文献サーベイ。回顧と展望に掲載された海事関連論文のまとめ。
「2020年の歴史学会-回顧と展望-」『史学雑誌』130編第5号(2021.5)
「2019年の歴史学会-回顧と展望-」『史学雑誌』129編第5号(2020.5)
- 浅井隆宏「ロンドン海軍軍縮条約における補助艦保有比率に関する政友会内田信也の質疑」(『軍事史学』五五-二)
- 議会で比率問題を専門的観点から追求する内田に、政府は十分に応答できなかったことを示す
- 梶尾良太「戦時体制下における日本の海運業と統制」(『北大史学』五九)
- 戦時輸送体制構築における、国家と企業の打算と協力を描いた
- 木村聡「ワシントン海軍軍縮後の連合艦隊」(『史学雑誌』一二八-八)
- 連合艦隊および同司令長官の権限が増していく過程を制度と組織の変革から描く
- 同「ワシントン軍縮後の海軍大演習」(『軍事史学』五五-一)
- 海軍大演習の広報としての活用を論じる
- 同「美保関事件と日本海軍」(『日本歴史』八五〇)
- 美保関事件をきっかけとして、大衆の中に連合艦隊が定着したことを指摘
- 沢井実『海軍技術者の戦後史』(名大出版会)
- 戦前海軍技術者の、戦後復興・高度経済成長期、さらに防衛生産、国防との関係を考察した
- 奈倉文二「ジーメンス事件の再検討」(『国際武器移転史』七)
- 裁判史料を検討
「2018年の歴史学会-回顧と展望-」『史学雑誌』128編第5号(2019.5)
- 「新年特集 自治体史を使いこなす」(『日本歴史』八三六)
- 大島久幸「戦前期における三菱商事の海運業務」(『三菱史料館論集』一九)
- 神谷大介『幕末の海軍』(吉川弘文館)
- 木村美幸「昭和戦前期における海軍協会の宣伝活動と海軍志願兵徴募」(『ヒストリア』二六七)
- 昭和戦前期の海軍協会地方部の活動を検討する
- 坂野徹「帝国を船がゆく」(坂野・塚原東吾編『帝国日本の科学思想史』勁草書房)
- 南洋群島での担い手の異なる複数の学術調査報告を分析。調査を可能とした船舶航路と帝国内の人の移動に注目し、後年の調査が対象としたのは植民地化が進む現地社会だったと結論づけた
- 坂本卓也「幕末維新期における蒸気船運用」(『明治維新史研究』一五)
- 海軍・船舶関係、特にその運用のための各種インフラに焦点をあてた研究も充実した
- 西尾隆志「一九三〇年代におけるドイツからに日本の航空技術移転」(『国際武器移転史』六)
「2017年の歴史学会-回顧と展望-」『史学雑誌』127編第5号(2018.5)
- 一ノ瀬俊也『飛行機の戦争 一九一四-一九四五』(講談社)
- 軍事航空の発達と国民への航空軍備思想の宣伝を跡付ける
- 大分県立先哲史料館編『堀悌吉資料集』三(同県教委)
- 小倉徳彦「日露戦後の海軍による招待行事」(『日本歴史』八二七)
- 巨額の建艦予算を必要とする海軍が議員や国民に対する広報活動に着目し、その結果恒例観艦式が誕生したと論じる。
- 金澤裕之「元治・慶応期の幕府海軍と幕長戦争」(『防衛学研究』五六)
- 共に陸戦に偏重する先行研究を批判し、前者が厳島を基点に戦争中の様相を解明し、後者が幕府海軍の景況を明らかにした
- 上白石実「漂流民救助と送還の近代化」(荒野泰典編『近世日本の国際関係と言説』渓水社)
- 海難救助における費用負担の変遷に注目する
- 義根益美「幕末期開眼防備対策からみる明石藩の特質」(『神女大史学』三三)
- 海防関係として挙げられる。
- 木村美幸「大正期における日本海軍の恒例観艦式」
- 恒例観艦式の廃止経過が詳しい
- 小磯隆広「中国問題をめぐる日本海軍の対英観」(『ヒストリア』二六一)
- 海軍内の対英強硬論と蔣介石政権に対するそれとの連動を指摘する
- 関口哲矢「陸海軍省の改組と復員業務」(『史潮』新八一)
- 軍事色の濃い復員業務が文官に勤まるのかという懸念から、復員庁への軍人の参画が主張されたとする
- 同「戦後における復員庁の改組過程」(『史学雑誌』一二六-三)
- 業務の必要性から復員担当の組織が変わる
- 山田裕輝「幕末期萩藩の海軍建設とその担い手」(『年報近現代史研究』九)
- 藩政とその担い手に着目しつつ萩藩海軍の建設過程を論じた