望公太(原作)・大友卓二(作画)『三番手ヒロインのその後』の感想・レビュー

ハーレム系恋愛競馬モノにおけるアンチテーゼ。お色気枠負けヒロインを題材とした話。
エロゲならともかく現代の一夫一婦制という倫理観に基づく少年誌にハーレムエンドは無い。
それ故、必ず少年誌のハーレムモノは恋愛競馬となってしまい負けヒロインが生成される。
本作品はヒロインの中でも「性にオープンなお色気枠」担当のヒロインに焦点が当てられている。
結論から言えば主人公の弟とくっつくという代替エンドが与えられ安易な救済がもたらされる。
それでも負けヒロインが抱く失恋描写は秀逸。だからこそ恋愛競馬って苦手な層も多いんだよな。

少年誌に必ず掲載されるハーレム系恋愛競馬作品に対するアンチテーゼ

ハーレム系恋愛競馬の負けヒロイン
  • 負けヒロインが可哀想という理由で恋愛競馬モノを苦手とする読者は多い(かもしれない)
    • 少年誌(または青年誌)に必ずといっていいほど掲載されているハーレム系恋愛競馬枠の作品。これらの作品では主人公は煮え切らずヒロインの気持ちを保留にして誰を選ぶかまでの過程を娯楽として読者に提供する。読者たちにはそれぞれ自分の推しがおり、彼女が選ばれなかった時には涙するのであった。そんな選ばれなかったヒロイン問題に対して様々な対案が用意された。例えば100人彼女では主人公が全てのヒロインを対等に愛し尚且つハーレム内のヒロインも互いに愛情を育むというぶっ飛んだ設定を成り立たせている。

  • 「性にオープンなお色気枠」という負けヒロイン
    • 本作の場合は、選ばれなかったヒロインが主人公の弟とくっつくという代替物救済エンドを迎えるが、選ばれなかったヒロイン及びそのヒロインに好意を寄せていた主人公の弟の心情が巧みに描かれている。「お色気枠」は恋愛競馬において必ずといっていいほど用意されるが報われることは殆どなく負けヒロインエンドとなる。そんな負けヒロインの中でも特に「お色気枠」に救済を与えているのが本作と言える。お色気枠は正攻法で主人公の好意を得ることが難しいため、自分の肉体をフンダンに使おうとする。だが一時的に主人公が靡くかもしれないが、それは単なる性欲の捌け口にしか過ぎないのである。自分の肉体を使ってせめて主人公を引き留めようとしたヒロインの健気さ、そしてそれが無意味だった時の悔しさがありありと浮き彫りにされているのだ!

  • 「主人公の弟」という立場の使用
    • そんな負けヒロインに救いを与えるのが主人公の弟。本作では負けヒロインの主人公攻略に弟が協力していたという設定であり、協力するうちに負けヒロインに惚れて行ったという流れ。主人公の弟は好きになったヒロインからは見向きもされず、むしろ自分の兄と結ばれるように応援するという苦行の日々を過ごしていた。そしてフラれた後、代替品でもいいから自分を好きになって欲しいと、これまで負けヒロインをアシストしてきた時の知識(負けヒロインの趣味嗜好の情報)を総動員して攻略しようとするのである。

  • あててんのよ」が重要な表現技法となる
    • そして本作ではお色気枠負けヒロインが使用する「あててんのよ」が重要な概念として使用される。ヒロインは決して痴女ではなく主人公が好きだから肉体的接触を重ねてきた。主人公の弟にはそれをせず、誰にでもやっているのではないと告げ、弟に対しては明確に好意が無いという証左になってしまうのである。ショックを受ける弟だが、それでも負けヒロインを思う気持ちではな負けることはない。負けヒロインは主人公と勝ちヒロインがデートをしている所を目撃し(しかも自分が欲しかったUFOキャッチャーのぬいぐるみを取られてしまったことがメタファーとなっている)敗北感に打ちひしがれる。そんな負けヒロインに対して主人公の弟は誠心誠意愛していることを伝えるのである。あくまでも自分を尊重してくれる態度を見て負けヒロインは陥落。主人公の弟がどんなに自分に惚れているかを知り、紳士的に去り行く弟を抱き締め当ててんのよをするのであった。クールに振る舞っていた主人公の弟だが「特別な相手にしかやらない」ことを思い出し、自分が彼氏枠になれる可能性があることに気付いてちょっと喜ぶところとかすごく良いよね。

  • 負けヒロインの救済のカタチとは何か?
    • こうして恋愛競馬に敗北してしまったお色気枠ヒロインに焦点を当てた本作は終焉を迎える。負けヒロインに代替物を与え安易な救済を行うのはいかがなものかという意見も散見されるが、個人的に負けヒロインが生まれる恋愛競馬モノってあまり好きではないので、こういうカタチでの救いがあるのもいいのかもしれない。あと、ヒロイン案では初期案がデザインとしては一番好きなんだけど、これだと「性にオープンなお色気枠」ではなくクーデレとか強気っ子になってしまいそうなので没になったのかもしれない。
恋愛競馬マンガ批判
負けヒロインの惨めな気持ち
負けヒロインの救済者としての主人公の弟
お色気枠負けヒロインが使用する「当ててんのよ」を新たな表現技法として昇華

元ネタは『スナックバス江』

負けヒロインに代替彼氏をあてがうことについて