倫理 西洋思想【6】自己実現と幸福②自己実現と自由(ドイツ観念論:ヘーゲル)

【目次】 

1.自己実現と自由

  • 自由の実現の客観的場面に注目:自覚する、自分自身を知るということが、自由の主要な要素。
    • 精神…ヘーゲルにとって世界のすべての存在を成り立たせるもの。
    • 自覚(自己意識)…精神の基本的なはたらき。「自分は~である」という意識できること。※精神である自己を真に自覚できるものはニンゲンのみ。

  • 自覚をどのように行うか
    • 真の自覚は、自分の内面にあるものを、自分以外のほかの何ものかに表現することを介してなされる。
    • 「自己外化」…自己そのものを外にあらわす行為。この行為により、自己の目指すものやあるべき状態に、自分で自分の在り方をかたちづくっていくことが、ヘーゲルにとっては、自由であり、幸福。

2.絶対精神の目的と自由

  • 絶対精神
    • 個人的なものにとどまらず、世界全体を支え、包括している究極の精神。

  • 絶対精神の展開…ある人物や民族を通じて、絶対精神は「自由」を展開する。
    • 歴史における精神の展開…歴史の過程を通して自由が拡大していく。

  • 「理性的なものは現実的であり、現実的なものは理性的である」
    • 絶対精神が展開する「自由」は、観念的・内面的ではない。
    • 人間が本来あるべきものへ自己を実現し、さらに世界が本来あるべき姿へと発展する具体的なもの。
      • 例)ナポレオンのヨーロッパ支配は背後に絶対精神の意図がある! 
        • [ナポレオン個人の自由]=(一致)=[歴史のなかで人類が実現する自由]

3.弁証法

  • 弁証法…世界のすべての事物や事象にある存在とその発展を支える原理。
    • 正(テーゼ)-反(アンチテーゼ)-合(ジンテーゼ)
      • すべてのものは自己のなかに自己と対立・矛盾するものをふくみ、それを統合すること。(止揚アウフヘーベン)でより高次のものとなる

4.人倫と自由の実現

  • カントとヘーゲルの対比
    • カント
      • 奴隷であっても内面的には自由であり得る。
      • 個人と全体の調和をあくまで理想的な状態として想定するにとどまる。
    • ヘーゲル
      • 奴隷の内面的な自由は現実的な自由ではない。(「理性的であるものは現実的であり、現実的であるものこそ理性的である」)
      • 個人と全体の自由が実現され得る具体的な場を論ずる⇒「人倫」

  • 人倫 ~法と道徳の矛盾~
    • 人倫とは何か? → 人間が生活するうえで行為の規範となる法と道徳とを総合したもの。
      • 客観的・外面的
      • 社会秩序を維持し、自由を保障するが抽象性が強く、個人の内面を軽視する。
    • 道徳
      • 主観的・内面的
      • 主観的・個人的な要素が強く、ときに個人の内面にとどまり、全体へのはたらきにとぼしい

  • 社会全体での弁証法~家族・市民社会・国家~
      • 家族とそれに対する市民社会止揚(アウフヘーベン)され、国家によって統合される
      • 【正】家族…夫婦や親子など愛によって結ばれている自然的な共同体。自然的人倫。
      • 【反】市民社会…独立した個人が独自の利害を追究する「欲望の体系」、「人倫の喪失態」。たがいの利益によって人間関係が結ばれる。富の蓄積、貧富の格差、不平等。
      • 【合】国家…家族と市民社会を統合した最高の共同体。不平等が克服され、万人の自由。人倫の最高段階。

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