ハルにとって主人公くん(おじさんver)は自分を救い出してくれたヒーローのような存在でした。しかし幸せな逃亡生活は長くは続きません。最終的に母親と対峙することになった主人公くんは、ハルの母を殺し、また自らも殺されることによって、ハルを呪縛から解放したのでした。



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  • (2)ハル、夜の魔王との戦い。過去の時間軸で幼少期主人公くんと邂逅す
    • 主人公くん(おじさんver)を失ったハルは、「大切な人に起こる未来の不幸を肩代わりすること」を強く願います。この願いが夜の世界に届き、魔法少女として選ばれます。魔法少女は過去現在未来全ての時間軸から適性ある少年少女を結集させます。もう元の時間軸には戻れません。ハルがいた時間軸は未来の時間軸でしたが、夜の魔王を倒し願い事を叶えるために過去の時間軸へとやってきました。そこでハルは一人の少年と出会うのですが、なんとそれはハルが惚れたオジサンの幼少の姿だったのです。主人公くんの言動や雰囲気、そして手に触れたハルは、その少年とオジサンが同一人物であると確定。ハルにとって主人公くんは自分の心を曝け出せる特別な存在として好感度を蓄積していきます。他方で主人公くんは、他者に望まれたように振る舞えるハルに尊崇の念を抱きつつ自分にだけは自己の心を晒してくれるハルに心情を深めていきます。
    • 以上のように主人公くんに対してハルはもう既に好感度はマックス状態だったのですが、主人公くんの心にはクロがいることに気づいてしまいます。そのためハルは魔王撃破後、里子にだされることを受け容れます。自分の元の時間軸には戻れず、身寄りもいないハルは、主人公くんから身を引いたのでした。



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  • (3)兎蛙姉弟
    • 里子に出されていたハルでしたが高校生の時に養父母が死に孤児院に戻ってきます。そして主人公くんたちと再会するや否や、ゲリラライブでアイドルすることになるのです。それは、かつての幼馴染ズの一員でもある主人公くんのマブダチである兎蛙智仁が、突如春の文化祭でゲリラライブをやりたいと言い出したからでした。智仁は姉への想いを歌に乗せ、それを未来へ伝えたかったのです。
    • 共通√や千和√、姫織√などでチラチラでていたあず咲さんの謎がここで回収されます。あず咲さんは特殊能力持ちであり、それは満月の晩に眠ると未来跳躍してしまうというものでした。智仁はこれを何とかするために夜の魔王との戦いに参加していたのですが、主人公くんが夜の世界の満月の時にあず咲さんを連れ出した際、未来跳躍が発動してしまうのです。遠くの未来に飛ばされてしまったあず咲さん・・・しかし現在の時間軸には思念体であるあず咲さんBが残ったのでした。あず咲さんBは思念体として智仁の世話を色々や焼いてあげるのですが、ある時ささいなことから口論し、あず咲さんBなど本物ではないと言い放ってしまうのです。そしてちょうどその時智仁は大人判定されるようになってしまうのです。夜の世界の住人は大人になると見えなくなってしまいます。ケンカ状態のままで、智仁はあず咲さんBと永遠の別離をすることになってしまったのですね。そのため智仁は姉に自分の想いを伝えるため、ライブをしたかったのです。
    • しかしながら智仁は歌の才能が一ミリもありません。これを見たあず咲さんBは、主人公くんに事情をはなして理解を得、智仁に音楽の才能を付与したのです。自らは弟の居る現世を離れて夜の向こうへいくことを代償にして。あず咲さんBは消滅したものの文化祭は成功し、その歌は未来にまで語り継がれるというビター展開となります。



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  • (4)二重ループギミック発動。何回やってもバッドエンド直行フラグまっしぐら。
    • 兎蛙姉弟の問題を解決した主人公くんとハルはまた一歩フラグを構築していきます。そして今度はハルの魔法を叶える番となるのです。しかしここで主人公くんはハルを無条件に信頼してしまい、その願い事の審議をしないで、魔法を発動してしまうのです。するとどうでしょう!なんとハルは自殺してしまったのでした!!!!
    • ハルとよく話し合わなかったことを後悔した主人公くんは、ここで自分の願い事を発動。タイムリープの力を手にします。しかし過去跳躍先は既にハルの魔法を使ってしまった後にしか戻れませんでした。限定6回の繰り返しのなか、失敗を重ねつつもあさひさんのアドバイスなども受けながらハルの過去を解き明かしていきます。そのハルの過去が上記(1)の部分です。
    • これにより二重ループのギミックが明らかになります。つまり1周目の時間軸では主人公くんが未来で死ぬので、ハルは自らの命を代償とすることで、未来で自分と主人公くんを会わせないように願ったのでした。しかしハルが死ぬと今度は主人公くんがループの力を手にしてハルの命を救おうとします。ハルを救ってしまえば、未来の時間軸で主人公くんとハルは出会うことになり、主人公くんは死にます。これが文中では「俺が君を助ければ、未来の中で俺が死に」「君が俺を助ければ、現在の中で君が死に」と表現されています。
    • 真相を知り絶望する主人公くんですが、ここでクロのアシストが入り、ハルの魔法の発動前まで跳躍することができました。そして新たな策を編み出します。それは、主人公くんが自分でループするのではなく、ハルに時間跳躍してもらおうとの考えだったのです。



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  • (5)バッドエンドの世界線を乗り越えるには、母親との和解が必要です。
    • 主人公くんに代わって時間跳躍したハルは、1周目の時間軸、即ち虐待から主人公くん(オジサンver)が助けてくれるところまで戻ります。主人公くんとハルはこのまま逃亡生活を続けることを選んで、幸せになるのですが・・・なんとぉここでもバッドエンドでござる!!!なんとハルは桜が咲く時以外は植物人間状態になっちゃうよ病にかかってしまうのです。そして主人公くんはハルの介護疲れで死ぬ。これ以外にも数多の世界線からハッピーエンドを探すハルでしたが、何度も何度もバッドエンドを見せられます。これは心が折れるぜ☆絶望するハル・・・もうこれ以上歩けない・・・そんな中、クロの導きによって、母親と邂逅するのです。母親はハルを虐待していましたが、その前は母子家庭で母と娘が協力して生きていこうという母性愛を十分持っていたのです。ここでハルは魔法を発動!「お母さんが昔のやさしいお母さんに戻ってくれますように」。こうして、ついに、ママンと和解したことにより、ハッピーエンドの世界線を手繰り寄せるのです。
    • 時間軸は本編のプロローグ、ハルの帰還まで巻き戻ります。そして主人公くんとの再会。ハルと出会うことで主人公くんは今までの記憶が蘇ります。ラストは主人公くんが教員となり初任給でハル、あさひさん、十夜の4人で外食をしようとした所で終わります。ようやく大人となった主人公くんはついにあさひさんと十夜の姿が見えなくなり記憶も消えてしまったのです。それでもあさひさんが作ってくれたハルへの花嫁衣裳は残っており、二人の記憶の残滓に触れながらお嫁さんエンドとなります。

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