ヘリテージツーリズムとその周辺

ヘリテージツーリズムを核とすることで周辺事項を横断的に結びつけることができる。
研究が蛸壺化しやすいなかで、各学問の成果を総合し、現実社会に役に立てることが出来る。
逆に言えば、ヘリテージツーリズムをやるには周辺領域の知識が必要であるともいえる。

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ヘリテージツーリズムと周辺領域

  • 歴史学
    • ヘリテージツーリズムは文化遺産を観光資源とするので、その文化遺産がどのような歴史的価値を持つのかが重要となる。歴史的価値付けをするためには歴史学の知識が必要不可欠であり、文化財を通してその地域の歴史を叙述できるようになる必要がある。
  • 博物館
    • 博物館は文化財の収集・保管・展示教育・調査研究をその4機能とする。そのため文化財を観光資源とするヘリテージツーリズムにおいては、博物館そのものが一種の訪問場所、観光資源となる。文化財を活用して観光客を誘致することで、地域の歴史を知ってもらい、教育普及活動をすることでリピーターを獲得し、地域振興にも資することが出来る。
  • 先住民
    • ヘリテージツーリズムの一環として「indigenous tourism」つまりは先住民の文化が観光資源となる。北海道でいえばアイヌ文化。少数民族の文化を観光資源とした事例としては満洲国が先駆的であり、満洲国立中央博物館新京本館の大経路展示場ではオロチョン族などの少数民族展示が行われ、戦後日本の原型ともなった野外博物館を建設しようとしていた。
    • また帝国主義先住民族の圧迫は避けては通れないテーマであると同時に、植民地に建設された帝国時代の文化遺産が、独立したかつての植民地において観光資源とされているケースも散在する(中華人民共和国長春における旧日本帝国植民地遺産)。
  • コンテンツ産業
    • 所謂聖地巡礼、ファンツーリズム、アニメツーリズムなどで舞台訪問をすることがある。しかし、単に作品に出てくる箇所を見て満足かというとそうではない。現地で作品の物語の再現をして楽しむという消費形態がある。またその舞台はいきなり切り取られたものではなく、歴史の積み重ねによりその景観が生じたのである。それゆえ、その地域の歴史的背景を知ることでコンテンツツーリズムをより楽しむことが出来る。ヘリテージツーリズムとコンテンツツーリズムには親和性があり、単にアニメやゲームや漫画やラノベの舞台を訪れるだけでなく、それらを歴史や文化遺産に結びつけることが重要である。歴史に興味がない人々に歴史に興味を持っていただくきっかけにもなる。
  • 地域振興
    • コンテンツ産業の舞台となることで、人々がその地域を訪れるようになりカネが落ちる。経済が活性化する。カネだけではなく、地域の景観や文化にも興味が生じ、作品を生み出した地域が滅亡しないように、維持・継承活動も行われる。現在、持続可能な社会が国是とされ、至る処で、「サスティナブル」というタームが氾濫しているが、コンテンツツーリズムで価値観を付与しヘリテージツーリズムで地域文化の啓発と普及を図ることが出来る。
  • 教科教育
    • 若者はコンテンツ産業と親和性が深い。マンガ・アニメ・ラノベ・ゲームには多くの子供たちが触れていると思われる。そのためコンテンツ産業を利用した教科教育が唱えられているが、コンテンツ・ヘリテージツーリズムは地理歴史科教育に大いに役に立つ。作品の舞台がどこにあるのか、土地利用はどうなっているか、聖地巡礼する時にはどのような順路を組むかなどで地理が学べる。また、その地域や景観や舞台がどのように形成されたかを知るためには歴史を学ぶ必要がある。こういったコンテンツ要素を受験と結びつけることができれば興味あることか学問への第一歩となりうる。