スーパーカブ 第1話「ないないの女の子」の感想・レビュー

天涯孤独で自分には何も無いと思い込んでいる少女が原付(カブ)に生き甲斐を見出す話。
普段無表情な少女が新しく購入した中古のカブを眺めてニンマリする所がポイント。
少女は自分で自分の世界を閉ざしているのでカブがそれを広げてくれるという展開。
「ないない」と自虐するのは自分を保つためでありそこからどう解放されるのか。
また主人公を「ないない」と設定することでカブが人生を変えるという演出になっている。

セカイを閉ざしていたのは少女自身のせいであり、それをスーパーカブが変えるんだ!

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  • スーパーカブによる少女救済
    • 主人公は自分のことを「ないない」と思い込んでいる少女です。両親がいなくて天涯孤独、学校でもぼっちで、さらにお金が無いと自称しています。ゼロ年代古式ゆかしい不幸属性トラウマ持ちのキャラクター造形。少女を不幸属性・トラウマ持ちに設定することによって、そこから解放されるカタルシスを演出するという少女救済のパターンですね。本作において少女を救うことになるのはスーパーカブです。カブを買ったことによって生活に張り合いが出て、少女の人生が変わっていくのです。第1話においては、自室のカーテンを開けて駐輪場のカブを眺めたり、布でカブを拭いてあげたり、カブを眺めてニンマリしたりと少女がカブに生き甲斐を見出していく様子が丁寧に描かれており視聴者にエモさを感じさせる表現がなされています。
    • そもそも少女は客観的には「ないない」ではありません。確かに天涯孤独でかわいそうであるけれども、友人がいないのはセルフぼっちだから。カネが無いといいつつ、1DKっぽい割と広い部屋に住み、家電も揃っているし、レトルト食品を買う経済的ゆとりもあります。お風呂にお湯も張れますしガス代も気にしてなさそう。徒歩通学でもなくチャリも持ってるし。そんなわけで少女が「ないない」と自称するのはあくまでも「思い込み」であることが視聴者に対して匂わされているのです。すなわち、少女は両親を亡くしたこと等から何らかのトラウマを抱えており、その(無意識的な)防衛手段として友人を作らずセルフぼっちに身を置き自分を「ないない」ということで自己を保っていることが読み取れるのです。
    • それを象徴しているのが、トラックの運ちゃんからの救いの手を拒絶したシーン。コンビニの駐車場でエンストしてしまいその理由が分からず蹲っている時に、善意で声をかけてくれた運ちゃんを冷淡に拒否するのです。結局自分で取説読んで解決するという流れになるのですが、運ちゃんが原付の事知ってたら瞬時に解決したことでしょう。ここからも自分で自分を閉ざしてしまっていることが強調されているわけですね。
    • そんな自縄自縛でしか自己を保てない少女を救済するのがスーパーカブ。カブを購入したことで無機質な生活に張り合いが出て、趣味の縁によって関係性が広がっていくのでしょう。

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