コンテンツを利用した地域振興における問題点 静岡県沼津市における西浦みかん事件(2020)について

コンテンツツーリズムを研究していると、必ずといって出くわす問題があり、その一つに「コンテンツに性的要素が含まれるという批判への対処」というものがある。

先行研究としては、のうりん美濃加茂市事件(2015)、碧志摩メグ三重県志摩市事件(2015)、まいてつくま川鉄道事件(2016)、宇崎ちゃん献血事件(2019)、ゆずソフトエスコヤマ事件(2019)などはおさえておかねばならないだろう。これらの事例にまた新たな事例が加わった。

それが静岡県沼津市西浦みかん事件である。

概要を簡潔に述べれば、ポスターに描かれたキャラクターのスカートの表現方法が性的であるという批判が起こったのである。

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これらが孕んでいる根本的な問題として「コンテンツ」そのものに対する偏見というものがある。今でこそアニメ・漫画・ゲーム・ラノベといった大衆娯楽はクールジャパン効果もあり徐々に世の中に浸透してきてはいるが、少し前までは排除される対象であったのである。それゆえ香川県のように保守派層がゲーム脳を持ち出し条例で規制するのも、今回のように左派層が社会的性差を根拠にイラスト表現が性的であると批判するのも同質の傾向を持つと言える。つまりコンテンツは社会悪であり叩くものという概念が植え付けられてると考えられるのだ。

以上により、コンテンツを利用した地域振興においては、これからも必ずこのような事件は発生するであろう。一過性の論争で済ませるのではなく、2010年代後半から際立つ問題としてアーカイブしていき、後世の人間に伝えていかねばならない。

さらに問題となったのは社会的性差を専門とする研究者が「食料品の買い物するお母さん向けに考えないのはなぜ?オタクがミカン箱買いするとでも?」と述べたこと。伝統的な社会に押し付けられた性的役割分業を批判する立場を取りながら、自分が批判の根拠を伝統的ジェンダーロールに求めてしまった矛盾点が浮き彫りとなったのでした。