【発売前予想】2019年5月発売 新作ノベルゲームの趨勢について【下馬評】

2019年5月発売の新作の中でノベルゲーっぽいのは6本。
体験版をやった中でシナリオ重視で読めるのは『トメフレ』と『タマユラミライ』でしょうか。
ポテンシャルを秘めているのが『トメフレ』で体験版の時点では結構期待できそう。
『ぬきたし』のように一見すると抜きゲ系ギャグゲーですが、シリアス描写の伏線も張られます。
耐えられぬ夜の孤独感や寂しさを描いており、どうしようもならない閉塞感の雰囲気が良いです。
一方『タマユラミライ』は妖怪変化の調停を目的とした異能バトルモノです。田舎社会を秩序維持。
明るく楽しいヒロインとの交流やツンデレ弟子との関係性の変化が楽しめます。

以下は、個別の下馬評です。

目次

『彼女は友達ですか? 恋人ですか? それともトメフレですか?』

  • 5月一番のダークホース?
    • 一見すると「神待ち家出少女」を題材とする抜きゲーです。しかし単なる抜きゲーではなく『神待ちサナちゃん』のようにシナリオに力が入っており、社会のレールからはみ出てしまうアウトサイダーたちが描かれていきます。だからといって、深刻になりすぎずシリアス一辺倒にならないように、ギャグで捌いてシナリオを進めていきます。このギャグ要素満載の男女間の駆け引きが最近流行った『かぐこく』を彷彿とさせずにはいられません。オッサンの軽妙な解説がツッコミを交えながら入ります。
    • シナリオの主題は「耐えきれぬ孤独な夜の寂しさ」であり、家庭環境に問題を抱えた少年少女のやるせない思いや、群れずにはいられない心境がグッときますね。家族との関係がうまく行っていない(いなかった)人や一人暮らしの人はこの作品の主題に共感できるのではないでしょうか?
    • そして主人公くんも「陰キャぼっち」という設定ですが、ヒロイン達と同じようにワケアリの過去を秘めてゐます。これはちょっと『こんぼく』っぽくて主人公くんが武道の達人であったものの、他者を助けようとして暴力を振るってしまい、トモダチにも裏切られるという展開が待っています。ヒロインたちの個別の問題を通して、社会的な問題を抉り出すことが出来れば、名作になりそうな予感を秘めています。



 

『タマユラミライ』

  • 5月作品ではシナリオゲーの筆頭。異能バトルで妖怪変化を調停。
    • 上記『トメフレ』がダークホースだとしたら5月のシナリオゲーのホープが『タマユラミライ』。田舎社会の秩序維持と安寧を託された若き主人公くんがルーン文字と西洋呪術を使用して、日本の妖怪変化の調停者となります。単に異能バトルで妖怪を叩き潰すのではなく、よく話を聞き、事情を理解してあげる所がポイントとなっています。体験版ではツンデレなイヌとサルの和解が題材となっていますが、妖怪調停モノですので、この事件解決編で如何に面白い題材を引っ張ってこれるかでシナリオの出来が変わってきそうです。ライターがどれくらい怪異や神話などに精通しているのか。また、その知識を垂れ流すのではなく、読者にどのように娯楽として提示できるかに掛かってきそうです。
    • キャラの中でとりわけ印象に残りやすいのはツンデレ黒髪ではないでしょうか?高位の霊能力を持つがゆえに排斥され人間不信となったツンデレちゃんを、主人公くんがどのように解きほぐしていくかが楽しみですね。裏切られ続けたからこそ、期待と不安でいっぱいになり、主人公くんなら信頼できるかもしれない/今回もダメかもしれないというアンビバレンツな思いが見所となっています。



 

『Eスクールライフ』

  • キャラ攻略だけを目指した全体的な目的の無いフツーの学園モノ
    • 割とフツーの学園モノを作り続けるHOOKSOFTが今回も学園モノを提供。シナリオにテーマ性はなく、可愛い女の子とイチャコラするだけのキャラゲー風味となっています。特にシリアスな問題も抱えておらず、キャラとの学園での交流が主軸に置かれています。この場合、攻略したいキャラがいるかどうかが勝負の分かれ目となるかと思うのですが・・・いやーぶっちゃけこの作品でしか攻略できない独自性のあるキャラや、この作品で新たに生み出された新規性のあるキャラとかいないと思われます。どこかでみたことのあるようなキャラクターとどこかでやったようなイベントをこなすだけのように感じてしまいます。
    • えーっと、作品のwebサイトを見てきたら、一応本作品の独自性と新規性のギミックとして、噂話システムというものがあり、モブキャラからヒロインの情報を手に入れることで、会話の対応が変わるとのこと。いや、新しいシステムを搭載しているのなら、なぜそれを体験版で体験させないのであろうか?もしくはちゃんと搭載されていて私が気がつかなかっただけ!?



 

D.C.4 ~ダ・カーポ4~』

  • 今なお続く曲芸商法
    • 伝統と格式の曲芸商法。一つのコンテンツで様々なマイナーチェンジ版やFDスピンオフ続編を出しまくり、尚且つナンバリングを重ねるという凄まじい商法を展開します。キャッチフレーズは「こそばゆい学園モノ」ですが、純粋な学園モノではなく、シリーズ共通の題材として「枯れない桜」や「魔法」や「奇跡」や「異能」が用いられており、ラスボス?には「芳乃さくら」がいます。しっかし、『1』が2002年、『2』が2006年、『3』が2012年で『4』が2019年か・・・。ダ・カーポシリーズは、音夢の等身大ポップを持って旅行する人がいたり、音夢に入れ込み過ぎてニューヨークタイムスに取材される人がいたりと、作品外コンテンツを生み出したことでも有名でした。
    • 本作、『4』の作品の話を致しますと、体験版の時点では主人公くんは余り活躍致しません。「カップル樹立支援大作戦」という題材もアレですが、主人公くんは何か後ろの方にくっついてチョロチョロしているだけのように感じられてしまいました。せめてイモウトが告白されているのだから、そのシーンぐらいは入れても良いと考えられますし、沢山の男性から言い寄られるイモウトに接しても、余りにもフラット!!もう少し、こうなんか感情を動かしても良いのではないですかね?
    • そして主人公くんは「相手の心からの笑顔を映し出すことの出来る手鏡」を魔法として持っており、本編では体験版で結成した「他人を笑顔にする同好会」で様々なイベントをこなすようです。体験版の時点で主人公くんが何もしなかった恋愛相談事件なのに、これを主軸にして果して物語が転がるのだろうか?と思ってしまいます・・・。逆を言えば、この作品をやった他のプレイヤーの皆さんが、どんな感想を書くか楽しみな作品でもありますね。



 

『恋嵐スピリッチュ』

  • みけおう原画集
    • みけおう先生は歴史ある原画師のうちの一人で、みけおう先生自体が一種のコンテンツとなっています。そのためみけおう先生が原画を担当すれば、信者はある程度購入するであろうことが予想されます。他の原画師がそうであるように、みけおう先生も長い歴史の中でその絵柄が変わってきており、最近ではキャラ造形が太ましいデザインになっています。最初の方は結構ヒロインの顔がほっそりというかスタイリッシュな感じだった気がします。
    • シナリオの方ですが、奇しくも同日発売の『タマユラミライ』と路線が一緒。妖怪変化と戦う中二系異能バトルです。ただ本作品の場合は、さまざまな怪異自体がテーマとなっているのではなく抜きゲーよりです。ラスボスは最初から登場している死霊であり、200年の間処女を拗らせているため、主人公くんをその相手として求めています。しかし初めては怖いから~と主人公くんとヒロインに性交させ、それを眺めるとかいう展開になります。またもう一つ挙げておくべき抜きゲ要素としては、霊力の大きさ=乳の大きさであり、霊力の増減で変化する立ち絵を楽しむことが出来ます。そして主人公くんは相手を交わることで霊力を増大させることができ、霊力が低いことをコンプレックスにしてたエクソシストのヒロインを豊胸させたりします。ここら辺がシナリオゲーというよりも抜きゲに近いキャラゲーである所以ですね。



 

『ガールズ・ブック・メイカー -幸せのリブレット-』

  • 溢れる地雷臭
    • 童話作品の登場人物女体化シリーズ。シナリオよりかは原画をメインにした作品ですが・・・とにかく原画師の数が半端ではありません。最近流行ってる作風の絵を描ける人材を搔き集めて来た感じ。こう書くと手当たり次第にイラストレーターを起用しているソシャゲに近い感がありますね。
    • 気になるシナリオの方ですが地雷臭が感じられてなりません。童話を題材にしているので、それを踏まえた上で、どのような作品を提示してくれるのかが期待されていました。童話をモチーフにした作品としては『フェアリーテイル・レクイエム』という名作があるので、それを意識していないはずはないでしょう。しかし体験版の時点では余りにもチープな内容。尚且つ、敵側が原作改編をするのでそれを防ぐのが目的なのですが、メーカー側が思いっきり童話のキャラを女体化して原作改編してるやん!!と突っ込まずにはいられません。そしてシナリオライターも原画師に負けない程の数の多さ。衰退していくノベルゲー業界に新しいメーカーが参入することは良いことだと思いますが、一発で終わらないことを祈っております。