雑録

アマカノ2 「黒姫結灯」シナリオの感想・レビュー

「家の期待」を生存理由としてきた少女が限界を迎えてアイデンティティクライシス。
自我を押し殺した末に心が軋んで出奔するが封建少女に「自分」というものは無かった。
それ故、家を出たにも関わらず、結局は昔通りに優等生を演じることしかできなかった。
演技を見抜いて踏み込んだ主人公は強く拒絶されるが、心を開かせ拗らせ系少女を救う。
主人公によって自己をさらけ出せる強さを得た結灯は父親と和解することに成功。
最終場面では自己肯定感の必要性を過去の自分に説くというギミックになっている。

黒姫結灯のキャラクター表現とフラグ生成過程

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  • 強すぎる承認欲求と他者受容願望
    • 黒姫結灯はポニーテールがトレードマークの優等生な転校生。しかしながらその実態は拗らせ系少女であり、優等生を演じるたびに心が軋んでいたのでした。そもそも結灯は優等生を演じ続けることに限界が生じ、実家を飛び出して知り合いの旅館に身を寄せることになりました。一見すると、窮屈な家から解放されたのだからありのままの自分をだせばいいじゃないか!!と思われるでしょうが、今まで他者の期待に応えることを生存理由としてきた結灯には、「自分」なんてものはなかったのです。それゆえ優等生を演じ続けることができなくなったのに、それでもなお優等生を演じることしか出来ないという袋小路に嵌って立ち往生していたのですね。優等生のはずの結灯がワケも無く学校をサボってしまうことがあるのは、上記の理由からきていたのです。
    • 主人公は文化祭の準備委員での協同作業を通して、結灯の心の軋みに気付いてしまいます。結灯の影の部分を知った主人公は激しい拒絶を受けることになりますが、根気よく、諦めず、オープンハートされるまで、何度もチャレンジしていくのです。いわゆる一つのギャップ萌えとかいうものではありますが、暗黒結灯が良い感じに表現されています。結灯√では、演技された虚構の優等生の結灯、闇落ちブラックモードの結灯、癒されて近代的自我の確立を成し遂げていく結灯と様々な結灯を楽しむことができます。

  
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  • 近代的自我の確立と自己肯定感
    • 親の期待に応えることが出来ずに家を飛び出したけれども解放されるべき「本当の自分」なんて無く自分の人生の薄っぺらさに気づき精神崩壊した結灯。そんな結灯の心の傷を癒した主人公は、フラグ構築後には、一緒に結灯の自己肯定感を育んでいきます。演技をしていない結灯そのものを受け入れて愛情を注ぎ、家族愛を示し、クラスメイトにも徐々に自我を出せるよう助けていきます。
    • そして一番の問題である結灯の家族問題に立ち向かいます。封建的で厳格な家庭に生まれた結灯は、ありのままの自分を出したら失望されたという過去を背負っていました。そのため結灯のトラウマを本当の意味で解消するためには、親に優等生ではない結灯そのものを分かってもらうという難度の高いミッションが待ち受けていたのです。一般的な家庭でも、親は良かれと思って厳しい躾を施し自己の価値観に従わせようとするものです。けれども子どもにも自我があるため反抗期を迎えるとぶつかり合いが生じ、その結果、両者は価値観の折り合いをつけて関係性を再築するという結末を迎えます。しかし親の期待に応えらえれないというのは悲しいし寂しいし絶望もします。黒姫家の場合は、ぶつかり合うことができなかったため、結灯は逃げることしかできなかったというワケさ。

 

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  • 親との和解とトラウマ解放
    • 黒姫家の家の事情を察していく主人公でしたが、その一方で、未だに結灯がサンタを信じていることから結灯の親の愛情に気付くことになります。それ故、正月休みには帰京を促すのです。親に本当の自分を出してみて、もし拒絶されたらまた逃げてもいいし受け入れてあげると励まして送り出すのです。結灯の変容に驚愕した父親は主人公と対面するために乗り込んできますが、そこで娘の本質を知ることになり、家の束縛や価値観の押し付けを悟ったのでした。和解が成立!
    • そして最終局面。これまで結灯のトラウマは所与のものとされ、詳述は省かれおり、過去に一体何があったんだ!?という謎が残されていました。しかしここでファンタジー的ギミックが挿入されトラウマの解明とともにその解放が行われるのです。結灯は迷子の女の子に遭遇し、親の言いつけを守らなかったため迷子になってしまったと嘆く少女を励ますことになります。ここで結灯は、少女が自分を「悪い子」だと思い込み自己を否定する姿を見て、それを否定しようと自己肯定感を説くのですが・・・なんとビックリ!その迷子の女の子とは過去の結灯自身の幻影だったのです。主人公により自己肯定感を得た結灯が、過去の自分のトラウマ解放を自分で行うことにより、自分もまた救済されるというギミックが取られています。

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