ウマ娘「ゼンノロブロイ」シナリオの感想・レビュー

地味で目立たないが故に承認欲求が人一倍強い少女と共に英雄譚を紡ぐ話。
ゼンノロブロイは本好きで名前の由来ロブ・ロイの様に英雄になることを夢想していた。
だがデビューが遅れ結果も残せず誰からも注目されなくてひとり焦燥感に駆られていた。
ロブロイは目立ちたいという承認欲求を抱えながらもそんな自分のことを嫌悪していた。
二律背反な感情を理解し承認欲求を肯定すればフラグ成立!二人で英雄譚を紡ぐことになる。
頭の良いロブロイは自分の中の独占欲や理想像の押し付けに気付いて苦悩するが……
その都度トレーナーさんがロブロイの不安や悩みを拭い去るのである!

ゼンノロブロイのキャラクター表現とフラグ生成過程

地味で目立たない少女が承認欲求のために走ることを肯定せよ!
  • 強すぎる承認欲求へのアンビバレンツな想いとその肯定
    • ゼンノロブロイは内向的で大人しい文学少女。自分のことを地味で目立たないと評しながらも、自分の名の由来の様に英雄になりたいと心の奥底では拘っていた(内向的な少女のチヤホヤされたいという承認欲求の強さと書くと後藤ひとりを思い起こす)。ロブロイとトレーナーの馴れ初めは図書館での本探し。ある時トレーナーは英雄の様な走りをするウマ娘にインスパイアされ英雄に関する本が読みたくなって図書館にやってくる。その際に本探しを手伝ったのがロブロイであり、彼女はトレーナーの英雄探しを手伝いたいと申し出て来る。
    • 二人が交流を重ねているうちに学園の教官からロブロイの不調を聞かされたトレーナーは彼女をケアすることになる。ロブロイは弱い自分のことを知られ不甲斐なく思い、思わず逃げ出してしまうのだが……。ロブロイの行先を推察して追いかけ、その苦悩に寄り添うことができたならフラグは成立!トレーナーはロブロイの複雑な心情を慮ることになる。ロブロイは自身のことを地味で目立たないどころか、デビューが遅れ、結果も残せないと自嘲する。英雄に強い憧れはあるが自分が走る理由に特別なものは無く、英雄になりたいというのもただただ目立ちたいがための手段。すなわち承認欲求が走る目的なのだと。自分には崇高な走る目的など無い。だけれど英雄にこだわりたい。そんな二律背反・アンビバレンツな気持ちをロブロイは爆発させるのだ!!トレーナーはそんなロブロイの複雑な心情を否定することなく、その強すぎる承認欲求を肯定する。ロブロイは自分のノートを単なる妄想を垂れ流したものだとして捨てて欲しいと述べてしまうが、トレーナーはそれに『ゼンノロブロイの英雄譚』と名付け、二人で英雄を目指して物語を綴っていこうと誓う。
    • トレーナーからトレーニングを受けることになったロブロイは走る楽しさを思い出していく。ロブロイは能力的には実力を秘めていたのだが、焦燥感や怪我の影響により身体がチグハグになっていたのだ。こうして着実に力をつけて行ったロブロイの前に立ち塞がるのがシンボリクリスエス。レースで出遅れたロブロイは途中で挫けてしまいそうになる。だがここでトレーナーの声援がロブロイの心に火を灯すのだ!!クリスエスに勝てば自分が主役の物語ができる。そしてそれをトレーナーに見てほしいと願うロブロイはその高い実力を発揮する。レースではクリスエスに敗れてしまったもののその走りは大変素晴らしいものであり、まさに「英雄」を思わせるものであった。つまりは、トレーナーが一番初めに惚れこんだ英雄のようなウマ娘とはロブロイのことだったのである!こうして二人は相思相愛になりフラグが成立した。

  • 理想像の押し付けかそれとも信頼か
    • トレーナーと専属契約を結んだロブロイは幸せな毎日を過ごす。トレーニングは充実しているし、トレーナーさんは優しく誠実で自分のために色々と良くしてくれる。ロブロイは友人に思わずそれを惚気てしまう程であった。だが頭の良いロブロイは自分がトレーナーに理想像を押し付けているに過ぎないのではないかと疑心暗鬼に駆られる。最近の二次創作で激重サクラローレルナリタブライアンに自分の理想像を押し付けるファンアートが流行ったが、自分がソレをしているのではないかと不安になるのだ。
    • トレーナーのことを何も知らないことに気付いたロブロイは、彼の事を知るためにお出かけをするのだが、そこでやはり自分の思い込みの理想像を押し付けていることを確信してしまう。トレーナーさんが読んでいた本は専門書ではなく漫画だったし、道案内をしてあげているとおもっていたらジムの勧誘だった……。理想像の押し付けをしていたことを自己嫌悪するロブロイはまたもや不調になってしまう。
    • だがトレーナーさんの同僚から真実を聞かされ、その考えを改めさせられることとなる。トレーナーさんが漫画だと言っていたものは、「漫画で分かる」シリーズであったし、ジムの勧誘もロブロイのトレーニングのために体力をつけるものであった。トレーナーの行動はいつだってロブロイのためのものであったのだ。こうしてロブロイは自分がトレーナーに対して抱いているものは理想像の押し付けではなく信頼なのだと気付く。さらにトレーナーはロブロイの理想のようになりたいと追い打ちをして好感度をカンストさせていく。トレーナーさんの行動原理に気付いたロブロイが、私の「せい」ではなく私の「ため」と述懐するところは一見の価値アリ。夏の夜の花火の下で、ロブロイは自分を英雄と称するのに臆することもなく、トレーナーを大切にしたい、温かな人と好意を告げるのであった!
トレーナーに対して独占欲を発揮するロブロイ
トレーナーに自分の事を見て欲しいと覚醒するロブロイ
惚気るロブロイ(左)と理想像の押し付けではないかと疑心暗鬼になるロブロイ(右)
理想像の押し付けではなく信頼だと確信するロブロイ
トレーナーへの想いを伝えるロブロイ