雑録

2020年発売のノベルゲームまとめ

  • 2020年の特徴
    • ①換骨奪胎
      • 2020年の製品版をやった雑感としては、換骨奪胎の作品が多いような印象を受けました。商品として洗練され綺麗にまとまっており一定の面白さは担保されているものの、既存のテーマの焼き直しであり新規性やオリジナリティは皆無というような感じ。具体的には年間トップ上位作品に入っている『9-nine- ゆきいろゆきはなゆきのあと』や『白昼夢の青写真』など。『9-nine-』は古色迷宮輪舞スマガシュタゲだし、『白昼夢』はMUSICSまどマギユースティアKeyバルドでした。特に『白昼夢』ではCASE2のシナリオ内において既存の物語を混ぜ合わせて昇華させ一定の作品に仕上げることが才能である言い切っているので意図的にやっていることが分かります。面白いことは確かですが、発展性は無いかもしれません。
    • ②アニメとノベルゲーの連動
      • 斜陽の中で挑戦を続けているのは恋愛皇帝や野良猫ハートでおなじみのはと先生。ノベルゲーの枠組みを打破するためカートゥーンアニメとノベルゲーを組み合わせるという表現技法にチャレンジしています。シナリオがぶつ切りのように感じられ非エロの百合作品となってしまっていますが、新しいことを始めるのは大変なのでその意欲は買いたいところ。また同じくアニメと連動させるという点では、Keyも挙げることができます。2020年にはサマポケのFDが出たのですが、ここで重要な主題(しろはの弱さ/主人公とうみの和解)が回収できませんでした。ファンはがっかりしたものでしたが、この主題を2020秋アニメ『神様になった日』の第5話「大魔法の日」で見事に扱うという離れ業を見せました(→cf.「大魔法の日」感想)。サマポケFDをプレイしていた層にとっては作品を越えたテーマ回収に驚愕したものです。
    • ③売るための商業製品よりも情熱のある同人作品
      • 昔から言われていることでもありますが、2020年の作品群は商業よりも同人作品の方が特に情熱を感じられた年でした。商業モノはメーカーによる阿漕な販売戦略もさるものながら、換骨奪胎なオマージュの連発が目立つシナリオ群に少々辟易してしまいました。
      • 私が2020年の作品群で特に思い入れのある作品は「夜のひつじ」と「たまこまこ」のVNLですが、どちらも同人作品。単にお前は救済系のゲームを好んでいるだけだろォと突っ込まれればそれまでですが……。それでも利潤追求のために作られた商業モノの工業製品よりも、作りたいから作っているメーカーの方がよっぽどやりがいのあるゲームを生み出しているように感じられました。

【目次】

『誘惑なまいきロリータDL版』 (夜のひつじ) (disc版:2019-12-31/dl版:2020-01-17)

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人生救済ゲー。本当に現実で生きづらいと思っている人々を救済してくれます。人生に対して目的を見出して積極的に生きられる人々はこの作品を読む必要はありません。そのまま強く生きてください。しかし全ての人が積極的に人生を生きるられるわけではなりません。人生に目的を見いだせないままただひたすら残りの人生を消化しなければならないかと思うと死にたくなります。そんな人々が死ななくてもいいよと許しを与えてもらえるのです。本作は「居場所がない人が居なくなれる場所」が提唱されています。祖母の遺産相続争いを契機にアパシー状態になった主人公、親からネグられた絵描き少女、才能限界により親から見限られたアスリート少女の3人が現実から居なくなれる場所に集まります。そこでの交流を通して徐々に誰からも必要とされない状況から癒されていきます。本作は社会的な問題を扱うことがテーマではないので、それぞれの問題解決が詳細に明示されるわけではありません。しかしその曖昧さにきちんとした意味があり、人生の苦しみは物語のようにそんなにはっきりと分かるものではないことが暗示されています。そのような曖昧な状況の中でも生きていくための言葉が「雪では白すぎる。夜では暗すぎる。鈍色で灰色で、ひんやりとして優しい」という表現。既存の社会秩序からはみ出してしまったひと、はみだしていなくても息苦しさを感じる人、そんな人々にとっては良作となる作品です。おススメ。

『あまいろショコラータ』 (きゃべつそふと) (2020-01-31)

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ケモミミ少女と喫茶店で交流するだけのキャラゲーです。フルプラではないので攻略ヒロインは2人。「不器用なのに生真面目で融通が利かない面倒くさい系少女」と「アホっ子」が用意されています。個人的にはサブヒロイン2人の方が圧倒的にカワイイのでフルプラにして残り2人も攻略対象にしてくれよ……と不謹慎にも思ってしまったのでした。キャラゲーなので攻略ヒロインが個人の趣味趣向に合うかどうかで評価が分かれるかと思います。特に面倒くさい系ヒロインの攻略が大変。出来ないことを認めたくなくてただガムシャラに頑張ることで現実から目をそらしている意固地な人物像を見せつけられることになります。このようなヒロインに対し面倒くさいからといって切って捨てるのではなく、粘り強く向き合っていく根気が必要になってきます。それでも終盤においては面倒くさい少女が精神的に成長し、自分の短所や欠点を自覚できるようになり、厄介な自分とうまく付き合えるように努力しようとする姿勢を見せるので、プレイしていて報われることにはなります。面倒くさい系ヒロインも結構増えましたね。

『マルコと銀河竜 ~MARCO&GALAXY DRAGON~』(TOKYOTOON) (2020-02-28)

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ぶっ飛んだテキストと勢いのあるギャグというバカゲーの中に哲学・思想を注入して来るはと先生の最新作。本作はぶっとんだテキストを踏襲しつつもノベルゲームの枠組みを打破する試みとしてカートゥーンアニメを取り入れています。文章には文章の、動画には動画のそれぞれの良さがありますが、それらをうまく組み合わせることに成功しています。作風としては、はと先生のお家芸である親子愛を土台にした宝玉争奪戦でドッタンバッタン大騒ぎというノリ。タイトル通りメインとなるのはマルコと銀河竜の百合的な友情であり、百合ゲーでもあります。そのためシナリオは1本道であり√分岐やヒロイン攻略といった要素は皆無になっています。また詳述されずにぶつ切りにされる場面転換などもあるので文脈から類推することが求められます。それでも気軽に読める明るいテキストの中に深イイ話が盛り込まれているので娯楽作品としては良作と言えるでしょう。

『9-nine- ゆきいろゆきはなゆきのあと』 (ぱれっと) (2020-04-24)

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原画師和泉つばす先生をウリにした分割商法の最終作品です。中二系異能バトルからループ系SF展開となり、プレイヤー自身が観測者として物語に参加し「世界の枝」(フラグチャート)を渡ってハッピーエンドに導くという設定になっています。物語やシナリオ構造としては洗練されていて小綺麗にまとまっており一定の面白さが担保されています。しかしプレイヤーが観測者になりフラグチャートを利用して物語に参加して形而上学的存在(本作ではソフィーティア)と交流するのって『古色迷宮輪舞』などのフローチャートがある作品をオマージュしています。また本作では他の並行世界で攻略したヒロインたちが一つのセカイに結集して総力戦を繰り広げるムネアツ展開もあるのですがこれは『スマガ』などの√分岐統合モノの既視感がバリバリ。既存の作品の面白かったところを融合してうまい具合に一つの作品としているという技巧的表現では見るものがあります。しかし新規性やオリジナリティといった点は皆無。また多くのプレイヤーが予想した通り、分割商法にありがちな阿漕な商法「完結したら真シナリオをつけてフル版を出すよ」が披露されぱれっとェェ……となりました。

『アマカノ2』 (あざらしそふと) (2020-04-24)

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キャラゲー。コンテンツツーリズムゲーでもあり、冬を舞台に情緒ある城下町でのヒロインとの交流が楽しめます。各種ヒロインで共通したテーマになっているのが、それぞれの事情で恋愛をしないヒロイン像になっているということ。メインヒロインは封建的な旧家にとらわれているため、幼馴染はお姉ちゃん属性のため、従妹は合理性を追求するためです。プレイして特に印象に残っているのが、メインヒロインのキャラ像3変化。メインヒロインは親から品行方正に育てられるのですが能力の限界により親の期待にこたえ続けることができなくなってしまいます。こうしてアイデンティティ崩壊したヒロインは家出しリセットを図るのですが、これまで自分というものに向き合ってこなかった少女に本当の自分というものはなかったのです。それゆえ折角家出したのに家出する前と同じように品行方正に振る舞う事しかできないという矛盾が実に素晴らしく表現されています。その事実を見抜いた主人公がメインヒロインに指摘すると、今度はメインヒロインが主人公に敵意を剥き出しにしてきます。このver.も立ち絵・声優さんの演技とともにインパクトあります。そしてこの敵意ver.を解放し、親との対立も乗り越えると、ついに第3段階のデレモードが見られるという寸法です。1ヒロインに3キャラあるようなものなのでなかなか濃厚と言えるでしょう。ただシナリオについてはあくまでもキャラゲーなのでひたすらイチャラブすることがメインとなっています。個人的には幼馴染のお姉ちゃんがキャラ的に結構好きだったのですが、幼馴染を活かした過去の絆と繋がりの要素をもうちょっと入れて欲しかったように感じられました。

『美少女万華鏡 -理と迷宮の少女-』 (ωstar) (2020-05-29)

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美少女万華鏡シリーズの最終作です。原画師がウリ。本作は主に2パートに分かれており、本作独自の話とこれまでの分割商法で展開してきた個別を統合する話です。まず本作独自の話については、過去の異類婚姻譚の悲劇が現代に蘇り世を嫉む少女に憑依しネットを使って怨念を拡散していくというノリです。つづいて分割商法統合編について。これは今まで分割商法で出してきた作品は主人公とメインヒロインが何度も繰り返してきた輪廻転生の一つだったというオチ。こうして様々な悲劇を乗り越えても消えない愛を示すことでついにハッピーエンドに辿り着きます。シナリオを始める前に名前を入力しなければならないのですが、この名前がハッピーエンドの世界線における主人公の転生ネームになるのです。私は「ああああ」と入力していたので終局部の感動が台無しになってしまいました。皆さんは名前入力の際に気を付けてくださいね。

Summer Pockets REFLECTION BLUE』 (Key) (2020-06-26)

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サマポケのファンディスクです。新キャラ1名+サブキャラ昇格の新シナリオ、卓球ミニゲームがウリでした。個人的にはうみシナリオに着目しており、無印で解決しなかった問題をちゃんと回収することを信じていたのですが……無印で解消されなかった問題とは「しろはの弱さの克服」及び「主人公とうみの和解」でした。しろはは本編の個別√において問題を一人で抱え込むのではなく周囲に相談してみんなで立ち向かう事の重要性を知りました。しかし自分の妊娠・出産においては悩みを共有することなく一人で抱え込み、そのせいで出産と同時に死んでしまうのです。しろは……強くなったんじゃなかったのか……と思ったプレイヤーは大勢いるでしょう。そしてしろはの死が主人公の心を凍てつかせネグレクトの遠因となるのですが、これをきちんと解決しておけばそもそもネグレクト発生し無かったやんと……。また結局主人公とうみの親子関係の不和も解消されませんでした。リフレクションブルーの最終場面では、追加の新キャラが「おむすび」だぜぇとか言って無理やりハッピーエンドになります。トートツに主人公・しろは・うみが手を繋いで幸せそうに歩いているシーンが挿入されて終わります。え、主人公とうみは結局和解してないじゃん……個別√まで用意されたのに何故!?とプレイヤーたちは戸惑いました。しかしこれは壮大な伏線だったのです。なんとこの「母の弱さ」と「父と娘の和解」というテーマは作品を越えてKeyの2020秋アニメ『神様になった日』第5話で回収されることになりました。すなわち母親は死を意識すると決して一人で抱え込むことはなく最後の生命を全うするのです。さらに冷え切っていた父と娘の関係も母が残したビデオメッセージに一緒に向き合うことによって解消されることになります。この作品を越えたKeyギミックによって『神様になった日』第5話を見た時には、やりやがった!と叫んだものでした。

『ATRI -My Dear Moments-』(ANIPLEX.EXE)(2020-06-19)

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アニプレックスがノベルゲーに参入したぞ!しかし制作はケロQ/枕とフロントウイングだ!はい、皆さまケロQ/枕が新作を出したらなんて言うんだっけ?「サクラノ刻はまだですか?」(お約束回収)。そんなわけでATRIですが挫折系主人公×アンドロイドモノ。面白いギミックとしてはアンドロイド感情表現問題と主人公挫折の理由。まず前者について。メインヒロインは感情表現豊かなアンドロイドとして登場します。しかしこの少女はわざと感情があるように振る舞っており本当は無機質だったというお決まりのパターンが発動します。しかしここだけでも声優さんの巧みな演技もあり、周囲では感情豊かに振る舞っている少女が主人公の前では瞬時に切り替わり無表情の機械となる描写がとても巧みに描かれています。しかしさらにギミックが仕掛けられているのです。なんとメインヒロインのアンドロイドには本当のホントウに感情があったのにそれを隠してきたという2重構造。感情を解き放て!ということでメインヒロインのアンドロイドが感情を発露するシーンは感動する仕掛けになっています。おススメ。あと個人的に主人公挫折のホントウの理由も結構好きでした。主人公は義足を亡くして学費が払えなくなかったから休学したと述べていたのですが、本当は世界を救うという莫大すぎる目標に対してどんなに努力しても辿り着くことができず勉強へのモチベーションがなくなり成績不振となったからだったというオチ。メインヒロインの自己犠牲により本当に世界を救うという気力を取り戻した主人公が学園に復帰するというお約束の流れですが、結構好きな展開。

『徒花異譚』 (ANIPLEX.EXE) (2020-06-19)

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アニプレックスがノベルゲーに参加した時にATRIと同時に発売された作品。ライアーソフトが制作に携わっています。内容としては日本の昔話をベースにして現代的な再解釈を試みるというもの。実はメインヒロインは結核により死の淵にあり、夢うつつながら過去に楽しい時間を過ごした幼馴染の男の子との思い出を回顧していたのでした。そして幼い時に分かれた男の子は立派に成長し、結核少女を看病していたという展開。この夢うつつながらに見た日本昔話を舞台にした冒険により、結核少女は生きる意志を得ていくことになります。これによって結核を跳ね返し人生を生き抜くことに成功するというギミックになっています。日本昔話の再解釈とかの部分も結構面白いので、構成が巧みに生きていると言えます。

『グリザイア ファントムトリガー 07』 (FrontWing) (2020-07-22)

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いやマジ完成してから売れ。分割商法の極み。スゲー中途半端なところで終わる。ファントムトリガーは各分割商法でそれぞれのヒロインを扱い、そして主人公の過去を回収し、ついに本作で対テロ戦争になって完結するかと思っていたのですが……対テロ戦争として現地に飛んで敵キャラの存在と情勢把握をしただけで終わってしまったぞ!こんな中途半端な宙ぶらりんな状態で売るなんて……そして完結したら追加シナリオ入れて完全版とか出すんでしょ!?……酷い……。それはそれとして内容について。話の視点は一般教員の主体で語られていきます。戦場に赴く生徒たちに寄り添うために足手まといになっても現地に行きたいと参戦します。そして戦場の様子を一般人視点で描くことで読者に現地の様子を提供してくれるのです。つまりは戦場という物語の舞台に読者をいざなうための装置となっているのです。戦場描写は確かに面白いのですが、相変わらずグリザイアの本質である説教ゲーの側面は健在しています。一人のライターが書いているので致し方ないのですが、果実からプレイしていると同じ説教内容が何回も手を変え品を変え語られるのでいよいよネタ切れも近いのか…と邪推してしまいますね。

『現実が見えてきたので少女を愛するのを辞めました。』 (かえるそふと) (2020-07-31)

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炉利ゲーに見せかけた家族ゲー。主人公は同人作家だったのですが孤独に疲れて脱オタし婚活を始めます。そこでバブミに溢れるバツイチのご婦人と知り合い結婚に至るのですが、なんと相手は子持ちだったのです。性癖が炉利である主人公は相手の婦人に対して本当に人間的に尊敬し惹かれているのですが生殖的には食指が動かないという問題にさらされてしまいます。果たして主人公は良き夫、良き父親になれるのでしょうか?というのが話のアウトライン。主人公は本当に努力していくのですが解決方法は意外な展開。なんとご婦人は最初から主人公の同人誌のファン(信者)であり、主人公の作品に救われたという過去により、何とかして意気消沈している主人公を救いたいと思っていたのです。そしてまた最初主人公を毛嫌いして徐々に仲良くなっていく娘1号も主人公の同人誌のファンであったという怒涛の展開が待っています。最後はオタク趣味が肯定され、理解者は必ずいるよと希望を与えるエンドになっています。

『かけぬけ★青春スパーキング!』 (SAGA PLANETS) (2020-08-28)

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2020年度個人的体験版がクライマックスだぜシリーズ。体験版の時点では結構盛り上がります。主人公は青春を否定し勉学とバイトに邁進する少年なのですが、結局は意固地になって支援してくれる親戚のお姉さんの話を聞かないというモノ。親戚のお姉さんはわざと悪役のフリをして主人公に無理難題を仕掛けてきます。そう、全ては主人公に本当は青春したいのだという本音を吐き出させるため。体験版では主人公がお姉さんの思惑通り、青春したいんだよーという本音を晒してハッピーエンドになります。製品版ではどんな青春が待っているのでしょうか・・・と個別√に繋がるのですが……。まぁ個別√はそれなりで、終局部では真ヒロインが出て来てゼロ年代泣きゲー展開生霊エンドとなります。雑感としてはVtuberをやってるヒロインが増えたよなぁということとVtuberってあんまり可愛くないなぁということ。私はVtuberってVtuber可憐と赤月ゆにくらいしか知らないのですが、こんな芸風が世間には受けているのねと勉強になりました。あと、複数シナリオライターの弊害ゆえにか、合気道少女がイキナリサーフィンし始めるのには驚き。だったら最初からサーファーにすればよかったんじゃないと思いましたが担当ライターがサーフィンに突如目覚めたのだろうか?

『さくらの雲*スカアレットの恋』 (きゃべつそふと) (2020-09-25)

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大正時代にタイムリープした主人公が歴史改変を目論むラスボスの野望を打破するためにループを繰り返すという話。記憶持ち越しはできないため、電報で周回を始める自分に情報を渡すという設定を取っています。この作品の一番のギミックは主人公こそが歴史の修正を拒んでいるということ。なんと主人公の世界線の2020年とは令和2年ではなかったという仕掛けを凝らしています。西暦と元号をうまく利用したトリックであり主人公は戦争のせいで隻腕になってしまっているのですね。過去を変えてしまいたいと望む主人公を癒すのがメインヒロインの役割!ということで、私たちが絶対に世界線を変えてみるから未来で待ってて!オチとなります。世界改変を狙うラスボスと戦っているように見せかけて本当のラスボスは主人公だったのさ!という所で読者は驚いたのではないでしょうか。

『ハミダシクリエイティブ』 (まどそふと) (2020-09-25)

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キャラゲー。劣等意識に苛まれながらも現実を客観的に見て陰キャぼっちであることに甘んじている主人公が突如生徒会長に仕立て上げられてしまう話です。主人公は生徒会メンバーになってくれそうな仲間を集めていくのですが、彼女たちはクリエイティブな才能を持ちながら、それであるがゆえにハミダシてぼっちになってしまっという流れです。まさにハミダシクリエイティブ!とタイトル回収。主人公が陰キャになってしまったのは理由があって優秀な妹と比較され続け劣等意識にからめとられてしまったから!実は心の内には熱いものを持っており、ハミダシモノの想いが分かるからこそ、はみ出したヒロインたちを救えるのです!シナリオとしては夢見りあむを彷彿とさせるピンクヒロインのルートが秀逸だったかな。あと体験版の時点ではプレイヤーのヘイトを集めまくりクソむかつく女設定だった元生徒会長が実は主人公のことを誤解していただけでそれなりにきちんとした人物であったというお約束を回収してくれたのがよかったかと思います。本当にデレなかったらどうしようかと。元会長√は中盤までは主人公が努力を見せ結構読める内容なのですが途中でイキナリ交通事故に会い雑に終局を迎えるので何だったんだと思うことしきり。Vtuberも声優イモウトもキャラゲーとしてがそれなりに味わいがあります。

『白昼夢の青写真』 (Laplacian) (2020-09-25)

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過去・現在・未来の3つの時間軸の文芸に関するシナリオを通してメインヒロインを救済し、さらには救済されたメインヒロインが3つのシナリオのバッドエンドを書き換えるという構成です。この構造を見た時にこれ某有名作品のオマージュじゃんと思った人は挙手をお願いします。作品としては世間ではかなり高い評価を受けていますが、既存のテーマの焼き直し感満載です。一応、3つのシナリオはメインヒロインが描いたものという設定にしてあるため、粗が目立ってもむしろそれが狙いという効果が与えられてはいますが……。そして3つのシナリオを統合するための本編となるグランドルートですが、Keyとバルドとユースティアを組み合わせたようなもの。2020年になってもセカイ系まっしぐら!終局部ではお約束のセカイor個人の二項対立を提示し、ヒロインの主体的な意思決定でセカイを救うために形而上学的存在になります→ハイパーアルティメッド世凪!!こうして世界を救って新世界の女神となった世凪はその力で3つのシナリオのバッドエンドをハッピーエンドにリライトし、八方皆良しのグランドエンドとなります。オマージュがかなり目立ちますが、CASE-2においては別々の話の面白いところを抽出して1つの作品に再構成するのも才能とか言い出すので意図的にやってるんでしょうね。オマージュの連発。

『鍵を隠したカゴのトリ -Bird in cage hiding the key-』 (Cabbit) (2020-09-25)

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延期を繰り返してようやく発売されたもののイマイチ盛り上がらなかった推理ゲー。メインヒロインがサブヒロインを庇って自分が冤罪を受け入れたというのが基本的な流れ。犯人はサブヒロインの一人の毒親であり、自分の娘に殺人の罪を擦り付けようとしていたというオチ。個人的には主人公の祖母が痴呆症になってしまい家が壊滅的な状態になってしまったという話のほうに(勝手に)共感していました。ライターの人も家庭内で痴呆症・認知症の問題を抱えていたのだろうかとちょっと邪推してしまいましたね。経験者じゃないと分からない家族の苦しみがよく描かれていました。まぁ難点としてはこの痴呆症・認知症がうまくシナリオに組み込めていないということなのですが。主人公のことをよく知る最強幼馴染メインヒロインは主人公のことを助けたい・力になりたいと思ってバッチこい状態で相談を待っているのに主人公は憐れまれたくないから幼馴染にこそ相談できないというすれ違いを表現する手段としては良い効果を発揮していると思います。しかも主人公が抱えている祖母の問題はメインヒロイン幼馴染には筒抜けであったという展開。KOTYにノミネートされてしまっており、サブヒロインの個別も微妙なものがありましたが、私はこの痴呆症/認知症問題の苦しみの描写がある効果でどうしてもKUSOとは思えない逸品となったのでした(個人的感情)。

アインシュタインより愛を込めて』 (GLOVETY) (2020-10-30)

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不治の病のせいでスカした中二病になってしまった主人公の話。主人公の不治の病は人々との因果交流によって緩和されるので、問題を抱える様々なヒロインを攻略していくことが求められます。しかしサブヒロインたちはメインヒロインのグランドルートに至るための装置!ということで結構雑に処理されてしまうのが残念なところ。体験版の時点から新島夕先生にボクシングのヒロインなんて書けるの?と注目の的になっていましたが、やはりボクシングそのものを描くことが主眼ではなく単なるキャラ属性にすぎませんでした。だったらなぜボクサーヒロインにした・・・ってツッコミどころ満載。グランドエンドでは物心二元論からの何故かバルドスカイ的なロボットバトルのノリになります。最終的に主人公のパッパの意識体は残っていた!という超展開になりロボットが起動してすべてを解決するというトンデモエンドになります(しかもパッパが活躍する描写は描かれずエンドロールとなる)。サガプラ時代の新島夕先生作品が懐かしいですね・・・

『まいてつ Last Run!!』 (Lose) (2020-10-30)

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鉄道を活用した観光振興による地域の活性化を描く作品のファンディスク。前作は良作となりFDもプレイヤーたちの期待を受けて発売されたのでしたが……様々な問題を孕んでいた為、炎上し、2020年の作品群において注目を浴びることとなってしまいました。Vtuberとのコラボ、アニメとのメディアミックス展開、現実でのコンテンツツーリズムに意識を奪われ、作品作りそのものを忘れてしまったのが本質のような気がします。シナリオにおいても、アンドロイドであるハチロクと人間の間での恋愛が雑に処理されたり、オリヴィの死生観の意義も踏みにじられたり、終局部が強引なハイパーご都合主義になってしまったりとその他いろいろと語り尽くせない伝説を生みだしました。一応擁護しておくと、テーマが家族や地域といったレベルではとても良い作品なのです。それ故、ポーレット√の家族で東北旅行をして娘の成長を促すシナリオは良作だと思っています。いやホント、ポーレットアフター結構いいですよ!おススメ!惜しむらくはなぜテーマを日本全体の鉄道政策とか中華の観光国策への提言とか無駄に広げてしまったのか。中華なんて国家規模の観光国策とかにしなくても単純に中国旅行して楽しい☆だけでも十分面白くなりそうだったのに……。

『ドーナドーナ いっしょにわるいことをしよう』 (ALICESOFT) (2020-11-27)

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資本家による超管理社会を打破するために所謂「自由恋愛の斡旋業」に従事する話。人間は必ず欲望を抱えているため、管理社会においてもどうしてもその欲求を満たそうとします。主人公たちはそれを突く事によって社会に打撃を与えようとしているのですね。所得の再分配だ!しかしながら主人公たちの行いは全て資本家のシステムの一部であることを知れ。結局は不満のガス抜きとして、掌で踊らされていただけに過ぎなかったのです。主人公たちのチームリーダーだったザッパさんが資本家の一族であり、このシステムの本質を知ったときの絶望感がハイライト。それでも主人公は統制社会に対する抵抗を唱え、ザッパさんを再転向させ大暴れ!最終的に資本家の支配から脱却します。アリスソフトの作品はヒロインたちが凌辱されてしまうシーンが用意されているのですが、手塩にかけて育ててきたキャラ達が破滅を迎えるのは痛々しいものがあります。特に黒髪くっころ武士っ子の菊千代は土下座して頭を踏みつぶされるので衝撃が大きかった……。クリア後のスタッフルームのお言葉では、菊千代さんはもともとこういうキャラとして設計されていた模様。

『天ノ少女』(Innocent Grey) (2020-12-25)

両腕が無い天使像を描いた絵画『天罰』を巡る3つの事件を解決する探偵モノ。『殻ノ少女』三部作の集大成です。私はこのメーカーの作品は『カルタグラ』で挫折していたのですが、最終作からイキナリプレイ。前2作をやっていないと詳しい背景とかが分かりませんが、まぁ分からないなりに楽しめればいいやという気分でトライ。煩雑な選択肢、捜査パートでの画面内総クリック、推理パートでの爆死が炸裂し、何回かバッドエンドを見ました。最後の方はどうしても論理的思考だけではクリアできず選択肢総当たりでパターンを全分析するというちょっと強引な手法でグランドエンドに到達という泥臭いプレイをしてしまいました。2つ目の事件から3つ目の事件に至るときにイキナリ6年経過したのは少し驚きでした。それでも単純にシナリオを読むだけでなく頭を使いながら文章を読み進めるのは面白かったですし、何といっても昭和30年代の東京の雰囲気がとてもよく表現されていてグッときました。

『星空鉄道とシロの旅』(しらたまこ)(2020-12-30)

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一風変わった形の人生救済ゲー。人生に疲弊しきって死亡した人々が、ドナーとして臓器提供されたのち、移植先のメインヒロインに生きる意思を灯させることによって、その人生を救われるという展開です。星空鉄道の機関車はメインヒロイン、その心臓は裏ヒロインのねりちゃん、旅行の参加者はメインヒロインに臓器を提供した人々、車掌ヒロインはメインヒロインの輸血者という役割配置です。旅行先で回るのは、ドナーたちにとって執着のある場所、心のふるさとであり、そこでみんなで一緒に仲良く時を過ごすことで、人生を再生されていきます。そしてメインヒロイン含めてみんなで楽しい時間を過ごすということが、拒絶反応を克服していくことに繋がるという心憎いワザマエな演出であるわけです。拒絶反応に苦しみ、他者の臓器を使って生きるという負い目を持つメインヒロインはその生命を諦めて死亡しようとします。そんな死にかけの少女を、人生が上手く行かなかった大人たちだからこそ、励ますことができるのです。「俺たちは、お前になら使ってほしいんだ」からの「俺たちでノワールを生かすぞ!」の展開はムネアツな流れ。さらにお別れのシーンではそれぞれがメインヒロインとの思い出を振り返りながら人生を託して消えていくという感涙必至の場面が提示されます。銀河鉄道の夜をモチーフに臓器移植という題材をうまく組み合わせた大変素晴らしい泣きゲーに仕上がっています。