【感想】スナメリ「十日前 10 days ago」を読んだ。

薄い本の導入部分は短ければ短いほど良いという言説が一部にありますが、それを逆手に取ってじっくりと描いたのがこの作品。タイトルにもある通り夜伽に入るまでの10日間の描写がたいへん素晴らしく、その期間を過ごす高校生のつがいの初々しい心情がとても良く表現されています。単なる消費物になりがちな商業系の作品において、キャラに思い入れを持てて尚且つ実用性も高いという逸品です。
 

 
シナリオとしては付き合いたての高校生カップルが下校中に親が留守になる話となり遊びに誘うところからスタート。しかしそれは自分の家に夜伽をしに来いといったも同義であり、なんてことを言ってしまったんだと悶々としながらその日を待つことになります。その期間が10日間であり、カウントダウン形式でそれまでの間を高校生カップルが思い思いに過ごす描写が丁寧に描かれていきます。いきなり穴に棒をツッコむことが求められる業界において、それをしないことを納得させられるだけの構成力がこの作品にはあります。竿役の男の子が部屋を掃除したりゴムをつけたりする一方、女の子側も友達に相談したり行為に思いを馳せながらお風呂で自分の身体を弄ったりします。イった後に虚脱感に浸りながらみんなに嘘ついて男の子の家に夜伽をしに行くと改めて想いを馳せるシーンは一見の価値アリ。
 

   
約束の日の1日前には、竿役の男の子が彼女を勘違いさせないようにきちんとやることを伝え、もし嫌なら一人で帰ってくれればそれで分かると告げるのですが、それに難なく「うん、わかった」と告げ、翌日当然のように待っているという展開はグッときます。約束の日に待ち合わせ場所で顔を合わせ、待ってたよ、帰ろうといってもらうシーンは破壊力バツグン。ボブヘアーを「ふわっ」っとさせる所がとても良い。
 
これから行為をするという緊張感に溢れながら家路を共にし、玄関に入った所で10日間の間に培った心情が溢れ、そのまま夜伽に至ります。ちゃんと制服を着衣したままでやるのが素晴らしいです。その後は、ヒロインの方も積極的になり、したかったことを全部しようと、お互いが力尽きるまで、寝具の上でお励みになっていきます。ヒロインが「今日までどんな想像してた?私とどんなことしたかった?おしえて。全部しよう」と誘ってくるシーンは最高にエモい。
 
ラストは季節が移ろい冬へ。しばらく行為ができなかった後、再度のチャンスに恵まれ、竿役の男子の誘いに恥ずかしがりながら、顔を赤らめマフラーに顔を埋めて同意するというコマで締めとなります。コート・マフラー・ストッキングの着衣で続編があるということですよね!