『Summer Pockets』における「無印本編」と「REFLECTION BLUE」の終局部の相違点について

グランドエンド後、神山識の思念体が突如介入し鷹原家のハッピーエンドが挿入される。
「チャーハン」により形成された円環の理が人々の絆を「おむすび」したというオチである。
自己の存在を賭けてバッドエンドを回避しようとした羽未の犠牲は報われたのであった。
しかしながら唐突な介入と取って付けたかのようなハッピーエンドは物議を醸し出すかも。
個人的には(どすこいと言われそうですが)正史での親子和解をきちんと描いて欲しかった……

1.【差異点】親子三人ハッピーエンドを迎えた世界線を挿入したことに関して

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  • (1)無印版の「チャーハンの作り方教えてエンド」の方が味わい深いかもしれない
    • サマポケの無印版とファンディスクの一番大きな違いは終局部に親子三人ハッピーエンドが挿入されたことと言えます。グランドエンドの主題は、「しろはの根本的な問題となっている異能の呪いを解消するために、うみ(羽未/七海)が自己の存亡を賭ける」ということでした。主人公としろははお互いが傷ついていたからこそツラさや苦しみを共有することが出来て結ばれました。そのためしろはの異能問題を解消してしまうと、しろはが傷つかない代わりに主人公と結ばれることもなくなり、うみも誕生しないのです。
    • ここが泣きゲーとしてのポイントとなっていたのですが、その一方で完全なるビターエンドにするのではなく救いがあることを匂わせるオチとなっていました。すなわち無印版では、作中で人々をむすびつけるチャーハンがグランドエンドの終局部でも作用し、主人公がしろはにチャーハンの作り方を請うシーンで終わらせることで、後に二人がフラグ構築する(=うみが生まれる)であろうことを暗示させて終わるのです。完全に描き切らないことで、読者がその後を想起させる余地を残しており、それがシナリオを情緒深くしていました。
    • しかしながらファンディスクであるリフレクションブルーでは、親子三人のハッピーエンドが明確に挿入されます。確かに鷹原ファミリーが仲睦まじく一家団欒しながら手を繋いで歩いていく場面が感動を誘うことも十分理解できますし、近年ではそういうのが求められているのかもしれません。しかし蛇足のように感じられるのも確かであり、そんなに無理矢理にハッピーエンドで終わらせなくてもチャーハンエンドで十分ハッピーじゃない?

 
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  • (2)ハッピーエンドを挿入する役割としての識の扱いについて
    • チャーハンエンドの後に、ハッピーエンドをもたらす役目を負うのは追加ヒロインの神山識さんです。突如思念体としてエピローグに介入してきます→→「おむすびだぜぇ~」。物議を醸し出しそうな点はこの唐突なる介入について。神山識さんというキャラは、個別ルート以外シナリオに殆ど絡んできません。グランドエンドに入った時点で識によって津波被害が防がれた後の世界線であることが言及されているので、登場させようがないのですが。そのため、他のヒロインとの絡みもほぼ無く、うみの人生を改変できるほど関係性が構築されていたとは言い難いのです。関係性を挙げるとするならば、識もうみもループ要素して過去改変を実現したということ。二人は自己を犠牲にすることで、凄惨な過去を改変したという点では共通しています。故に、終局部で識の思念体が介入することはおかしくないといえばおかしくはないのですが、識とうみの接点が少ないので、ハッピーエンドが取って付けたかのように感じられてしまうのです。

 

2.【共通点】正史√現代編の欠如

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  • ネグレクト問題は乗り越えられなかった
    • 何回も書いてしまっているのでしつこいかもしれませんが、しろは死亡後の父子家庭問題こそ描写が必要だったのではないかと思っています。しろはが周囲を頼れず自分で苦労を抱え込みその心労で死んでしまったことも悲しいことですが、正史ルートで主人公がネグレクトしてしまったことこそがサマポケの根本原因でした。リフレクションブルーではグランドルート以外の個別シナリオでうみルートが用意されていたので、この父子家庭問題にきちんと取り組むものだとばかり思っていました。過去跳躍して父親の人間性を知ったうみが現代の時間軸に戻り凍てついた主人公を癒して家族を再生するって面白そうなテーマだと思いませんか?
    • 個別シナリオうみルートでは、主人公の水泳のトラウマがうみによって癒されていきます。これを現代の時間軸でもやって欲しかったかと思われます。サマポケではこれまで色々なことから逃げてきたキャラたちが周囲の支えによって逃げてきたことから対峙することが主題の一つになっていたと言えます。主人公は水泳部のトラウマ、しろはは呪われた異能、うみは冷たい父子家庭生活から逃げ続けてきました。そんな人々が島での生活や交流を経て癒され少しだけ強くなり、自己の問題に逃げずに取り組むようになるのです。過去跳躍したうみはそれでもしろはと向き合うことができませんでしたが、逃げたくないと主人公に言えたことで疑似家族生活を形成できました。これがグランドルートの趣旨です。その一方で既にうみグランドがあるのに、それ以外のうみ個別ルートを用意したのですから、しろは死亡後に新たな絆を結び直す世界線があってもいいんじゃないかと思われてしまうのです。
    • 今回のリフレクションブルーでもネグレクト問題は解決されませんでしたが、まだ諦めてはいけません。おそらくサマポケも遠い未来にアニメ化するコンテンツとなるでしょう。その際タイアップでメディアミックス展開がなされ、コミック版、小説版、スマホ版、コンシュマー版が発売されるはずです。それに賭けろ。何度も正史√現代編について述べてしまっているので、「どすこい」と言われてしまうかもしれませんが、どこかで実現するといいなぁ。無理か。

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