ゴールデンカムイ樺太編(8)「蝦夷共和国再興編」の感想・レビュー

ロシアの南下に対抗すべく北海道を他民族国家の緩衝国として独立させようとする話。
後の世で蝦夷共和国と同じ役割を担うことになるのが満洲国であった。東亜アウタルキー
自らに信念があるかどうかというジジイたちの違いが克明になった場面が見どころである。
岡田以蔵の勤皇主義はあくまでも他者の思想の借り物であり道具として切り捨てられた。
他方で土方歳三蝦夷共和国は自らの命を燃やし尽くして実現しようという信念。
ゴルカムは老人や中年男性が人生に固執する生き様を見せてくれるところが良いよね。

ロシア/ソ連の南下に対抗する多民族国家の独立国という妄執

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  • 主権線/利益線/生命線
    • 新撰組土方歳三がもしも生き残っていたら・・・そういった空想は誰しもがするものです。土方歳三カッコいいし、手塚治虫先生の『シュマリ』でも生きてました。そんなみんな大好き土方歳三ですが、ゴルカムでは蝦夷共和国の再興を目的に金塊争奪戦に介入してきます。土方歳三は何故蝦夷共和国の再興を目指すのでしょうか?一言でいうとロシアの南下政策に対抗するため。日露戦争後もロシアの南下は止まらないと見た土方さんは、北海道を緩衝国とすべく多民族国家の独立を目指していたのです。日本国≠政権担当者という考えは現代においても考慮すべき内容で、日本のためということは現在の内閣を支持することとイコールではないのですね。土方さんも明治政府のやり方を否定し自らが日本の為に働くと意気込んでいます。土方さんの考えではアイヌからの支持が必要となるためアシㇼパさんとも共闘でき鶴見中尉に対抗する勢力を築けるようになるわけです。現実では北海道は多民族国家の独立国とはなりませんでしたが、同じ役割を担った別の国家は成立することになりました。それが満洲国です。満洲は日本の生命線。タテマエだったかもしれませんが五族協和多民族国家が作られたのです。その結果は皆さまご存知の通りですが……
    • 今回は土方さんが自分の思想を再確認するための話だったとも言えます(読者に再確認させるための回なのかもしれない)。そのために用意されたのが岡田以蔵。身分差別の無い社会を目指して勤皇主義に走るも他者の思想の借り物であったため道具として切り捨てられたという設定になっています。そこから釧路に流れ着きアイヌ民族の女性と結婚。道具ではなく人間として生きることができたという流れです。岡田以蔵土方歳三を対比させることで、土方歳三の信念がより浮き彫りになるという構図です。岡田以蔵の幸せや救いは個人的なものであり、土方歳三の信念は日本のために働くぞという意志表示なのですね。鶴見中尉の唱える軍事独立国家は鶴見中尉の本当の目的ではないっぽい雰囲気が漂う中で、蝦夷共和国の思想がブレない土方歳三という役割配置になっているのかもしれません。

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