ヨーロッパ文化史 17世紀~18世紀 

1.芸術

(1)バロック式 <豪壮華麗> 「歪んだ真珠」 光と影のコントラスト・豊満な肢体の描写

(2)ロココ式 <繊細優美> 「ロカイユ(貝殻や小石を模した装飾)」 明るい色彩

  • ①建築
    • サンスーシ宮殿…フリードリヒ2世の夏の離宮。サンスーシとは仏語で「憂いがない(無憂)」
  • ②美術
    • ワトー…「雅宴画」のジャンルを確立。
    • ブーシェルイ15世の愛妾ポンパドゥールの庇護を受けた。
    • フラゴナール…牧師の押すぶらんこに乗った少女を下から貴族の青年が覗いているというロココ趣味の性の賛歌の代表作を描いた。

(3)市民社会の芸術

  • ①オランダの特徴
    • 市民社会の発展したオランダでは宮廷ではなく裕福な市民のために絵画が描かれる。
  • ②画家
    • レンブラント…明暗を巧みに用いる「光と影の画家」。代表作アムステルダム火縄銃組合の注文で製作された「夜警」。制作当時は顔が暗いなど不評であった。
    • フェルメール…蘭市民の日常生活を多数描き、屋内に差し込む光や色彩、明暗などの繊細な表現に優れる。

2.音楽

3.文学

(1)フランス古典主義

  • ★特徴:17世紀仏を中心とする形式美の文学。ギリシア・ローマを模範とし、厳格な形式上の制約の下、理性的な作品製作を追求した。
  • コルネイユ…悲劇作家。スペイン貴族が名誉・義務と愛の間で揺れ動く心模様を描いた『ル=シッド』。
  • ラシーヌ…悲劇作家。理性と情念の狭間で身を滅ぼす人間の悲劇。ルイ14世に仕える。『アンドロマック』、『フェードル』など。
  • モリエール…喜劇作家。宗教家の偽善・正義漢の独善性など鋭い性格描写をおこなう。ルイ14世の庇護。『人間嫌い』、『守銭奴』。

(2)ピューリタン文学

  • ミルトン…『失楽園』。『旧約聖書』に題材を取り、堕天使サタンの誘惑に負けたアダムとイヴが楽園追放に処された際、荒野に神の救いを見出す様を描き、神の恩寵と摂理を説く。
  • バンヤン…『天路歴程』。2部構成で1部では主人公が、2部では残された妻が、天空の都を目指す。ピューリタン信仰を表現した寓意物語。

(3)イギリス18世紀の小説

  • デフォー…『ロビンソン=クルーソー』。船乗りのロビンソンが無人の孤島に漂着し、自ら耕し生活物資を作り出して神の恵みを確信しつつ28年間を生き抜いていく様を描いた作品。
  • スウィフト…『ガリヴァー旅行記』。船医ガリヴァーが漂着した未知の島での体験を叙述する見聞記の体裁を取り、人間そっくりで品性下劣な動物「ヤフー」が登場するなど社会や政治を辛辣に諷刺した。
    • →イギリス政府・ヨーロッパ人の残忍性や科学・人間理性を批判。

4.哲学

(1)イギリス経験論

  • ①概要
    • イギリスを中心に展開した認識論哲学。認識や知識は経験からのみ得られるとし、先天的にそなわる先有観念を否定した。
  • ②人物
    • フランシス=ベーコン…実験と観察を重視。個々の事例から共通事項を見出して普遍的法則に到達する帰納法を提唱。

(2)大陸合理論

  • ①概要
    • 17世紀フランスを中心に大陸で展開した認識論哲学。先天的な理性を重視し、理性で認識できるもののみを真実として論理的に世界を把握しようとした。
  • ②人物
    • デカルト…理性を重視し、普遍的法則から個々の事例を説明する演繹法を唱える。
      • Cf.「われ思う、ゆえにわれあり」…全ての存在を疑った結果、疑うという行為をする「自分」の存在の確実性に行き着き、自己の理性を起点とする。

(3)ドイツ観念論

  • ①概要
    • イギリス経験論と大陸合理論を統合。
  • ②人物
    • カント
      • a.認識のコペルニクス的転回(認識をするための経験のカテゴリが、理性によって備わっている)。
        • カント以前は「認識」は「対象」に従うと考えられていた。例えば「赤いチューリップ」という「対象」があり、それを「認識」すると考えられていた。しかしカントは「対象」を見た後に、これまでの経験カテゴリから「赤い」・「チューリップ」という概念を引き出し「赤いチューリップ」だと認識するとした。
      • b.批判哲学(純粋理性批判実践理性批判判断力批判

5.思想

(1)王権神授説

  • ①王・皇帝の権威は神に由来する神聖不可侵なもので、臣民は絶対服従の義務を持つとする思想。
  • 絶対王政を正当化する思想として、国王を国内における政治・宗教両面の最高権力者として位置づけた。

(2)自然法思想

  • ①概要
    • 時間や場所をこえて、人類に普遍的に妥当する永久的な法。ここでいう「自然」とは「人為」に対して、人間の生まれながらの自然な本性に基づくという意味。
  • ②人物
    • グロティウス…人間の本性に由来する人類普遍の原理として自然法を説き、自然法を法体系の最上位に置いた。『戦争と平和の法』、『海洋自由論』。

(3)社会契約説

  • ☆国家は個人相互の契約に基づいて成立するという考え方。個人は生まれながらにして生命・自由・平等・財産所有の自然権を持ち、その権利保障のために人民の合意のもとに社会契約を結び、国家を樹立するという理論。
  • ホッブズ 『リヴァイアサン
    • a.自然状態
      • 人間は自己の生命を維持する自己保存のために、あらゆることをなし得る自由を持つ。
      • 万人の万人に対する戦い…自然状態では各自が無制限に自己保存を追求するために「万人の万人に対する戦い」という暴力的な闘争状態が生じる。
    • b.社会契約
      • 理性に基づいて無制限な自由を放棄し、相互の合意のもとに権力を国家に譲渡し、国家によって平和と安全を維持する。
    • c.歴史的意義
      • 国家権力の起源を個人の契約に求めた点で民主主義的であったが、当時の絶対王政を擁護することになったため、議会派から批判された。
  • ②ロック 『統治論(市民政府二論)』『人間知性論』『寛容についての書簡』
    • a.自然状態
      • 自然法のもとに自由・平等で平和な状態が保たれている。
      • 紛争が起こった場合に調停する公的機関がないため、戦争発生の危機を孕んでいる。
    • b.社会契約
      • 人民は社会契約を結んで権力を国家に信託し、国家によって権利の保障をはかる。
      • 抵抗権(革命権)…もし国家が権力を濫用する場合は、人民は信託した権力を自らの手に取り戻し、国家に抵抗する権利を持つ。
    • c.歴史的意義
  • ③ルソー 『人間不平等起源論』『社会契約論』
    • a.自然状態
      • 自然状態で人間は自己愛と他者へのあわれみに基づき自由で平和に暮らしていた。
      • 文明と共に私有財産の観念が生じ、富の不平等を法律により正当化したため、不正で悲惨な政治体制が生じた。
    • b.社会契約
      • 一般意志…公共の利益を求める普遍的な意志。この一般意志の指導のもとに、自己の権利を共同体に全面的に譲渡し社会契約を結ぶ。そして共同体の力で個人の権利を保障する。
      • 市民的自由>自然的自由…人民は公共の利益を目指す一般意志のもとで社会を形成し、自然的自由を放棄して自らが制定した法に従うことによって社会の構成員としての権利を保障され、市民的自由を獲得する。
    • c.歴史的意義
      • フランス革命を思想的に準備する役割を果たす。
      • 議院内閣制を批判 →議院内閣制は個人の利益を求める特殊意志が、多数決によって少数者の意見を抑圧する全体意志に基づく。

(4)啓蒙思想

  • ☆理性を絶対視し、理性という光で従来の慣習・制度・社会の問題点を批判・否定し、あらたな合理思想を展開する懐疑的態度のこと。
  • モンテスキュー…『法の精神』で三権分立を唱える。
  • ヴォルテール…『哲学書簡』で英の制度・文物を賛美することで仏を批判し焚書される。普のフリードリヒ2世に招かれサンスーシ宮殿で過ごし、露のエカチェリーナ2世と文通して影響を与える。
  • ディドロ…『百科全書』編纂の中心。発禁されながらも秘密裏に印刷し完成させる。
  • ダランベールディドロに誘われ『百科全書』編纂に携わった数学者。序文と数学項目を執筆。

6.経済学

(1)重商主義

  • 16~18世紀、絶対王政下の西欧を中心に展開された経済政策。国富増加による財政基盤の強化を目的に、国家による経済統制が行われた。貴金属の獲得を目指す重金主義と輸出を増やしてと輸入を減らそうとする貿易差額主義がある。

(2)重農主義

  • ①概要…18世紀フランス。農業こそ富を生み出す源泉とみなした経済思想。国の経済活動への干渉を否定し「なすに任せよ(レッセ=フェール)」を主張し、自由主義的経済を富蓄積の手段として重んじた。
  • ②人物
    • ケネー…『経済表』。地主・生産者(農民)・非生産者(商工業者)における生産物や富の流通を考察、初めて経済を科学的に捉えた。
    • テュルゴールイ16世の財務総監。ギルド廃止・穀物取引の自由・地租徴収など自由主義的政策や新課税を実施したが、特権身分の激しい反発で辞任に追い込まれた。

(3)古典派経済学

  • アダム=スミス(『諸国民の富』)による自由主義経済学。国家への経済活動への介入を排除し、自由な経済活動を重視し、自由放任主義が個人や国の富を増やし市場を調和させるとした。

7.科学

  • ☆合理的な思考により科学が発展。自然科学が学問として確立(科学革命)。
  • ①ボイル…………気体力学の基礎を確立。気体の圧力と体積の関係を解明したボイルの法則。
  • ニュートン……近代物理学の創始者万有引力微積分法・光の性質など。著『プリンキピア』。
  • ③ラヴォワジエ…質量保存の法則。フランス革命中、元徴税請負人だったことによりジャコバン政権により処刑。
  • ラプラース……宇宙進化論。太陽系の成立過程を理論化。惑星の運動と万有引力の法則を結びつける。
  • ⑤ハーヴェー……血液循環説。ジェームズ1世・チャールズ1世の侍医。
  • ⑥リンネ…………博物学が流行し植物園が生まれ、リンネは植物分類法の体系化に大きな業績を残す。
  • ⑦ジェンナー……天然痘の発症を予防する種痘法を理論化し、免疫学の基礎を築く。