蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2(鳶沢みさきアフター)の感想・レビュー

競技者として追われる立場になったことでメンクラした少女がそれを愛に変換して奮闘する話。
才能に恵まれた鳶沢みさきは何でも出来たため要領よく飄々として生きて来た。
だがフライングサーカスを始めたことで挫折を経験し、自分の本性が暴露されていく。
鳶沢みさきの本質はメンタルが弱く繊細で感情を拗らせがちな面倒くさい人間だったのだ。
そんな拗らせ女子みさきちを主人公くんは支え、秋の大会では見事に優勝を果たした。
だがそれも束の間、ライバルたちは徹底的にみさきの戦闘スタイルを研究し次々と襲い掛かってくる。
みさきはそれに耐えられずまたもメンクラするが真白ママ牡丹さんが説く「愛」の言葉が救いとなる。
「ライバルたちがみさきに向ける感情」を「自分のことを想ってくれる愛」に変換するのだ!

拗らせ系メンヘラガールのスポコン的愛情論

優勝し追われる立場のプレッシャーでメンタルクラッシュ
  • 【1】鳶沢みさき、またもやメンタルクラッシュ
    • あおかな本編みさき√では挫折とそこからの復活がメインテーマとして描かれました。才能に恵まれたみさきはこれまでさほど努力しなくても何でも出来たため本気で真剣に何かに取り組むということは無かったのです。そんなみさきがノリで始めたフライングサーカスですがどの競技でも上を目指そうとすれば強敵がいるわけで、ここでみさきは挫折するのです。これまで飄々と生きて来たみさきにとってそのショックは大きいものであり、メンタルクラッシュ。本編ではここで比翼連理の相互依存が発動してみさきは精神崩壊から立ち直ることになります(主人公くんは幼少期に神童と呼ばれ将来を期待された名選手であったが、期待に応え続けなければならないというプレッシャーでメンタルを病み、とある少年に引導を渡されて選手生命を絶っていたが、その少年が実はみさきだったということが判明し、お互いが傷心を舐めあって、救済し合う)。そしてみさきは夏休み中にスポコン的超特訓をし秋の大会で優勝するのです。ファンディスクはこの優勝後から物語が始まりますが、始まってすぐに精神崩壊待った無し。優勝したことで追われる立場になったみさきは多くの競技者から倒す対象と見なされ、研究され、分析され、敵意を向けられることになります。みさきはそれに耐えきれなかったのです。

 

みさき、ライバルたちから向けられる敵意を「愛」へと変換
  • 【2】みさきを救うものは競技者が持つ「愛」
    • メンクラしたみさきを立ち直らせるものは一体何か。今回の場合は競技者が持つ「愛」がテーマとなります。うどん屋ヒロイン真白ちんのママンである牡丹さんが唱えた愛の思想がみさきを復活再生させることになります(誰がこんなにも牡丹さんの言葉が重要になると予想できたであろうか)。みさきが愛を実感する場面はこうだ。挫折から復活した主人公くんは競技者として復帰する予定であり将来はみさきとも戦うことになるかもしれない。だがそんなことはお構いなしに、みさきが試合で有利になるポジショニング(対角線ショートカットの戦術)を必至に考えるのである。それをみさきに教えてしまえば自分が不利になるのも構わずに。この新しい戦術を聞いたみさきは主人公くんの姿勢から競技者が持つ愛というものを感じ取るのです。みさきを倒すためにライバルたちが研究する熱量は、みさきに向けられた愛なのだと。みさきはライバルたちが自分を倒すために磨いて来た「ナイフ」(比喩表現)に恐怖していたのですが、そのナイフは自分を殺すためのものでは無く自分に向けられた愛なのだと変換するのです(みさき√だとみなもちゃんがいい味だしており、みさきが初めて愛の試合をする相手になるのもグッとくるよね。あと男連中の生き様とかも割とすてき)。こうして復活再生されたみさきは主人公から託された対角線ショートカット、明日香から教わったエアキックターン、真白と特訓したスイシーダ、マネジのサポート、部長との筋肉、みなもとの試合等々により、同世代の中での最高の実力者である真藤一成を撃破したのでした。

 

主人公くんによるみさきちカウンセリング
  • 【3】ついに主人公くんも復活
    • 本編におけるみさき√では最後まで主人公くんがトラウマに囚われており、競技者として復活する場面はカットされて終わりました(主人公くんが抱える根深いトラウマがみさき√の醍醐味でもあった)。ファンディスク発売前においては主人公くんの復活が期待されていましたが、みさきアフターでも無事に主人公くん復活できて良かったです。
    • 今回、みさきは追われる立場になりメンクラしますが、それはまさに幼少期に主人公くんが抱えていたトラウマと同質のものでありました。主人公くんはみさきを救いたくても救えないもどかしい感情を経験し、自分の指導者であった葵さんが当時このような感情であったのかと実感することになります。葵さんが主人公くんを救えなかったのに、主人公くんはみさきを救えるのか!?これが一種のシナリオの原動力となっており、精神崩壊をどのように解消するのか見所となっていました。葵さんと主人公くんの関係を主人公くんとみさきの関係性と対比させると、一番の違いは恋人(しかも比翼連理の相互依存的な)であったかどうかといえるでしょう。お花畑の中で主人公くんがみさきのことをもっと知りたいんだと吐露するところは割と名場面。ここで上記の対角線ショートカットの話になり、主人公くんがいかにみさきのことをたくさん考えてくれているかという愛を感じます。このことからみさきはライバルたちが自分を倒すために研究・対策してくることを、愛に変換できるようになるのです。みさきが再起して空へと舞い上がる様子は、主人公くんの情熱を滾らせることになります。シナリオで主人公くんが自分のセコンドとしての力量不足を何度も感じるところが出て来たので、みさきちの専属セコンド目指すシナリオか!?とも一瞬思われたのですが、最終的に主人公くんは復活することができ、エピローグでみさきと試合をする場面で幕を閉じることになります。
自分が研究され対策を練られることを幸福に感じるみさき
愛を説くみさきとメンヘラと返すみなも
部活モノの醍醐味!仲間との絆
主人公の復活と競技愛を感じるみさき

 

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