史学雑誌「回顧と展望」(2018-2020)における海事・海軍・軍港都市に関する文献のまとめ

※掲載順

『史学雑誌』127編第5号(2018.5)

  • 山田裕輝「幕末期萩藩の海軍建設とその担い手」(『年報近現代史研究』九)
    • 藩政とその担い手に着目しつつ萩藩海軍の建設過程を論じた

  • 三宅紹宣「幕長戦争と厳島」(『厳島研究』一三)
  • 金澤裕之「元治・慶応期の幕府海軍と幕長戦争」(『防衛学研究』五六)
    • 共に陸戦に偏重する先行研究を批判し、前者が厳島を基点に戦争中の様相を解明し、後者が幕府海軍の景況を明らかにした

  • 上白石実「漂流民救助と送還の近代化」(荒野泰典編『近世日本の国際関係と言説』渓水社)
    • 海難救助における費用負担の変遷に注目する

  • 義根益美「幕末期開眼防備対策からみる明石藩の特質」(『神女大史学』三三)
    • 海防関係として挙げられる。

  • 小倉徳彦「日露戦後の海軍による招待行事」(『日本歴史』八二七)
    • 巨額の建艦予算を必要とする海軍が議員や国民に対する広報活動に着目し、その結果恒例観艦式が誕生したと論じる。

  • 木村美幸「大正期における日本海軍の恒例観艦式」
    • 恒例観艦式の廃止経過が詳しい

  • 笠原十九司日中戦争全史』上、下
  • 手嶋泰伸日中戦争の拡大と海軍」(『年報日本現代史』二二)
    • 前者が日中戦争の拡大における海軍の主導性を重視するのに対し、後者は海軍軍人の官僚的な思考・行動様式に起因するものとして否定的な見解を示す

  • 小磯隆広「中国問題をめぐる日本海軍の対英観」(『ヒストリア』二六一)
    • 海軍内の対英強硬論と蔣介石政権に対するそれとの連動を指摘する

  • 一ノ瀬俊也『飛行機の戦争 一九一四-一九四五』(講談社)
    • 軍事航空の発達と国民への航空軍備思想の宣伝を跡付ける

  • 関口哲矢「陸海軍省の改組と復員業務」(『史潮』新八一)
    • 軍事色の濃い復員業務が文官に勤まるのかという懸念から、復員庁への軍人の参画が主張されたとする
  • 同「戦後における復員庁の改組過程」(『史学雑誌』一二六-三)
    • 業務の必要性から復員担当の組織が変わる

  • 小谷賢「第二次ロンドン海軍軍縮会議予備交渉の過程」(『国際武器移転史』三)
    • 対立する日米と板挟みとなる英国という第二次ロンドン海軍軍縮会議の構図を提示する

  • 山縣大樹「占領期における第二復員省職員の政治的動向と役割」(『軍事史学』二〇八)
    • 公職に留まった旧海軍軍人は公職追放の形骸化で再軍備活動が可能になったとする

  • 畑野勇「海上自衛隊の創設における旧海軍軍人の動向と対外認識」(『近代日本の対外認識Ⅱ』)
    • 日米関係者の構想が絡む海上自衛隊創設のプロセスを描く

『史学雑誌』128編第5号(2019.5)

  • 神谷大介『幕末の海軍』(吉川弘文館)
  • 坂本卓也「幕末維新期における蒸気船運用」(『明治維新史研究』一五)
    • 海軍・船舶関係、特にその運用のための各種インフラに焦点をあてた研究も充実した

  • 諸橋英一「第一次世界大戦と海運統制政策」(『軍事史学』五四-一)
    • 戦時船舶管理令の制定過程、運用とその国際的背景を検討し、逓信省による海運統制に対する軍部の見解を明らかにする

  • 木村美幸「昭和戦前期における海軍協会の宣伝活動と海軍志願兵徴募」(『ヒストリア』二六七)
    • 昭和戦前期の海軍協会地方部の活動を検討する

  • 山縣大樹「戦後海上自衛力再建と旧日本海軍グループ」(『軍事史学』二一四)
    • 野村吉三郎や第二復員局幹部と米海軍との関係を中心に「空海軍」構想の推移を追う

  • 千田武志『呉海軍工廠の形成』(錦正社)
    • 武器移転論に留意しつつ、形成期の呉海軍工廠について実証的かつ総合的に検討した大著

  • 水上たかね「台湾出兵と三菱」(『三菱史料館論集』一九)
    • 台湾出兵時における三菱の「蕃地海運御用」の実態を示した

  • 小野寺香月「戦間期三菱神戸造船所における多角化と経営合理化」(『三菱史料館論集』一九)
  • 西尾隆志「一九三〇年代におけるドイツからに日本の航空技術移転」(『国際武器移転史』六)

  • 大島久幸「戦前期における三菱商事の海運業務」(『三菱史料館論集』一九)

  • 「新年特集 自治体史を使いこなす」(『日本歴史』八三六)
    • 自治体史編纂を振り返る」「自治体史編纂の現場から」「自治体史を利用する立場から」という三つの部を通じて自治体史編纂の様子とその歴史教育においての実用性や意義などについて大きく取り上げている

  • 坂野徹「帝国を船がゆく」(坂野・塚原東吾編『帝国日本の科学思想史』勁草書房)
    • 南洋群島での担い手の異なる複数の学術調査報告を分析。調査を可能とした船舶航路と帝国内の人の移動に注目し、後年の調査が対象としたのは植民地化が進む現地社会だったと結論づけた

『史学雑誌』129編第5号(2020.5)

  • 奈倉文二「ジーメンス事件の再検討」(『国際武器移転史』七)
    • 裁判史料を検討

  • 石原俊『硫黄島』(中央公論社)
    • 硫黄列島の南洋植民地としての発展、そした太平洋戦争末期の前線基地への変貌を島民の声を巧みに交え、描き出す。

  • 木村聡「ワシントン海軍軍縮後の連合艦隊」(『史学雑誌』一二八-八)
    • 連合艦隊および同司令長官の権限が増していく過程を制度と組織の変革から描く
  • 同「ワシントン軍縮後の海軍大演習」(『軍事史学』五五-一)
    • 海軍大演習の広報としての活用を論じる
  • 同「美保関事件と日本海軍」(『日本歴史』八五〇)
    • 美保関事件をきっかけとして、大衆の中に連合艦隊が定着したことを指摘

  • 木村美幸「海軍と在郷軍人会」(『史学雑誌』一二八-一一)
    • 海軍が在郷軍人会に加入するに至った背景・過程と在郷軍人会での活動を制度に着目して考察する

  • 岩村研太郎「陸軍主管の軍事海運制度の形成」(『軍事史学』二一六)
    • 戦時期の物資輸送を確保するうえで国策としての統制のあり方に論及した

  • 梶尾良太「戦時体制下における日本の海運業と統制」(『北大史学』五九)
    • 戦時輸送体制構築における、国家と企業の打算と協力を描いた

  • 沢井実『海軍技術者の戦後史』(名大出版会)
    • 戦前海軍技術者の、戦後復興・高度経済成長期、さらに防衛生産、国防との関係を考察した

  • 大豆生田稔編『港町浦賀の幕末・近代』(清文堂出版)
    • 横須賀港との対比や、取引枠組み変容の影響など流通における移行を捉え、他に海防や地域の歴史の継承を扱う論文を収録する