雑録

前近代東アジア史【6】五代十国・宋王朝

1.唐末五代の変動 唐宋変革

(1)唐末五代

(2)社会変動

  • 華北 → トルコ系諸勢力がたがいに争いながらキタイに対抗
  • ②華中華南 →江南に加え、四川・福建・広東などの開発が進む。
  • ③貴族の没落 →動乱のなかで節度使ら武人勢力に追い落とされ荘園も失い経済的にも没落
  • ④新興地主の成長 →戦乱がおさまると武人勢力をおさえて新しい時代を担う。

(3)北宋の建国

  • ①建国:960年、後周の武将趙匡胤が宋を建国。
  • ②統一:979年、二代太宗の時に内治の大部分を統一。
  • ③首都:開封後唐を除く五代(後唐は洛陽)と宋が都を置く。大運河と黄河の接点であり、経済の中心となっていた江南との交通・輸送を重視。

2.宋の統治

(1)宋の中央集権化策

  • ①太祖(趙匡胤 )(位960~976)…後周の節度使出身。宋を建国。都は開封
    • 社会的背景:中国は地方勢力が割拠していた。藩鎮勢力(地方軍事政権)が乱立し、武断政治が展開。
    • 文治主義が求められる! → 軍人ではなく学識ある文人管路湯によって政治を行う!
    • 節度使に欠員が出るたびに文官をあてて兵力や財力を奪う。
      • 節度使…異民族対策として設置された地方軍事勢力。諸権利を獲得し自立化していた。
    • 皇帝の親衛軍を強化 → 禁軍
    • 科挙の整備…科挙出身の官僚が皇帝の手足として政治を担う
      • 殿試…皇帝自ら試験官となり宮中でおこなう最終試験。科挙官僚に忠誠を誓わせる。
      • 形勢戸…貴族に代わり支配階層となった新興地主勢力。このうち科挙官僚を輩出した家を官戸といい様々な特権を得た。
  • ②太宗(位976~997)
    • 各地に残っていた地方政権を平定して中国主要部の統一を進める。

(2)王安石の改革

  • ①財政難
    • a)異民族問題
      • 対遼政策……澶淵の盟 。兄弟関係を結ぶことを代償に莫大な歳賜。
      • 西夏対策…慶暦の和約。君臣関係を結ぶことを代償に莫大な歳賜。
    • b)軍制問題
      • 集権的な軍制により、防衛費 が増大。
  • ②神宗 (6代皇帝:位1067~85)×王安石(政治家・文人)
    • a)民政:農民や中小商工業者の生活安定と生産増加
    • b)国政:経費節約と歳入増加による国家財政の確立と軍事力の強化
    • c)富国策
      • 青苗法…植え付け時の貧農への金銭や穀物などの低利貸し付け
      • 均輸法…物資流通の円滑化と物価安定策
      • 市易法…中小商人への低利貸し付け
      • 募役法…力役の代わりに免疫銭を出させて希望者を雇用する方法
    • d)強兵策
      • 保甲法…民兵の訓練や治安維持のための農村組織を整備
      • 保馬法…政府の馬を貸出し、平時に耕作場、戦時には軍馬とした。
  • ③新法党と旧法党の対立

(3)南宋

  • ①靖康の変(1126~27)
    • 北宋8代皇帝徽宗が金と結んで遼を挟撃して滅ぼした際、同盟した金に対して様々な違約を行った。そのため金は南下して開封を陥落させ宋を滅ぼした。徽宗・欽宗および3000人余りが拉致された
  • 南宋の建国…靖康の変を逃れた高宗 (欽宗の弟)が淮河で金の進出をくいとめ、臨安を都とした。
  • ③対金外交政策…主戦派と和平派で対立。最終的には和平派が勝利し、屈辱的な和議を結ぶ。
    • 岳飛…宋の再建をめざし高宗に仕え淮河を境に金を凌ぐ。主戦派の中心として活動するが敗れる。
    • 秦檜…和平派の中心として活動。1142年に紹興の和議を成立。しかし、南宋が臣下の礼をとらざるをえなかったので激しく非難され、売国奴とされた。
  • 紹興の和議 (1142)
    • 南宋が金に臣下の礼をとって毎年莫大な貢ぎ物をすることで淮河を国境とし和議を結んだ。
  • 南宋の滅亡
    • 南宋淮河と長江の守りにより遊牧軍隊の攻撃をよく凌いだが、フビライ=ハンの攻撃により1276年に臨安が陥落し、1279年に残存勢力も滅んだ。

3.宋代の社会と経済

(1)江南開発

  • ①「蘇湖(江浙)熟すれば天下足る」…南宋により江南開発が進展し長江下流域が発達。
  • ②囲田…水はけの悪い低湿地において湿地帯の土地を堤防で囲み、干拓して作られた田。
  • ③占城稲 …チャンパー原産の日照りに強い早稲種。
  • ④特産品…陶磁器・茶・絹などが生産され、各地を結びつける海運・河運がめざましく発達。
    • →陶磁器の産地では景徳鎮が有名。

(2)都市の発展

  • ①商業の中心地として大都市が発展 → 蘇州
  • ②市場・繁華街が広がる経済・文化都市 → 開封・臨安
  • 海上交易が盛んとなりムスリム商人などの商船が来航 →明州(寧波)・泉州・広州
  • ④市舶司が貿易を管理!

(3)貨幣経済

  • ①銭貨…大量に発行された銅銭(アジア諸地域で使用される)および金・銀を地金のまま使用。
  • ②紙幣…送金手形が紙幣として使用されるようになる。
    • 飛銭…唐代後半から宋代の送銭手形。遠隔地取引、両税法による銭納などを背景に都から地方へ送金する際に使用された。
    • 交子…北宋で発行された世界最古の紙幣。もともとは送金手形。
    • 会子…南宋で発行された紙幣。
  • ③佃戸制…貨幣経済の進展なかで富裕者が土地を集積して地主となり、佃戸とよばれる小作農を用いて大土地経営を行った。

(4)商業・流通の発展

  • ①商業…唐末以降商業の規制が緩和され、都市のなかで商業活動が活発化。
    • ⇒草市…城壁の外や村落の道路上に散在した小規模な定期市。
    • ⇒鎮……宋代に商工業の活発化で生まれた小都市。
  • ②流通…全国から徴税し巨額の軍事支出を行う中央集権的な財政運営が物資の流通を活発化。
    • ⇒行 …商人の同業組織。営業独占や互助の目的で商人組合を結成した。
    • ⇒作…手工業者の組合。宋以後手工業者の業種別組織として広く組織された。

4.宋代の文化

(1)士大夫層の文化

  • 唐末五代の社会変動:貴族の没落 → 新興地主層の佃戸を使役した大土地経営 → 士大夫の形成
  • 士大夫…貴族にかわり官界に進出した儒学の教養を身に着けた知識層。新興地主・富裕商人出身者が多数をしめる。

(2)学問

  • 宋学(朱子学)
    • a)特徴
      • 従来の儒学:経典のなかの一つ一つの字句の解釈を重んじる =訓詁学
      • 宋学からの儒学:経典全体を哲学的に読み込んで、宇宙万物の正しい本質(理)に至ろうとする
    • b)人物
      • 周敦頤…五経のうち『易経』と『中庸』をもとに、道家思想や仏教哲学を取り入れて、道徳論を宇宙哲学から基礎づけようとした。朱子学の形成に大きな影響を与える。著書は『太極図説』。
      • 朱熹宋学を集大成した。
        • 学問方法:格物致知…物事の道理を極めて自分の知識を完成する。
        • 実践:大義名分論…君臣・父子の道徳を絶対視し、とくに臣下として守るべき節操と本文を明らかにした。
        • Cf【朱子学の批判者】:陸九淵…朱熹が知的努力の積み重ねを重視して唱える「性即理」を批判して、おのれの心を養い、天地との一体化を重んじる「心即理」を唱える。陽明学に思想が継承される。
    • c)重要経典…四書(『論語』『孟子』『大学』『中庸』)
    • d)華夷の区別…中央の中華とその周辺の蛮族である四夷(東夷・西戎・南蛮・北狄)に区別し、中華の文化的優位性を説く。宋代では北方民族の圧迫をうけたため、華夷の区別を強調した。
  • 歴史学
  • ③文学…唐末以来の古文復興の動きを受け継ぐ。8人の文章家を唐宋八大家という。
    • 唐代
      • 韓愈…古文の復興者。儒教を学び、仏教・儒教を排撃して左遷されるが召還される。
      • 柳宗元…不遇であったが、持ち前の合理主義を徹底して反抗精神に満ちた文を書いた。
    • 宋代
      • 欧陽脩…古文復興と道徳重視の歴史学の先駆者。君臣関係を明確に評価した歴史書を記す。
      • 王安石…神宗のもとで新法による政治改革を行う。文人としても有名。
      • 三蘇
        • 蘇洵…文章に優れ、制度・典故に通じる。息子の蘇軾・蘇洵らとともに「三蘇」と呼ばれる
        • 蘇軾…旧法党。北宋随一の詩文家で「赤壁の賦」が代表作。
        • 蘇轍…蘇洵の次男で蘇軾の弟。剛直な人物。
      • 曾鞏…唐宋八大家のうちのひとり。

(3)絵画

  • ①院体画
    • 概要…中国宮廷の画院( 翰林画院 )で描かれた宮廷様式の絵画。宮廷の趣味的・鑑賞的様式を備え、写実性・伝統的手法・装飾性の三つを重んじた。
    • 徽宗…靖康の変で拉致された第8代皇帝。文人としては一流で「風流天子」と称され、桃鳩図で有名である。政治には不熱心で遊興費をまかなうために重税。
  • 文人
    • 概要…士大夫や文人など非職業画家が描いた画。
    • 牧谿(もっけい)…宋末元初の画僧。天才的巨匠で、禅宗好みの道釈画をもっぱら水墨画で描き、日本の水墨画にも影響を与えた。代表作「観音猿鶴図 」。

(4)その他

  • ①工芸…白磁青磁など、高温で焼いた硬い磁器の生産が盛んになった。
  • ②庶民文化
    • a)雑劇…中国の古典演劇。北宋で歌劇として成立し、その後華北で流行して元代に元曲として完成。
    • b)詞…中国の韻文の一種。宋代では上下階層に広まり、代表する文芸ジャンルとなり宋詞と呼ばれる。
  • ③宗教
    • a)禅宗…瞑想または座禅による修行を行う仏教。宋では士大夫層に受容され、中国仏教の主流となる。
    • b)全真教 …金代に成立した道教教団の一派。王重陽が開祖。儒・仏・道の調和を唱えた。
  • ④三大発明
    • a)木版印刷 …木の板に文字を刻む。唐から始まるが科挙受験のため宋代で盛んに出版された。
    • b)羅針盤 …盤の中央に磁針を装置し、船の針路・方角をはかる磁器。
    • c)火薬 …唐末から火薬の軍事転用が始まり宋代には様々な火器が開発され実戦に利用された。