倫理 日本思想【2】日本人と仏教

1.日本人と仏教

  • 仏教:外来思想として移入され、日本独自の展開をする → 仏教と葬送儀礼との結びつき
  • 仏教伝来 6世紀頃   語呂:仏教伝来 ゴミ屋は午後に
  • 蕃(あだしくにの)神(かみ)…外国から渡来した神。金色の仏像や、荘厳な仏具・経典→新たな神の威力
  • 仏教に対する在来の神の祟り (cf. 物部守屋vs蘇我馬子)

2.仏教と聖徳太子

  • 聖徳太子…仏教をはじめて本格的に理解
    • 憲法十七条→和を重んじる姿勢が一貫 → 根底には仏教的な人間観
      • 人間=凡夫(欲望にとらわれた無知の存在)→誰もが完全無欠ではないので、独断によらず議論にかける
      • 万人のよりどころは、三宝(仏・法・僧)のみ
    • 三経義疏』…『法華経』、『勝鬘経』、『維摩経』。世俗生活の中で仏教の真理が実現できることを強調。
    • 世間虚仮、唯仏是真…世の中は空しく仮のものであり、ただ仏だけが真実である。現世への執着を否定し、仏の真理に立って生きることを説く。

3.神仏習合

  • 奈良時代
    • 神仏習合…日本固有の神信仰と仏教信仰が融合。神社に神宮寺が建立され神前読経が行われる。一方、寺には鎮守の神が祀られる。
  • 平安時代
    • 本地垂迹説…仏が本地(心理の根源)で、神は民衆を教化するため垂迹(カタチとなって現れること)したとする思想。神は仏が「権(かり)に」現れたものとする権現思想が広まる。ちなみに神が本体で仏が権のものだとするのが反本地垂迹説である。
  • 鎌倉時代
    • 神道…神信仰を仏教から自立させる。伊勢神道は反本地垂迹説の立場から神主仏従をとり、正直(偽りのない素直な清らかな心)の徳を説いた。
  • cf.明治時代
    • 神仏分離…明治政府による神道の国教化のため、神道と仏教を分離して、日本古来の神と伝来した仏とを同一視する神仏習合の習慣を禁じる。

4.鎮護国家…仏教の力によって国家の安泰をはかる。

  • 聖武天皇
    • 諸国に国分寺を建立して、官僧が護国・滅罪の経を読誦。
    • 各種教学の研究…南都六宗(☆三時のホットケーキくしゃくしゃになりにけり→三論・法相・華厳・倶舎・成実・律)
    • 行基…公共事業と貧民救済により民衆受けする。私度僧集団を率いたため弾圧されるが、聖武天皇の尊崇を受け、東大寺大仏の建立に参加。

5.一切衆生の成仏[最澄]

6.即身成仏[空海]

  • 空海の業績…高野山 金剛峰寺 真言宗
    • 密教の重視
    • 即身成仏…この身がそのまま仏になること。三密の行によって肉体そのものが大日如来と同化し、宇宙に偏在する仏の清らかな命を力強く生きることができる。
    • 三密の行…①手に印契を結び、②口に真言(マントラ)を唱え、③心を仏に集中させる→仏のパワーが伝わり、人は受け止める(加地)→超能力スキルゲット。

7.末法思想と浄土信仰

  • 平安中期~
    • 末法思想…現世における仏の救済の可能性を否定する仏教の歴史観平安時代中期以降、戦乱や天災が相次ぎ、人々は無常に浸り末法思想が広まり、浄土信仰が求められた。
    • 浄土信仰…悟りを完成した仏の国土である浄土を求め、現世を超越し往生を目指す信仰。
  • 源信『往生要集』
    • 厭離穢土・欣求浄土…欲望や苦悩に満つ現世を捨て、浄土に生まれることを求む。
    • 観想念仏…心に阿弥陀仏や極楽浄土を思い描く。
    • 口称(称名)念仏…口に「南無阿弥陀仏」と唱える(※「南無」は梵語で「私は帰依します」)。
  • 空也
    • 平安時代中期の僧。諸国を遊行して念仏の功徳を庶民層に布教。道路を通し、橋を架け、寺や堂を修繕し、野原の死骸を火葬した。京都では乞食をしながら病人の世話をしたので「市聖」とよばれる。
    • 踊念仏…鉦を鳴らし瓢箪をたたき、念仏を称え踊って死霊の鎮魂をする→鎌倉新仏教の一遍も踊念仏を取り入れる。

8.阿弥陀仏への信仰

  • 阿弥陀仏ってどんなホトケ?
    • かつては法蔵という菩薩。一斉衆生を救おうと願い、成就しない間は仏にならないと誓う。ついには誓願を成就して仏となる。現在は西方極楽世界で衆生を救う。
  • 旧来の天台宗の枠を超えた独自の教え→鎌倉新仏教
    • 法然の思想 浄土宗
      • 源信の『往生要集』に影響され、念仏に惹かれる→『選択本願念仏集
      • 末法の世に生まれ、素質・能力に劣る→自力の修行によって悟りを得ようとする教え(聖道門)は困難→阿弥陀仏の働きである他力を信じ、浄土に生まれ、後生に悟りを得る教え(浄土門)に頼る→浄土に往生するための手立てとして、他の修行方法を捨てて、もっぱら念仏を修する→専修念仏!!
    • 一遍の思想…法然の教えに影響され、踊念仏を広げる。[⑤ 時宗 ]の開祖。
      • 教化のため諸国を遊行したので遊行上人、生活の束縛を捨てたので捨聖とよばれる。

9.絶対他力の信仰

  • 親鸞浄土真宗の開祖
    • 比叡山で修行→どれだけ自力を尽くしても、この人生のあいだに悟りをえることはできない→悪人正機
    • 親鸞が考える阿弥陀仏のイメージ
      • 阿弥陀仏は、悪人を助けようとする請願(本願)を立てる
      • 阿弥陀仏の意図は「どんなに善をなそうとしてもなし得ないと知り、根深い煩悩を嘆きつつ、阿弥陀仏のはたらき(他力)をたのむヒト(悪人)の救済
    • 「善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」(唯円歎異抄』より)
      • → 悪人こそ往生の条件をもっとも適切に備えているのであり、自力で善をなし得ると思い修行に励むヒト(善人)以上に悪人の往生は疑いない。
    • 自然法爾…往生を実現する阿弥陀仏による他力のはたらき
      • →信も念仏も自力ではなく、自力を捨て自己を阿弥陀仏にゆだねると、阿弥陀仏のはたらきがあらわれて、信や念仏となる

   

10.坐禅における救済

  • 道元末法思想や他力の信仰を批判し、自力救済を追究する。
    • 坐禅…端坐して心を統一し、対象を観ずる修行。
  • 道元の基本的な考え
    • 人は本来、悟りを備えているので、末法思想は人民教化の仮の手段にすぎず、自己をみかぎりひたすら後生に期待するのは誤り→悟りは修行せねばならない→悟りを体得するには!? →「坐禅
  • 坐禅とは修行であり悟りの体得でもある
    • 只管打坐…修行とは、ひたすら坐禅すること
    • 身心脱落…身も心もつくして坐りぬく時、欲望など一切の束縛から解放されて、心身が自在の境地に達すること。すると目前の世界がそのまま悟りの世界となる。
    • 修証一等…坐禅の「修」行と悟りの体得である「証」が不二一体であること。道元は仏教の神髄(正法眼蔵)は修証にあると信じる。

11.法華経への信仰

  • 日蓮…『法華経』の新たな解釈により日蓮宗の開祖となる
    • 法華経の重視
      • 末法の世に依るべき唯一の経典で、釈迦の究極の教えであり、題目には釈迦の備える功徳の全体が込められている
    • 唱題(「南無妙法蓮華経」と唱えること)すれば、だれでも仏になれるよ!!
    • 立正安国論』…『法華経』が興隆すれば、災いが払われ国土の安穏が実現するよ!!
    • 四箇格言(念仏無間、禅天魔、真言亡国、律国賊)で他宗を排撃し為政者に改心を迫る。→弾圧や迫害などの苦難が日蓮を「法華経の行者」としての自覚を深め、みずからを菩薩となぞらえ、現実社会を万人が救済される仏国土としようとした。

12.その他の教え