ゴールデンカムイ樺太編(9)「日本軍ロシアスパイ×ナロードニキ運動×極東パルチザン」の感想・レビュー

今回は女囚ソフィアと鶴見中尉の過去を同時に回収した話。
鶴見中尉は若かりし頃、ウラジオストク写真屋に偽装しながら諜報活動を行っていた。
一方のソフィアはナロードニキ運動に失敗しテロリズムに走った貴族身分だった。
そして極東パルチザンのウイルクとキロランケが独立国家建設を目指しソフィアと手を組む。
皇帝暗殺の指名手配を逃れるため渡日するべく鶴見篤四郎から日本語を教わるウイルクたち。
だが、秘密警察の襲撃を受け鶴見篤四郎の現地妻と赤ちゃんは殺されてしまう。
これがきっかけとなりソフィアはロシアに残り、流氷で樺太に渡るウイルクたちと別れた。

鶴見篤四郎の本当の目的はロシアで死んだ妻と子の弔いなのかもしれない

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  • 鶴見劇場の行き着く果て
    • 【1】鶴見中尉の名目上の目的は、日露戦争で多大な戦死者を出したことで冷遇されるようになった第七師団のため北海道に軍事独立政権を樹立すること。鶴見中尉はその目的を叶えるべく、自分のためなら命すら投げ出すことを厭わない忠実な部下たちを作っていきました。宇佐美時重、鯉登音之進、月島基らがその筆頭なわけです。しかしアシㇼパさんと出会った時に脳漿が溢れ出たように、本当の目的は明らかにされていません。月島基はいご草ちゃん事件により鶴見中尉の本質を知っており、鯉登音之進は鶴見中尉に惚れるきっかけとなった人質事件が海軍将校の父を利用する為の自作自演だったことに気付いたため、鶴見中尉に対する忠誠心は盲目なものではなくなっています。
    • 【2】今回の放送では、鶴見中尉の人格形成に大きな影響を与えた妻子死亡事件が扱われました。その事件にアシㇼパの父であるウイルクたちも関わっているという設定です(鶴見中尉がアシㇼパと会った際、脳漿が迸ったのは、ウイルクの面影をアシㇼパに見たからかもしれません)。ウラジオストク写真屋に偽装しながら諜報活動を行っていた鶴見篤四郎の下へウイルク、キロランケ、ソフィアが日本語を習いに来るという構図です。鶴見夫妻とソフィアたちは暫くの間、交流しながら穏やかな日を過ごしていきますが、ついにロシアの秘密警察がやってきます。ウイルクたちは自分らを捕縛しに来たと思い込みますが、その狙いは鶴見篤四郎であり、諜報活動の疑惑を聞きつけてやってきたのでした。
    • 【3】この抗争の中で、鶴見篤四郎の妻子は死にます。スパイとして世間を欺くための結婚だったかもしれませんが、鶴見篤四郎は妻子を愛していたであろうことが、まざまざと表現されています。そして死にゆく妻に偽名ではなく本当の名である鶴見篤四郎を告げ、赤子の小さな手に口づけをして、全てを焼き払ったのでした。それ以降の鶴見中尉の行動原理を考えると、この妻子死亡事件が大きな伏線となっていることが匂わされていることが分かります。鶴見中尉の行き着く果てがどのような結末になるのかが本作の大きな楽しみの一つでもあります。

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