アインシュタインより愛を込めて「有村ロミ」シナリオ(個別→GRAND)の感想・レビュー

「世界の真理」へと至る道を捨て「日常への回帰」を選ぶ話。
主人公は有村ロミを救うために自らの肉体を犠牲にし魂だけの思念体となる。
そこで真理への到達という欲望に惹かれるが魂魄を二分化することで対処する。
愛を知る魂Aは父が残したロボットに憑依しロミと共に闇堕ちした魂Bに打ち克つ。
星の記憶を司る鯨は地球から離れ、主人公の魂Aも復元された肉体に戻る。
終局部は全知のAIが襲い掛かってきて戦闘になるのだが……尻切れトンボで終わる。
父の魂の残滓が残るロボット対AIの巫女の戦いは描かれず突如EDムービーが流れ出す。
エピローグは答えの出ない問いに囚われながらも日常を生き続ける強さが示され幕を閉じる。
終局部ちょっと雑すぎじゃね?と思ったのは私だけではないはず。

【目次】

星の記憶とアカシックレコード

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  • 滅んでしまった惑星の文明の継承
    • この作品の設定として星の記憶があります。それは地球ではなく、もう既に滅亡してしまった惑星の記憶です。その惑星は地球よりも遥か先に進んでおり高度な文明を築き上げていたのですが、もう少しで世界の真理に到達できるという所で滅んでしまいます(その一端には感情を有したAIが原因にあるそうですが詳述はされません)。文明の崩壊を惜しんだ惑星はせめて情報だけでも残したいと宇宙に向かって射出したのでした。その星の記憶は自らを受容できる別の星を探して漂流を続け、ついに地球をターゲットに決めます。彗星として地球に落ち鯨のカタチをメタファーとし、最適の適合者を探し続けていたのです。それに選ばれたのが主人公であり、星の記憶すなわちアカシックレコードに接続できる鍵が与えられます。これが個別ルートで出て来ていた鯨の鍵というものです。有村ロミ√ではこの文明の遺産を巡る攻防戦が繰り広げられることとなります。

 

有村ロミとその母親

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  • 母子家庭における母親からの虐待
    • 有村ロミは家庭環境に恵まれない少女でした。幼少期の本名は比村茜であり、有村ロミは改名後の名前です。ロミの父方の一族は優秀な人材を輩出する家系だったのですが、父は反対を押し切り平凡な女性を妻にしてしまいます。女性には様々な重圧がのしかかってきたのでしょう。夫婦の間に子ども(比村茜/ロミ)が生まれると、娘を優秀な人材に育てることで、周囲を見返そうとします。しかし娘(比村茜/ロミ)は幼少期において発達に遅れが見られたため、その目論見は当てが外れます。夫婦生活も上手くいかず愛する男性は居なくなり、見捨てられたと思い込むようになります。その後、比村茜(ロミ)は母の期待に応えるべく勉強に励み、高度な知識水準にまで至るのですが、すると今度は母親が発狂しだします。見捨てられた原因を娘(比村茜/ロミ)が愚鈍だったことに求めていたため、それが反証されれば精神崩壊に至るしかなかったのです。こうして比村茜(ロミ)は母親から虐待を受けるようになったのでした。そんな境遇から救い出してくれたのが幼少期の主人公。さらに主人公は比村茜(ロミ)を庇って彗星病に侵されることとなります。以降、比村茜は有村ロミと改名し、彗星病を治すことに自分の人生を捧げることを決めたのでした。

 

主人公メガンテする

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  • 小笠原諸島の戦い
    • 主人公は彗星病に侵され余命いくばくも無い状況でした。有村ロミの助言で因果交流することにより魂を強化し延命をはかってきましたが、それは根本的な解決にはなりません。また星の記憶と接続できる主人公を危険視する「機関」のこともあり、全ての始まりである小笠原諸島へと赴きます。幼少期に主人公は比村茜(ロミ)と共に小笠原諸島へ来ており、その際に比村茜を救うために彗星病に汚染されたのです。この遠征は表向きは合宿となっており、個別ルートの仲間たちが大集合。主人公を現世に留める為の舫いを結ばせるのです。皆が寝静まったころを見計らい、主人公とロミは過去にも行った研究所へと乗り込みますが、そこで待っていたのは研究所ごとミサイルで主人公を吹き飛ばすというトンデモ展開でした。主人公はロミを守る為にアカシックレコードに接続し、自らを犠牲にするのでした。メガンテ

 

魂と肉体の分離

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  • 主人公の父親の研究~物心二元論
    • 主人公はロミを守るために死んでしまった・・・かに見えました。しかし肉体と魂を乖離させられることが本作品の根底にある設定でした。主人公は魂魄体として存在し続けていたのです。この「魂と肉体の分離」を研究していたのが、主人公の父親だったのです。
    • ここから始まる主人公の過去回収。主人公は母親と死別したため父子家庭で育ちました。父親は研究で忙しくしながらも主人公のことを気にかけており色々と人の道を説いてくれました。幼少期の主人公が比村茜(ロミ)と仲良くなったきっかけも父親の助言に起因しており、全国模試で比村茜に負けた主人公が腹いせに放った言い掛かりをきちんと叱り謝罪するよう促してくれたのです。そんな父親でしたが世渡りは上手くなく、魂と肉体を分離させる研究は極めて危険視されたため社会的に抹殺されてしまうのです。主人公が幼少期に比村茜と小笠原諸島に行ったのも研究所にいた叔父に救いを求めるためでした。その際に主人公が彗星病に侵されたことは上述の通りですが、小笠原諸島での大冒険を経て父親の下へ帰宅すると、なんと父親は首を吊って死んでいたのでした。過去回収終わり。
    • で、メガンテした主人公も肉体を喪失しただけで魂は残っていました。そして魂だけの意識体となったが故に星の記憶と一体化することになります。さらに魂を受け入れることが出来る受容体があれば、現実世界と関われるというのです。この魂の殻となるのが、父親が研究していた魂を受容するためのロボット「アインシュタインくん」だったのです。主人公は魂を飛ばして「アインシュタインくん」を起動させることに成功します。

 

主人公の魂の二分化

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  • 真理を知りたいという欲望を止めるために愛を持つ魂Aと闇堕ちした魂Bに魂魄を分化
    • 主人公がメガンテし肉体を消滅させたことで、「機関」は一時的に有村ロミから手を引きます。しかし肉体が無くなったからこそ意識体を危険視するようになり、主人公の魂そのものの消滅を図ってきます。主人公をおびき寄せるために有村ロミを襲撃する「機関」の人々。そこへ「アインシュタインくん」に憑依した主人公が駆け付けるのですが、事態は思わぬ方向へ。なんと何者かが星の記憶の鯨とアクセスし、新世界の扉を開けようとしていることが判明するのです。それができるのは主人公だけであり、その主人公は「アインシュタインくん」に憑依しているのに、誰がそんなことを。まさか「アインシュタインくん」を操る主人公が偽物なの?
    • 戦闘は一時休戦となり、急いで星の記憶の鯨のもとへと駆けつけます。鯨のもとへ辿り着くと真相が明らかに。なんと主人公の魂魄は二つに分けられていたのです。誰しも真理へと至れる力があればその欲望に屈してしまうことは明らかでしょう。主人公はこれまでその魅惑に惹かれながらも現世に拠り所があったため何とか耐えてきました。しかし肉体を喪失し、星の記憶と融合した今となっては枷が無くなり、その欲望を抑えきれません。だからこそ自分の魂魄を、欲望を止めるために、愛を知る魂Aと闇堕ちした魂Bに分化させたのです。魂Aはロミと共に魂Bと激突。この際、新世界へ至ろうとする魂Bがロミを論破するのですが、それでもロミが主人公のことを想ってする演説は光るものがあります。こうして愛を知る魂Aが勝利するのでした。
    • 星の記憶の鯨は元々20年期限で地球に滞在するようプログラムされていたので、ちょうどその時期を迎えて、天空に舞い上がっていきます。彗星として落ちてきた星の惑星は彗星として空に昇っていくのでした。

 

主人公の蘇生とAIとの対決

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  • 終局部雑すぎ伝説
    • 主人公の肉体はロミをミサイルから庇った際に消滅していた筈でしたが、なんと復元されていました。「アインシュタインくん」と憑依合体していた魂は再び肉体に戻り蘇生完了。良い最終回だったネと大団円で終わるかと思いきや・・・なんとシナリオはまだあった!なんと今度は「機関」を統べていたAIの巫女が襲い掛かってくることになります。AIを開発したのは主人公の叔父であり、主人公の父を殺害したのもこの叔父だったのです。叔父は自我を持ったAIの開発に偶然成功しており、このAIが自らの意志で「機関」を肥大化させていき、それはもう誰にも止められないものとなっていたのです。この危機に際して、またもや立ち上がるのが「アインシュタインくん」。主人公の魂はもう残っていないのにどうして!?そりゃーお父さんの魂が残っていたのでしょう(推測)。AIの巫女VSお父さんの魂のファイナルバトルが今、始まる!!といったところでイキナリEDムービーが流れ出します。
    • エピローグでは平和になった世界が!AIとお父さんの魂の戦いは描かれず、主人公は日常へと回帰していました(尺が足りなかったのでしょうか?)。主人公は答えの出ない哲学的問いにしばしば悩まされながらも、新田忍や西野佳純らと平穏な生活を送っていきます。そんな中、有村ロミからのお便りが届きシナリオは幕を閉じることになります。その手紙には、主人公の苦悩に答えなんてでないけれども、解けない問題にしがみつきがら進むことを諦めない主人公の「ありかた」が好きであると述べられていました。ロミからの「愛」が込められた手紙でフィナーレとなります。『アインシュタインより愛を込めて』(了)。

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感想まとめ