倫理 応用倫理【4】情報倫理

  • 概要
    • 情報社会においてはネットの普及により様々な利便性を享受できるようになった。だがしかしインターネットを利用する際には多くの問題点も孕んでいる。ここではネット社会を生き抜くための情報倫理について学習する。

【目次】

1.交通と通信

  • 高度情報社会
    • 産業の発展過程において、農業から工業へ、さらにモノの製造から情報などの目に見えないものの生産・伝達による産業が営まれる社会。

  • 情報社会
    • 情報が活動の中心となる社会。情報化は人々の間のコミュニケーション活動の活性化に寄与するが、他方では少数者による情報操作や管理社会の危険性をもたらす。ネットにおけるブログやSNS、twitterの書きこみ、コンビニのPOSシステム、本屋のポイントカードなどから個人情報と行動傾向が割り出され、操作されるようになる。

  • 管理社会
    • 巨大な社会組織の管理化にともない、個人の行為のすみずみに到るまで社会全体が統制される。文学作品ではディストピアとして表現される。一見すると平等で秩序正しく、品行や紛争もない理想社会。しかしそれは徹底的な管理・統制が敷かれた見せかけの自由の社会であり、粛清・思想統制格差社会・情報操作・生殖管理・産児制限・愚民政策が横行する。

2.情報社会の背景

  • マス=コミュニケーション
    • テレビ、ラジオ、新聞、雑誌など、大量のメッセージを不特定多数の人々に伝達する。メッセージの伝達が大規模で組織的に行われ、受け手が不特定多数であり、送り手と受け手の役割が固定されている。人々の間に受け身的な態度を醸成する。

  • IT革命
    • ITとはInformation Technologyのこと。情報技術の革新に伴う、産業構造、マス=メディア、行政の在り方の変化。

  • インタラクティブ=コミュニケーション
    • 双方向性のコミュニケーション。コンピュータ=ネットワークを使って、不特定多数の人が互いにコミュニケーションを交わすこと。インターネットの発達は、大量の情報を一方的に流すという従来のマス=メディアの限界を打ち破り、不特定多数の人々が、相互に通信を交わすことを可能にした。

  • ユビキタス社会
    • いつでも、どこでも、だれもが情報技術の恩恵を受けられる社会。本来の語源は、「神はあまねく存在する」というラテン語

3.情報社会論の登場

  • マクルーハンのメディア論
    • グーテンベルク活版印刷革命
      • 活字文化の登場とともに、口頭による伝承が文書による保存に姿を変え、だれかが語り聞かせ、みなで耳を傾ける物語が、一人で読まれる小説に代わった。
    • ラジオ、テレビ、映画による活字文化の変化
      • テレビによって世界中のだれもが、世界中のニュースを同時に知る時代には、ふたたび目で見ることができ、耳で聞くことのできる感覚的なイメージが人々を動かしていくことになる。
    • 新たな部族社会、無文字社会の到来
      • マクルーハンがマスメディアの発達により到来すると予測した社会。

4.情報社会の問題点

(1)リップマン

  • ①世論操作
    • 情報提供者(当時は新聞)は複雑な事実そのものをすべて報道するわけではなく、メディアによって伝達されるものは、選択、加工、単純化されたイメージである。発信者側にとって都合の良いように出来事は報道されている。
  • ステレオタイプ
    • 特定の対象やできごとについて、ある社会集団のなかで広く受容されている単純化され、固定化されたイメージ。しばしば好悪・善悪などの感情的な評価をともなう。
  • ③疑似環境
    • マスメディアが提供するイメージによって形成される疑似環境。リップマンは人々が直接に経験するものではない、その二次的な環境がはらむ側面に注意を喚起した。

(2)テレビと物語消費

  • ステレオタイプ形成の容易さ
    • テレビが提供する単純化されたイメージは音声と映像をともなうので感覚により強く訴えるため、ステレオタイプをかたち作ることが用意。
  • ②物語消費
    • マス=メディアは事実に即した正確な情報ではなく大衆が求める物語的な面白さや「本当らしさ」を提供するようになる。できごとはみな物語のように消費され、ネコチャンのカワイイ動画や重大な政治的事件が横並びで一種のイベントとして娯楽に供される。
  • ③疑似イベント
    • メディアが提供する「本当らしい」できごと。アメリカの歴史家ブースティンの言葉。

5.情報社会の現状と課題

(1)ネットの普及による仮想現実の拡大により問題が複雑化

  • ①電子社会の脆弱性…通信回線や情報機器の故障・妨害により情報が混乱し、社会的混乱が発生する。
  • ②匿名性…匿名性を利用した誤情報の拡散や個人への中傷が発信される。
  • ③個人情報の流出…公的機関や企業などによる情報流出の危険性や、SNSの発信から個人が特定される。
  • 著作権の保護…電子情報は複製が容易であるので著作権保護をめぐる困難な問題が発生。知的所有権の社会的な合意形成の必要性。

(2)ネット社会の利点

  • ①集権型の社会→分権型の社会
  • ②一方的な情報の流れ→双方向的、多方向的な流れ

(3)情報社会で求められるもの

  • 情報リテラシー…誰もが情報を発信できるようになった時代のため、情報を鵜呑みにするのではなく、取捨選択し、判断・評価、利用する能力(情報リテラシー)を高めていく必要がある。
  • デジタルデバイドの解消…パソコンやスマホなどの情報機器を所有できる/使いこなせる環境にいるかどうかで経済的・社会的に大きな格差が生じることをデジタルデバイドという。この情報格差を解消することが求められている。