2011年以前にやったゲームの感想です。
一応結構書き溜めてあるのでそのうち移行するつもり。
榊原拓・内田ヒロユキ・安西秀明『穢翼のユースティア』 (AUGUST) (2011-04-28)
大災害をきっかけに底辺層に堕ちて汚泥を啜って生きる事になったカイムさん。カイムさんは日々を生き抜くことが精一杯であり「人間はただ生きるだけであり生きることに意味などない」という思想に達していた。しかしヒロインたちはそれを否定する己の信念と生き様をカイムさんに示していく。ヒロイン達に影響されたカイムさんは最終的に転向し「主体的な意志の確立」を見出していく。カイムさんゲーであるため、攻略ヒロイン達はカイムさんが成長するための装置として扱われてしまう傾向にある。最終章までヒロイン達に偉そうに説教をしていたカイムさんが最終章では始終ウジウジし、革命まで起こされて逆に説教されるという展開がステキ。セカイ系を否定していたカイムさんが、最終的に愛する女のためなら世界を滅ぼしても構わないという主体的意志に達する一方で、カイムさんから愛を受けたメインヒロインが世界と同化してカイムさんを救うことに自分の存在意義を見出していく、という流れになっています。シナリオはほぼ1本道であり、ヒロインを攻略することを放棄して、己の人生哲学を持つ主人公くんが思想を変化していく様子を丁寧に描いたことに歴史的意義があります。オーガストの作品群の中でも屈指の出来と言えるでしょう。
林直孝、谷崎央佳『STEINS;GATE』(NitroPlus、2010-08-26)
確定された幼なじみの死を救うため、葛藤しながらタイムリープを繰り返すというもの。時空移動について空想科学の背景が綿密で、SF的な解説をしてくれる所がグッときます。ヒロイン救出の可否が管理社会のディストピアか、それとも第三次世界大戦かに繋がっているところも興奮する要素となっています。主人公くんの苦悩と煩悶が光る主人公ゲーとも言えるかと。ガラケーを利用しながらメールを送りつつ選択肢を進めていくのも時代性を感じさせます。