雑録

倫理 日本思想【9】「反省の思想と新たな模索」

1.近代日本の思想傾向への反省

  • 昭和初期;明治以降の思想のありかたをめぐって反省がなされる

1-1.常民の思想

(1)柳田国男…常民の日常生活に光をあて、民俗学を創始。
  • 文字資料を偏重する従来の歴史学の方法に疑問
  • 記録に残らないふつうの人々の生活にこめられた人生の知恵を探る。
  • 常民…村落共同体に生活を営む、ごく普通の人々
  • 習俗(文字以外の形をもって伝わっている材料)を資料として読み解く
  • 人々が「何を信じ何を怖れ何を愛し何を願っていたか」を習俗の中からくみあげる
(2)折口信夫民俗学を国文学に導入 信仰と文芸の関係
  • まれびと…折口信夫が考える日本の神の原型。地域共同体の外部の存在。
    • まれびとは常世の国(海のかなたにある理想郷)に住み、ときを定めて村落を訪れて安穏や豊穣を授ける。
    • 人々はまれびとを持てなし、まれびとは呪的に人々を祝福 →この交流が文芸の源
(3)新国学
(4)南方熊楠
  • 和歌山県の山林で菌類・粘菌類の採集調査のかたわら民俗学の研究。
  • 神社合祀令反対運動…1906年に全国の神社を一町村一社に整理する法令が出されたが、古い社や境内の森林が破壊されることに反対した。自然保護運動の先駆けとされる。
(5)柳宗悦…無名の職人が作る実用品に独特の美を見いだす。
  • 民芸…従来、下手物として美の対象として扱われなかった民衆の日用品の品々に固有のすぐれた美を発見した概念。

1-2.あらゆるものの幸福【宮沢賢治】…科学的知識と仏教思想に彩られた独特の詩や童話

  • 「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」
    • 世界の幸福が同時にその中の個々の幸福である。
  • 理想的世界(イーハトーブ)
    • どんな小さな生きものも差別されず、宇宙の大きなはたらきと一体化して、みずからの生命を全うすることのできる世界。

2.現代の日本と日本人としての自覚

2-1.新たな価値観の模索

  • 崩壊感覚…敗戦による既成の権威や価値観の崩壊の中で、自我が崩れ去っていく感覚。
  • 新たな秩序の模索
    • 坂口安吾…『堕落論』。「堕ちる道を堕ちきる」ことによる偽り飾ることのない自己に根差した道徳の回復を唱える。
    • 丸山真男 ]…『日本の思想』。根の浅い近代化の限界を指摘し、自由な主体的意識にめざめた個の確立が急務であると説く。

2-1.現代日本の課題

  • 日本国憲法国民主権基本的人権の尊重・平和主義
  • 経済発展…朝鮮戦争の軍事特需により経済復活→環境破壊・大都市と地方の格差etc…
  • 情報化、グローバル化 → 人々の生活やものの考え方に大きな変革を迫る
  • はげしく変化する状況のなかで、主体的な自己の在り方を打ち立てる

2-3.主体性の確立

  • 小林秀雄
    • 思想や理論を流行の意匠(趣向)としてもてあそぶことを批判(思想や理論をファッションのように表面的に着飾ろうとすることへの批判)。主体的な自己にめざめることはできない
    • 芸術家の直観がとらえた生の直接的な手ごたえを、哲学的思索によってつかむことを試み、批評という思想スタイルを確立。

extra.超越的存在をめぐる思考…東西の「神」

  • 中国における超越者
    • 天観念…古代中国における超越的存在。人の生活は天体の運行や気象に影響→天を神聖視して祀る。セカイを天地・万物ととらえる立場から、神つまり超越者を考えようとする発想
  • 日本における神 「八百万の神
    • 並ひととおりではない強いはたらきをもつもの、畏るべきものは何でも「神」
    • 草木、岩石、鳥獣虫魚、異常な能力を持つ人、年経て精魂宿った器物(九十九神)も「神」
    • 日本人は神と正しくかかわることによって安穏に暮らそうと願う