地誌【2】朝鮮半島地誌

0.文化

  • 代表的都市:ミョンドン(明洞)
    • 韓国ソウルの中心にある商業地区、ソウル駅から南大門(ナムデムン)を経て1㎞ほどの地域。ミドバ・新世界・ロッテなどの大手デパートが集まり、ファッションを中心とした若者の街。韓国最古のカトリック教会であるミョンドン聖堂がある。
  • 代表的料理:ビビンバ
    • 韓国で食される混ぜご飯。石または金属の碗にご飯を盛り、その上にもやし、湯で野菜、牛肉、卵、唐辛子、味噌を混ぜて食べる。もともと何が混ざっているのか分からないほど混ぜる。
  • 家庭での食事の様子
    • 床暖オンドルを使用するため、床にじかに坐って生活。米飯はスプーン、おかずを箸(金属製)で食べる。食器を持ち上げるのは品のない行為とされる。

1.韓国の自然と民族

1-1.朝鮮半島の自然環境

  • 地形
    • 山がちで、平野は少ないが、全域が安定陸塊に区分。
    • 南西部にはリアス式海岸(V字谷が沈水した海岸)。      
  • 気候(年較差が大きい)
    • 夏…海洋からの南東季節風の影響で高温多湿。かなり蒸し暑い
    • 冬…シベリア高気圧の寒冷な北西季節風で寒さが厳しい。→床暖房オンドルを利用。
    • 区分…北部は冷帯冬期少雨気候(Dw)、南部は温暖湿潤気候(Cfa)、最南部は温暖冬期少雨気候(Cw)。

1-2.民族の文化

  • ハングル(訓明正音)
    • 李氏朝鮮の世宗が制定。当初は漢字が正統であり、訓明正音は低俗とされ、知識階級からは軽視されていた。だが、1910年に日本に併合されるとナショナリズムの手段としてハングルを国民統合と反帝国主義の装置と見なすようになり、ハングルを使うようになった。
  • 儒教
    • 朝鮮式華夷秩序
      • 華夷秩序とは中国を世界中心である「華」とし、周辺民族を野蛮な「夷狄」とみなす思想。朝鮮は明の属国であったが、ジュルチン(女真)族の清に征服されてしまった。そのため、今度は清の属国となったが、中国よりも厳格に儒教を信仰することで、自らが華夷秩序の正式な継承者であると主張した。こうして夷狄であるジュルチンに征服された怨恨を解消し、自己正統化を図ったため、儒教が広まった。
    • 本貫
      • 一族の出身地。各氏族の始祖から現在の子孫に至る系譜はチョクボと呼ばれ、すべての血縁関係が何世代にもわたって記録されている。韓国では、本貫が同じ人との結婚は出来なかったが1997年に本貫が同じ者の結婚を禁ずる法律を違憲とした。それ以降、本貫が同じ人間でも事実上は、結婚が容認される傾向にある。

2.分断国家

2-1.日朝関係略史

2-2.南北対立略史

  • 植民地解放
    • 1943年 カイロ会談:戦後朝鮮の独立承認  → 北緯38度線を境界に米ソ分割統治
    • 1945年9月 建国準備委員会によって朝鮮人民共和国樹立宣言 → アメリカにより否定
  • 韓国
    • 1950年代…イスンマン独裁→失脚
    • 1960年代…開発独裁(漢江の奇跡)→工業化、経済成長。アジアNIEsに。
    • 1970年代…セマウル運動→農村部の近代化を図る。
    • 1988年…ソウルオリンピック
  • 90年代以降:冷戦崩壊 緊急緩和 南北融和

3.韓国の産業

3-1.植民地期

  • 初期:産業抑制策
    • 企業の成長は順調ではなく、特に南部は鉱産資源に恵まれずめぼしい工業は見られなかった。
  • 土地調査事業(1910~18)
    • 申告により土地所有権を確定。申告漏れになった農民の土地を東洋拓殖会社が、国有地として没収し、朝鮮最大の地主となって、朝鮮人を小作として支配。
  • 産米増殖計画(1920~)
    • 土地改良と農事改良で米の生産を増加させ、日本に移出する計画を実施。朝鮮内は慢性的な食糧不足に見舞われる。
  • 工業化政策(1931~)
    • 日窒コンツェルンなどの日本資本が、電源開発を進め、朝鮮の地下資源開発(石炭、鉄)により、重化学工業を推進。北部に工業地帯形成。

3-2.独立後

  • 外資導入による輸出指向型工業化を展開。
    • 外国資本(外国企業)の誘致を進めて、自国の安価な労働力を利用して、工業製品の生産および輸出を行うことで、工業化を進めること。

3-3.開発独裁

  • 1960年代~70年代 朴正煕政権の時代;任1963~79)
    • 開発独裁…経済開発を効率よく進められることを理由に正当化が図られた独裁政治体制。
    • 1960年代後半から高度経済成長を実現。鉄鋼・機械・化学・エレクトロニクスの分野で産業を発展。→この経済成長のことを漢江の奇跡と呼ぶ!!
    • ポハンの製鉄所、ウルサンの造船所
    • 財閥…経済成長の牽引力。製造業で圧倒的な支配力、上場企業の利益の半分以上を4大財閥40社が占める韓国の財閥は、日本の財閥(WWⅡ以前)の特徴と「系列」両方の特徴を持つ。
      • ファミリー・コンツェルン…家族ないし同族の出資による持株会社を統轄機関として頂点にもち,それが子会社,孫会社をピラミッド型に持株支配するコンツェルンを形成。
      • 系列…役員派遣,融資,株式取得,主要取引関係の設定などによる,大企業と中小企業との間の支配従属の関係。下請制の発展したものとしてとらえられ,紡績会社と機業者,自動車会社と部品メーカーなどに典型例がある。

3-4.アジア通貨危機による打撃

  • GDPの推移:1976年;一人当たり1000ドル → 1995年;一人当たり1万ドル 
  • ②1996年…経済協力開発機構(OECD)に加盟
  • ③1997~98年…アジア通貨危機
    • a.タイにおける通貨危機の発生
      • タイの通貨バーツが対ドル固定相場制から変動相場制に移行→タイ通貨バーツの貨幣価値が下がる。
    • b.グローバル資本主義による国際的影響
      • タイ・インドネシア・韓国は輸出指向型工業をとっていたため、海外から投機的な資本が流入していた。→外国資本の流出・為替変動による対外債務の急増→急激な信用収縮・不良債権の増加
    • c.アジア全体の通貨危機

4.人々の生活の変化

  • 都市化の影響…首都ソウルに総人口の4分の1が集まる。高層マンション、自動車の増加、地下鉄利用、チマチョゴリは礼服化、白衣から色彩鮮やかに
    • 教育…受験戦争の過熱 → 塾・家庭教師を規制 → 実効はあがらず
    • 通信…インターネット利用者の増大。総人口に占める利用者の割合は世界有数。
    • 地方情勢…農村における人口流出、労働力不足。農産物輸入の増加による収入減。

5.日本との交流

  • 日本の植民地支配を受けていた韓国では、2003年まで日本の文化は制限されていた(文化帝国主義)
    • 1910年~1945年:日本の植民地統治
    • 1948年…大韓民国建国:日本の文化を歌舞伎などの伝統芸能のみに制限
    • 1965年…日韓基本条約:日本と韓国の国交樹立
    • 1998年…日韓共同宣言:日本文化の段階的開放→4大国際映画祭受賞作、マンガ出版の許可
    • 1999年…70の国際映画祭受賞作、歌謡公演の許可
    • 2000年…アニメーション、放送、ゲームの許可
    • 2002年…日韓共催ワールドカップ
    • 2003年…CD開放 → ほぼ日本文化制限撤廃
  • 現在日本には、韓国・朝鮮の国籍を持つ人が約60万人居住しており、帰化した人も多い。