『ぼっち・ざ・ろっく!』原作1巻~5巻内容まとめ

『ぼっち・ざ・ろっく!』の原作1巻~5巻を読んだ。
全体の流れとしては初ライブ編、文化祭編、未確認ライオット編、レーベル編に分かれる。
初ライブ編はアニメ第8話までの内容で仲間を集めてライブを行うまでの道程が描かれる。
文化祭編では「ぼ喜多」を中心に、後藤と喜多のそれぞれの成長が描かれる。
未確認ライオット編では後藤だけが業界で認められ、他の仲間と結束バンドで演奏をする意味が問われる。
レーベル編では結束バンドとしての力が認められ、制作費を貰って曲を作成するようにまでなる。
5巻では終盤から伊地知姉妹の絆がクローズアップされていき、ついにミニアルバムの完成音源が出来上がる。
そして伊地知姉妹が盛り上がった所で5巻ラストの特別編で伊地知家における母の死と姉妹の絆の再生が描かれる。
ここでは備忘録として各内容をまとめておく。

【目次】

1.初ライブ編(1巻)

1巻
  • コミュ障根暗陰キャぼっちが主人公!
    • 1巻はアニメ第8話までにあたる。コミュ障根暗陰キャぼっちの後藤ひとりは、中学生の時に見た音楽番組で根暗でもロックなら輝けることを知る。父親からギターを借りた後藤ひとりはそれ以来毎日6時間の練習を積み、中学3年間をギターの修練に捧げる。そこで身につけたギターの腕前はネットの「弾いてみた」動画で何万人ものチャンネル登録者を出すほどであり「ギターヒーロー」の名前は電脳空間に知れ渡った。だがリアルでは一人も友達ができず中学時代は終焉を迎え、誰も知り合いがいない県外の学校へ片道2時間かけて通うことになったのである。

  • 後藤ひとりと結束バンドの出会い
    • 後藤ひとりは高校デビューをキメようと学校にギターを持っていくが、全く効果は無かった。孤独に公園で黄昏ていると、たまたまライブのヘルプを依頼される。直前になってギターの子が逃げたので代わりに入って欲しいと頼まれるのだ。これが伊地知虹夏との出会いであり、以降後藤ひとりは「結束バンド」で活躍していくこととなる。初めてのライブはボーカルがおらずドラムの伊地知虹夏、ベースの山田リョウ、そしてギターの後藤ひとりの3人で行う。だが後藤ひとりは集団で演奏をするのが初めてで本来の実力を発揮できず、またコミュ障であったことから段ボールを被ってライブに出たため散々な結果に終わる。

  • 結束バンド初ライブ(厳密には2回目)
    • だがしかし、ハコ代を稼ぐためのバイト、逃げたボーカルギター喜多郁代の再雇用、チケットノルマ達成のための路上演奏宣伝、ライブ用Tシャツ作りなどを経て後藤さんの人間強度は徐々に上昇していく。特にライブに出る為の事前審査の時にはバンドとしての成長を問われた際に、初めて覚醒の片鱗を見せオーディション通過を果たす。だが結束バンド2度目のライブ(※喜多を入れての場合は初ライブ)の当日は生憎の台風に晒される。客入りは少なく、他のバンド目当ての客からは辛辣な言葉を吐かれる。精神的なプレッシャーを受けた結束バンドメンバーは練習通りの実力を出せず、1曲目を終了させてしまう。このまま失敗に終わるのかと思われた矢先、後藤ひとりが再び覚醒。素晴らしいギターパフォーマンスを見せたことによりバンドは息を吹き返し、2曲目以降は大いに盛り上がって成功裡に終わる。

  • 伊地知虹夏が本当の夢を後藤ひとりに打ち明ける
    • 居酒屋での打ち上げでは伊地知虹夏から本当の夢を語られる。彼女の家は母親が幼少期に死んでしまい父親は殆ど家に帰らないので実質的な家族は姉だけだと言う事。姉はライブハウスが好きな虹夏のためにバンドを辞めて、自分でライブハウスを経営するようになった事。そのため虹夏は自分のバンドを作って姉の意志を継ぎ、さらにはライブハウスを盛り上げたいのだと告白する。そして虹夏はギターヒーローが後藤ひとりだと言い当てる。オーディション合格の要になったのも、ライブで失速しかけた結束バンドを復活させたのも後藤ひとりのおかげであり、虹夏にとって後藤はまさにヒーローだったのだと。こうして虹夏はこれからもぼっちちゃんのロック、すなわち「ぼっち・ざ・ろっく」を続けて欲しいとタイトル回収してオチとなる。1巻で終結を迎えてもいいくらいのワザマエな構成。

 

2.文化祭編(2巻序盤~中盤)

2巻
  • 江の島で思い出作り
    • 初めてのライブ(厳密には結束バンドとしては2度目)が成功に終わり夏休み。結束バンドは集まっても練習とバイトのみであり、皆でどこかに遊びに行ったりはしなかった。そして夏休み終盤を迎えるが、後藤ひとりはどこにも出かけられなかったショックで鬱になってしまう。これを見たメンバーは江の島へ出かけることになり、夏休みの思い出作りを行う。

  • 廣井のライブ ~後藤を文化祭に向けて積極的にさせる装置~
    • 明けて新学期、文化祭編が始まる。後藤ひとりは文化祭に結束バンドで出場することを望むが、コミュ障根暗陰キャぼっちであるためエントリーするかどうかで苦悩することになる。後藤が出した結論は参加しないだったのだが、喜多さんが勝手に応募してしまっていた。虹夏と山田リョウの学校は高偏差値の進学校であるためバンド活動に対しては冷ややか。それ故、後藤の学校で結束バンドは公演を行うことになった。定期試験の壁をなんとか乗り切った後藤ひとりだが文化祭での演奏になかなか前向きになれない。それを見たアル中姉さん廣井きくりは自分のバンドを見に来るようにライブチケットを渡す。廣井は後藤と同じように高校時代までは陰キャであり教室の隅で大人しくしているような高校生だった。アルコールに依存するようになったのもそんな自分を鼓舞するためであった。廣井は根暗陰キャでもライブではキラキラ輝けることを実証し、後藤に多大なる影響を与える。

  • 喜多の奮闘と後藤のボトルネック奏法
    • 廣井の活躍を見て勇気づけられた後藤は文化祭への決意を新たにする。一方喜多郁代は勝手に文化祭に応募したことについて自罰意識が湧き、罪を軽くしたい一心で後藤に謝る。だが後藤は文化祭に出られることも、そこでギターソロを貰えたことも肯定的に考えていた。これに感化された喜多は文化祭に向けて更なる努力をしていく。結果的にこれは文化祭本番で実を結ぶことになる(アニメ版では捨象されてしまう原作における文化祭でのぼっちちゃんの巨乳メイド服姿はコチラ)。
    • 文化祭ライブでの結束バンドの演奏は盛り上がっていくのだが、途中で後藤ひとりのギターのペグが故障してしまう。これを救ったのが喜多のアドリブであり、後藤が立て直すまで時間を稼ぐことに成功する。突然の機材トラブルに動揺していた後藤だが喜多のアドリブに鼓舞されて復活。文化祭を見に来ていた廣井が投げ捨てた酒の空瓶を使ってボトルネック奏法を披露したのである。アニメでこれってどう表現するんだ!?と期待が集まる場面である。→→アニメでは大変素晴らしい演出だった(アニメ1期12話感想)

  • 文化祭と「ぼ喜多」
    • こうして危機を乗り越えハッピーエンドとなるかに見えたが、ここで後藤は突然舞台から身を投げ観客ダイブを決行する。後藤は前に見に行った廣井のライブで彼女が観客ダイブし胴上げされている場面を脳内にフラッシュバックさせたのである。後藤はこれを真似して自分も受けとめて貰おうと生徒の群れに飛び込むのだが、誰にも受けとめて貰えず、顔面を殴打しオチとなった。
    • それでも後藤に対する喜多の好感度は鰻登りとなり、喜多は後藤を支えて行けるようなギタリストになりたいと決意し、「ひとりちゃん」と名前呼びをするのであった。アニメ1期が文化祭までだとすると、正に「ぼ喜多」エンドで終了することになる。余談だがこれ以降(5巻までの範囲では)「ぼ喜多」の最高潮は文化祭と言うことができ、後には二人が友達をやっていくにはカースト間格差という越えられない壁が立ち塞がる。

 

3.未確認ライオット編(2巻終盤~3巻)

3-1.結束バンドの存在意義編(2巻終盤)

  • 虹夏の闇堕ち
    • 父親から借りたギターのペグを壊してしまったことを謝罪する後藤ひとり。修理すれば直るものであったが新しいギターを買うようにと30万円貰う。このお金は後藤ひとりがギターヒーローとして上げた動画を父親が収益化していたことで生み出されたカネであった。後藤は結束バンドメンバーとお茶の水へ行き新しいギターを選ぶ。そして宅録を見たいと遊びに来た虹夏の前で演奏をするのだが、その腕前は超一流であり目の前で見ていた虹夏を圧倒するものであった。虹夏はここで初めて危機意識を感じ自分たちが後藤のお荷物となるのではないかという予感を抱く。これがフラグとなっており、後藤を取材に来た音楽ライターに断罪されることとなる。

  • ぽいずんやみの断罪と結束バンドの存在証明
    • 文化祭で後藤が観客の前に飛び込み誰にも受け止めて貰えなかった動画はネット上に広く流布していた。これを見て結束バンドを取材しに来た「ぽいずみんやみ」はライブを見て後藤ひとりがギターヒーローであると見抜いてしまうのであった。ここでぽいずん氏は後藤をべた褒めするが結束バンドについては酷評。高校生にしてはレベルは高いと言いつつもガチじゃないと断罪するのである。後藤に対してはプロとして通用するのできちんとしたバンドに入ったほうが良い、こんなところにいたら才能を腐らせてしまうと述べ、ぽいずん氏は去っていくのであった。今まで後藤のことをどこか下に見ていたメンバーたちが、後藤よりも遥か下にいるという現実を突きつけられた瞬間であった。それぞれショックを受ける仲間たちだが、それでも結束バンドは止まらない。バンドの事を否定されたのなら見返すのみ。バンドの力を証明するため10代限定のロックフェスである未確認ライオットに出場しようと意気込むことになる。ここで後藤ひとりが決め顔で「未確認ライオット」のフライヤーを皆に提示する場面がアツい。

 

3-2.デモ審査編(3巻)

3巻
  • 3巻概要
    • 未確認ライオットはデモ審査・ウェブ投票・ライブ審査を経てフェス形式の最終審査へと至る。3巻はデモ審査のための新曲作りやライブ、MV作成などが中心となり、見事デモ審査に通過して幕を閉じ4巻に続くことになる。3巻からは後藤ひとりだけでなく、山田、虹夏、喜多とそれぞれの課題が見つかりキャラが掘り下げられて行く。

  • 結束バンドのライバルバンド「シデロス」登場
    • 3巻はまずライバルバンドであるシデロスが登場する。結束バンドが知名度向上のためにライブ動画をネットに上げると食いついて来たのがシデロス。このバンドはアル中姉さん廣井率いるシクハックと同じ箱(新宿FOLT)で活動するバンドであった。シデロスのリーダー大槻ヨヨコは廣井が目を賭ける後藤が気に食わず何かと突っかかってくるツンデレ。シクハックのクリスマスライブにシデロスと結束バンドが招待されるのだが、大槻は気に食わない。だがツンデレである大槻は結束バンドと交流するうちに次第にその存在を認めて行く。クリスマスライブ後には結束バンドをライバル視するようになり、未確認ライオットにシデロスも突如参加すると告げる。

  • 山田と新曲作りの苦悩
    • ライバルが設定された後は山田編が始まる。作曲担当の山田だがなかなか新曲ができないというのだ。バイトにも学校にも来ない山田を心配して山田家を電撃訪問。山田が作曲で苦悩している所をみた後藤はセッションを始め、皆で音楽を楽しむことに。これにより山田のスランプは解消され新曲が生まれる。あの後藤ひとりが山田リョウを慮ってセッションに誘うという成長が見どころ。また結束バンドを思ってるんだねと言う虹夏の揶揄に対し、普段は無表情な山田が満面の笑みでそうだよと返すところが山田編のハイライト。

  • 喜多は自分の歌が下手だと気づく
    • 山田編の後には喜多編となる。MVを作成した結束バンドだが、そのMVを何回も聞くうちに喜多は自分の歌に対して違和感を持ち始める。カラオケで高得点を出しまくり周囲からもチヤホヤされている喜多は自分を下手だと認めたくはない。そこで喜多は後藤を連れてカラオケへ行くが偶々シデロスの大槻と同席することになり喜多は自分の弱点を断罪されてしまう。今まで歌が上手いと思っていた喜多にとってはショックなことであった。だがそれをフォローするのが後藤であり文化祭以来の「ぼ喜多」描写となる。ツンデレな大槻は断罪した後で喜多にアドバイスを与える。喜多は歌を歌う上で歌詞の理解を深めたいと思い、後藤の家へ泊まり込みで遊びに来る。喜多は後藤の過去や家族を知り人間性を理解しようと試みるがなかなかうまくいかない。そんな喜多に対し、バンドを通して人生を変えようとしている点では同じ、陽キャの喜多だからこそ伝えられるものがあるとフォロー。「ぼ喜多」は最高潮に高まるが、後藤の押し入れの壁面一杯に結束バンドのアー写が貼ってあることに気付いた喜多は恐れおののき好感度が底辺にまで落ちるのであった。喜多のボーカルの努力はそれからも続き、路上ライブでは弱点を克服しい歌を届けることができたのである。

  • 悪徳業者に付け込まれた虹夏の判断ミスと結束バンドの挽回
    • 山田、喜多と続き、進級とクラス替えを経て、最後は虹夏の番となる。虹夏はブッキングライブの依頼を受けて意気揚々となるが、その箱は空いた枠を埋めるためにテキトーな芸人や地下アイドルを寄せ集めるだけの悪徳業者であった。星歌はそれを知っていたためやんわりと止めようとするが却って虹夏と仲違いしてしまう。事実を知って落ち込む虹夏だが、そんな虹夏を励ますのは山田リョウ。脳天にチョップを入れるとここにいる観客全員をファンにするライブをすればいいと励まし本番に向かう。
    • 虹夏は持ち前の明るさを発揮してドラムで雰囲気を一変させバンドのメンバー紹介をしてライブに臨む。このパフォーマンスがウケ、ロックを聞かない他の客たちも結束バンドに興味を向かせるのだ。そしてその演奏は多くの客の琴線に響くものであり、楽しさを伝えることに成功する。これを見たぽいずんやみ氏はこれまで後藤ひとりだけを評価してきたが結束バンドそのものを評価し始めるのであった。
    • ライブ後、虹夏は星歌に素直に謝罪して和解。星歌との過去を思い出して自分のメンバーを作れと言われた虹夏が、いま改めて「私の」メンバー凄いでしょ!と姉に決め顔する姿がグッとくるものになっている。3巻ラストは遊園地回。デモ審査の結果発表日に気を紛らすという名目で遊びに来た。結果的にデモ審査は通っており、一歩先へコマを進めることになった。

 

3-3.web審査・ライブ審査編(4巻前半~中盤)

4巻
  • web審査編
    • 4巻は3巻に比べると軽い内容になっている。デモ審査が通った結束バンドはweb審査に備えて広報・宣伝活動を行う。ここで家族や友人、ブッキングバンドで知り合った人々などこれまで培ってきた成果を後藤ひとりが振り返る感動的なイイハナシダナーとなっている。特にギャグネタとしては、後藤ひとりの母親が高校生のコスプレをし、スマホ片手に片っ端から啓蒙活動を行うなどのきらら特有の若づくりママのネタが見られた。
    • だが中間発表では100組中48位に終わり、30位以内に入らなければライブ審査にも進出出来ない。結束バンドには、これだけやっても48位という停滞感が漂う。これをぶち壊すことになるのが後藤ひとり。後藤は何故かシデロスの練習に誘われることになり参加。そこでは上手くコミュニケートすることができず腫物のように扱われてしまうが一旦合わせが始まると後藤も参加し、シデロスの熱意に感化される。これにより奮起した後藤ひとりはメンバーに自分から練習を呼びかけ。「あの」後藤の能動的な行動を見たメンバーは落ち込むことをやめて、前を向く。そんな折、ライターのぽいずんやみが結束バンドを評価する記事を書いてくれて、最終的には28位で滑り込むことになった。

  • ライブ審査
    • 後藤と喜多の学校での壮行会、息抜きの下北街歩きを経て、いよいよライブ審査へ。後藤家は一家総出で応援に来る。新宿フォルトで行われる審査会ではシデロスとケモノリアの二大巨頭が圧倒的であった。2組のバンドを聞き怖気づきそうになる結束バンドのメンバーたち。だがここでも後藤ひとりが覚醒。web審査の決まり手となった結束バンド上げの記事を書いてくれたのがぽいずみやみさんであることを知ると覚悟を決めるのである。普段はMCで喋らない後藤がここで何故未確認ライオットに出たかを語るところが最大の見せ場!4人でバンドをやる意味を聞かれ、その意味を示すために演奏するのだと語りかける。「けっ、結束バンドの結束力 観てください」のコマの後藤ひとりはカッコいいこと限りなし。ぽいずん氏は結束バンドの演奏を見て後藤ひとりの技術向上だけでなく、バンド全員の成長を知る。「全員が変わってるんだ!バンド全体がこの子を支えるように。この子がバンドを支えるように―」と。こうして結束バンドの演奏は前代未聞の大盛り上がりで終わるのだが……。

  • ファイナルステージ
    • 結局、ファイナルステージに進んだのはシデロスとケモノリア。ファイナルステージでも優勝したのはシデロスだった。結束バンドはファイナルに出られなかったものの、この最終審査を見に来ており、フェス終了後に後藤ひとりは悔し涙をボロボロとこぼす。これまで承認欲求に囚われて来た後藤が、力を認めてもらうとかではなく皆で大きいステージに立ちたかった、もっとたくさんの人に結束バンドの曲を聞いて欲しかったと述べるシーンは感動間違いなしである。後藤につられて虹夏も泣き出し、結局みんな泣いて終わる。だがこれで終わりではなく、ぽいずんやみの紹介により結束バンドにレーベルの話が持ち掛けられた。

4.レーベル編(4巻後半~5巻)

4-1.契約編(4巻後半)

  • レーベル契約を結ぶ
    • レーベルの話を聞きデビューした気分になった後藤と山田は豪遊して散財してしまう。だが話をよく聞くと、お試しで製作費を出してくれてサブスクや配信サイトで結果を残せたらミニアルバムを作れるという内容であった。すぐに継続的にカネを貰えると思っていた後藤と山田はショックを受ける。曲に製作費が出る以外はこれまでの活動と変わらなかったのである。ここでもまたギターヒーロー問題が発生するが、今度のレーベル契約では後藤ひとりだけではなく結束バンド全体が評価されていたため、この問題は収束し、結束バンドの力が認められる証左ともなった。こうして、これからの活動が楽しみだ!と新曲作成を目指すことになる。

  • 自動車学校と山田家のプライべートビーチ
    • 新曲作成前に虹夏と山田の自動車学校編が挟まる。機材を運ぶのに免許が必要であろうと取りに行くのである。ここで虹夏がダメンズスキーのDV男に引っ掛ける女というだけでなく、山田もまた虹夏に依存していることが描写される。自動車学校で忙しい虹夏と全然会えなくったので、山田も一緒に免許を取りに来たのであった。シデロスの大槻も免許取得に来ておりマニュアル車マウントを取ってくる。
    • 自動車学校編の後は、山田の別荘編となる。プライベートビーチで海水浴や肝試しを楽しむ結束バンドの日常が描かれる。だが肝試し中に、かつてクラシックをやっていたという山田の母の部屋を発見。楽器が揃っていたので、皆で新曲開発をする流れになる。こうして夏休みイベントを経て新曲の構想が固まり5巻に続くことになった。

 

4-2.曲作り編(5巻前半~中盤)

5巻
  • 後藤ひとりの編曲
    • 従来は後藤作詞・山田作曲でやってきた結束バンド。だが曲にカネを出してもらえるようになったので、皆で担当を色々と変えてみることに。今回後藤は編曲を担当することになったが、いつものように見栄を張った結果大わらわ。全然編曲が進まない。そんな後藤を助けることになるのが後藤父。最初はバンド経験者である父親の過去自慢ウゼェと思っていた後藤だが、まずは出してみることが大事と説かれる。この説教が後藤の琴線に触れることになり編曲は完成に至る。
    • 父親の説教は創作する万人に当てはまることでもある。「自分のいいと思ったものが必ずしもウケるとは限らないし、その逆だってある。出さない限り誰の感性に刺さるか分からないんだから、まずは誰かの耳に届けないと」という台詞は含蓄深い。そしてトドメの一言。「それに結束バンドの皆は今更見栄はる仲じゃないだろ!どんなものでも受け止めてくれるよ!」という言葉が背中を押すのだ。
    • こうして完成版をメンバーに見せるが、案の定ウケは良くなかった。だが山田から一部分は評価され後藤の自尊心は砕かれずに済む。そして山田は後藤の操縦が上手く、後藤の編曲の才能に時代はついてこれないから最終兵器にすると褒め殺し、婉曲的に戦力外とするのであった。

  • 新キャラ登場~体育会系後輩大山猫々&地下ドルの日向恵恋奈
    • スターリーのバイトに新キャラ追加。一人目は後藤・喜多の学校の後輩である大山。彼女は中学時代バスケに打ち込んだ超体育会であり、その暑苦しいノリは後藤を苦しめる。体育会系とバンドなど似ても似つかないものだがなぜ大山はバイトに来たのか?それは結束バンドのライブを見て後藤に憧れたからであった。大山は低身長(146)であったため主役になることが少なく常々不満を抱いていた。だが高校進学後に見た結束バンドのライブで、後藤が一番目立っていたことから憧憬の念を抱いたのである。中学時代に3年間毎日6時間練習に打ち込んだ後藤のストイックさも大山に懐かれる要因になった。
    • 新人二人目の日向は実は初登場ではなくブッキングライブで一緒になった地下ドルの一員。リーダーが進学後大学デビューしたため地下ドルは解散となった。アイドル道が断たれた日向に救いを与えたのがバンド女子。しかし本人がバンドをするのではなく結束バンドの推し活をすることになる。日向の本担は山田であると公言しているため喜多とのバトルが始まりそう(いや喜多はもう既に山田の本性を知っているためそんなには入れ込んではいないか)。日向のバイトとしての活躍はバンドとコラボしたドリンク作りであり、これが星歌にウケ、早くも後藤は先輩バイトとしての地位を失陥した。

  • 後藤ひとり、カラオケでチヤホヤされるの巻
    • 高2の2学期が始まる。クラスメイトたちは後藤たちのフェスを応援していたのだが、誰も未確認ライオットのことに触れて来なかった。それどころか後藤は喜多以外と喋ることはなかったのである。だがそんな後藤に対してサプライズイベント。なんとクラスメイトたちはカラオケで慰労会を開いてくれたのである。クラスメイトからチヤホヤされまくる後藤と喜多。漫画版では喜多の陽キャウザさが描かれることが多いが、ここでも喜多のウザさっぷりがスゴイ。一方後藤はギターを始めたきっかけでもあるチヤホヤされたいという欲望の快楽を現実で初めて味わうことになり、中毒性を増加させる。この慰労会は喜多と後藤にアルバム発売へ向けて奮起させる役割を持っており、レーベル編は続いていく。

  • 喜多郁代の作詞編~インスタ蠅中毒の詩~
    • 今回も喜多の陽キャウザさがクローズアップされる。レーベル編ではメンバーがそれぞれ役割分担を変えることになったことは上述したが、今度は後藤に代わって喜多が作詞をすることになる。喜多は陽キャリア充恋愛ソングを作ろうとするがなかなかうまくいかない。後藤はぼっちの怨念を歌詞に昇華していたが、陽キャな喜多にはテーマも思想も不満も無かったのである。
    • そんな喜多の起爆剤となるのが体育会系後輩の大山。彼女がギターを買いたいというので、渋谷に行くのだが、ギターの最安値を求める中で喜多がインスタ蠅文学に目覚めるのである!ギターの値段は高いものであり後藤のギターを例にしても、初代ギターは50万円、2代目は6万円した。大山は諦めようとするが喜多は火がついてしまいハードオフ巡りを敢行して栃木まで行くのである。ギターは無事に買えたのだが、あまりにも遠出したためギョーザを食べて行くことに。宇都宮といえばギョーザだよね。喜多はいつものようにグルメ写真を撮りインスタに上げるのだが、ここでSNSでの紹介文が評価されるのである。これを歌詞に応用することができないか!?ということで喜多はインスタ蠅文学により結束バンドの歌詞を書き上げることができた……
    • だが、その内容は駆け落ち逃避行をするものであり喜多の人間性が疑われることとなった。またこの回でも後藤が喜多に絡もうとした結果ウザ絡みに終わってしまい好感度を激減させている。当初は「ぼ喜多」の関係性が「尊い」ものであったが最近では後藤の陰キャっぷりに喜多が「ドン引き」する展開が増えているんだよなぁ。

4-3.ジャケットデザインとレコーディング~伊地知姉妹√~(5巻終盤)

  • ミニアルバムのジャケットデザイン ~伊地知姉妹×後藤ひとり!3Pお泊り~
    • 様々な苦労を経て後藤が作曲を担当した曲が完成し、ついにミニアルバムの曲が全て揃うこととなった。レコーディングに備えて練習あるのみだが、後藤は熱中した余り終電を逃してしまう。始発を待つため野宿をキメようとする後藤だが、見かねた虹夏が家に招くことになる。伊地知家では星歌が料理を作ってくれて、後藤は虹夏の部屋へGo!だがその部屋は山田に浸食され山田ナイズされた部屋であった。虹夏、やはりダメンズ好きDV彼氏持ちだったんだね……。また虹夏の写真からは特別編「星に手向けるあいの花」の伏線も張られた。
    • 後藤は虹夏の部屋に滞在中、ジャケットのデザインを一緒に考えることになる。もう既に案はでていたが、虹夏は納得できていなかったのである。そしてここでも唐突に喜多ウゼェネタが挟まる。ジャケットに写真を使わない理由としてインスタ蠅SNS中毒の喜多がうるさいことが挙げられ、後藤も大いに共感する。結局、このデザインは星歌が手を加えることで虹夏も満足するものに仕上がった。ジャケットが仕上がった後はゲーム大会に興じることに。星歌・虹夏・後藤の3人でイカゲームを楽しむ。後藤はゲームでムキになる二人を見て、伊地知姉妹の絆の深さを知るのであった。

  • スタジオレコーディング編 ~収録が上手くいかず落ち込む虹夏を星歌が救う~
    • ミニアルバムの曲が揃ったのでレコーディング。だが虹夏は初めてのレコーディングで失敗ばかり(ちなみに後藤は観客がいないためライブで演奏を披露するよりも調子よくレコーディングできた)。落ち込む虹夏をフォローするのはいつだって姉の星歌。虹夏の為にコネや伝手を使ってドラマーを召喚する。現れたのは星歌が組んでいたバンドのドラマーで現スタジオミュージシャン。虹夏のためにアレコレとアドバイスを行う。虹夏はクリックに合わせようとするあまり固くなってしまっていたのだ。合わせるのではなくグルーヴを感じよという助言により虹夏は自分が結束バンドの道標だと覚醒し演奏を成功させるのであった。個々の収録はつつがなく終わり、それをMIXさせた音楽を聴いた際、星歌は痺れるような快感を得る。アルバムの完成音源が出来ると虹夏はいの一番に星歌に手渡す。ツンデレの星歌は厳しいコメントをする一方ですぐにデレ化し、セカンドアルバムに期待だなとその将来性を嘱望するのであった。

 

特別編「星に手向けるあいの花」

特別編「星に手向けるあいの花」
  • 星歌が虹夏を想って設立したライブハウス「スターリー」の由来は亡き母へ光を届けること
    • 伊地知家の姉妹の絆は如何にして育まれたかという話。星歌21歳、虹夏9歳の時に母親が交通事故で死んだエピソードが描かれる。今でこそバンドやライブハウスが大好きな虹夏だが、かつてはそれらを敵視していた。何故かと言うと星歌が音楽に夢中になり虹夏をかまってくれなくなったから。星歌にとってライブとバンドが青春でありそれ以外は夾雑物であったのだ。姉妹の関係が上手くいっていない様子を見た母親は二人の仲裁を試みる。虹夏に対しては夢を追う事の素晴らしを説き星歌をフォロー。プチ家出してしまった星歌に対しては姉妹仲の重要性を諭し虹夏への配慮を願う。
    • だが星歌と虹夏が和解しないまま、母親は交通事故に巻き込まれ死去してしまう。母の死に対して向き合えなかった星歌はバンドとライブに逃避し家のことなど放置していた。けれども突如父親から連絡が入り家に帰ると現実を知る。母親がいなくなったことで家の中は滅茶苦茶となり、虹夏は不登校に成り果てていた。星歌は虹夏に学校に行くように呼び掛けるが、まだ虹夏は一人で髪も結えないという事実を突きつけられる。ここで星歌は母の死と向き合わず逃げていたことを自覚。母がもうどこにもいないことを改めて噛み締め、母が残した虹夏と世界一仲の良い姉妹でいることという誓いを守る決意をする。
    • 星歌は虹夏の髪を結んであげるとライブに連れ出す。そこで虹夏が見たものは、ライブで輝く姉の姿であった。虹夏は姉の姿に感銘を受け、亡き母が残した「夢はね。どんな辛いときも道を照らしてくれる光になるんだよ―」という言葉を思い出しながら笑顔を浮かる。そしてその笑顔を見た星歌はこれからずっと虹夏の笑顔を見たいと人生の道を決める。ライブ後、星歌は虹夏に対し支えあって生きていこうと契りを交わすのであった。このライブにより虹夏はドラマーを目指すことになり、星歌は虹夏の笑顔を守るためライブハウス創設を考え始める(これにはドラマーのリナさんが大きく関わっているのでなぜ虹夏が本編でリナさんのことを忘れていたのかは最大級の謎)。
    • ラストはライブハウス「スターリー」の名前の由来が回収されてオチとなる。「このライブハウスでたくさんの星と同じくらいのバンドが活動して、母さんに届くくらいの輝きを放つ場所になりますように……って」。こうして原作では1巻ラスト、アニメでは8話終局部で語られた虹夏が大好きな姉のためにバンドをやってることの淵源が今ここに明らかにされた。

『ぼっち・ざ・ろっく!』感想まとめ