ゴールデンカムイ樺太編(2)「許してやりなさい。頑張ってるじゃないですか。そんなにボロボロになるまで」の感想・レビュー

杉元が無意識に内包する「役立たず」であるという自罰意識を岩息が救済する話。
暴力による自己表現を尊ぶ岩息だからこそ暴力でしか自罰意識を表現できない杉元を救える。
氷が割れて冷水に落ちバーサク状態から解除されるオチとなるが杉元は確かに救われたのだ。
殴り合うことでお互いを理解した先遣隊は、岩息殺害をやめ刺青の写しを入手する方針へ。
むくつけき男たちがロシア式蒸し風呂で語り合う描写が今回の見どころである!

杉元は自らが役立たずであったという無意識下の自罰に苦しみ続けてきた

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  • 合理的と評される杉元が、合理的な説得で非合理を通すが、全然合理的じゃなかった
    • スチェンカなどせず岩息を殺して刺青を剥ぎ取ろうとする樺太先遣隊。しかしその中で唯一杉元が否を唱えます。一行から「もっと合理的な男だと思った」と評される杉元ですが、その人物評通りに(一見すると)筋道が通っている論法で周囲を納得させ、スチェンカに出ます。杉元を信頼してスチェンカに臨んだ先遣隊ですが、早々に杉元はバーサーカー状態へ。見境なく誰でも殴り始め、終いには鎌と金槌を振り回し始めます(ソ連パロ)。思わず逃げ出す岩息とそれを追跡する先遣隊。その途中野生動物グズリに襲われ、ロシア式蒸し風呂に逃げ込むことになります。一歩外に出れば襲撃される危機的状況の中で全裸になり蒸し風呂を楽しむ男たちの姿をお楽しみください。

 

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  • 岩息のコブシが、自らの無能っぷりに怒り狂う杉元を救う!
    • 一方でチカパシとエノノカは盗まれた犬を奪取することに成功します。しかし二人は野生動物グズリの次のターゲットにされてしまうのです。バーサーカー状態の杉元のお陰で難を逃れた二人のもとへ谷垣が駆け付け、チカパシを支えて銃を放ちグズリ討伐に成功。これがチカパシ独立編の大きな伏線となります。
    • そしてバーサーカー編は最終局面へ。岩息と杉元の殴り合いが展開され、暴力を通して他者を理解する岩息は何故そんなにも杉元が怒り狂うのかをコブシで尋ねます。この問いに対し、無意識状態の杉元は、如何に自分が無能であったかを想起するのです。惚れた女を寝取られてしまったこと、寝取った男も日露戦争で死んでしまったこと、戦争で人を殺しすぎて惚れた女に対峙できなかったこと、アシㇼパさんを助けられなかったこと、無残にもウイルクを殺させてしまったこと等々の悔恨が消えては浮かび、浮かんではまた消えていくのでした。そんな杉元に対して岩息が救済の言葉を投げかけるのです。今回最大の見どころ的クライマックス!「許してやりなさい。頑張ってるじゃないですか。そんなにボロボロになるまで」。
    • オチとしては氷が割れて冷水を浴び杉元のバーサクが解除されたよエンド。岩息と認め合った樺太先遣隊は、岩息を殺さず刺青の写しを手に入れ、大陸へ落ち延びる様に助言して和解するのでした。岩息が放った救済の言葉は、意識下の杉元には届かなかったかもしれません。しかしながら確かに杉元の贖罪は達成されたのでした。

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