「高等学校世界史B主題学習「世界史への扉」に関する授業開発 ―日常生活からの世界史―(案)」

1.学習指導要領における「世界史への扉」

平成21年版学習指導要領における「世界史への扉」に関する記述
  • 平成21年版

自然環境と人類のかかわり、日本の歴史と世界の歴史のつながり、日常生活にみる世界の歴史にかかわる適切な主題を設定し考察する活動を通して、地理と歴史への関心を高め、世界史学習の意義に気付かせる。

平成21年版「世界史への扉」に関する解説

  • ねらい
    • 世界史を学ぶ際に必要な視点を示し、地理と歴史への関心を高め、世界史学習の意義に気付かせる
  • 興味関心・学習意欲
    • 世界史学習への興味・関心を高め、学習意欲を持続させるためには、生徒のこれまでの生活経験や中学校までの学習経験を踏まえ、学習の動機付けをする必要がある。
  • 必履修科目としての日本史と地理との関係性
    • 世界史は地理歴史科共通の必履修科目として位置づけられており、学習の導入時期において、地理と歴史、日本の歴史と世界の歴史が密接に結び付いていることに気付かせることが求められる。
「世界史への扉」の内容構成
  • 中項目「ア 自然環境と人類のかかわり」
  • 中項目「イ 日本の歴史と世界の歴史のつながり」
  • 中項目「ウ 日常生活にみる世界の歴史」
内容の取扱い
  • 扱う中項目
    • 全ての中項目を扱う
  • 主題の実施時期
    • 「ア 自然環境と人類のかかわり」を導入とする
    • 「イ 日本の歴史と世界の歴史のつながり」と「ウ 日常生活にみる世界の歴史」はできるだけ早い時期の実施が望ましいが、より効果的な指導ができるよう適切な時期に実施することができる
  • 主題の設定について
    • 歴史を身近に感じたり、実感的にとらえたりできる事例を取り上げ、それをもとに主題を設定する
    • 各中項目で一つないし二つ程度取り上げる
  • 主題の考察について
    • 諸資料を積極的に活用するとともに、作業的、体験的な学習活動を適宜取り入れる
    • 過去の出来事を時間を追って暗記するのではなく、歴史に問いかけたり、自ら課題を発見したりして、学習に主体的に参加し、考察することの大切さに気付かせる
    • 「世界史B」の導入的性格の内容であることを踏まえ、教師が主題を設定し、考察の過程を示しながら指導するなどの工夫が求められる。
「世界史への扉」に関する先行研究
  • 高田法彦「世界史B「世界史への扉」を考える」
    • 4種の教科書分析をした後で、楽器の世界史の展開例を紹介している。

2.内容(1)「世界史への扉」中項目「ウ 日常生活にみる世界の歴史」

学習指導要領における内容(1)中項目「ウ 日常生活にみる世界の歴史」に関する記述

日常生活にみる世界の歴史について、衣食住、家族、余暇、スポーツなどから適切な事例を取り上げて、その変遷を考察させ、日常生活からも世界の歴史がとらえられることに気付かせる。

内容(1)中項目「ウ 日常生活にみる世界の歴史」に関する解説
  • ねらい
    • 世界の人々の身近に存在し、日常的に利用したり、習慣化したりしている事柄に着目させ、その起源や変遷などを考察させる
    • 日常生活からも世界の歴史がとらえられることに気付かせる
  • 学習の効果
    • 日本と世界の諸地域との接触・交流の軌跡や、生活・文化の地域的特色について気付かせることができる。
    • 世界史への興味・関心や学習意欲を高める
中項目ウに関する学習活動の事例の提示における「食」についての記述

平成21年版学習指導要領解説には、中項目の学習活動例が提示されており、「衣食住」が取り上げられている。

  • 食事については以下のようなことなどが考察させられると述べられている。
    • 世界の諸地域間の交流を通じて人々の食生活の在り方が変わってきたこと
    • 栽培・飼育方法の改良や、発酵・冷凍保存の技術開発が人々の生活に大きな影響を与えてきたこと
モノに関する世界史の先行研究
  • 西牟田哲哉(愛知教育大学附属高校)「現代の日常生活から「世界史への扉」を開く授業構成の研究―モノの歴史から社会構造へ―」愛知教育大学教育実践センター紀要第4号 2001年 239-248頁
    • 「日常生活」を現代の高校生の日常生活と規定し、彼らにとって本当に身近に感じられる「モノ」として、「商品」を素材としながら、社会構造の歴史的解明につながる主題学習を目指し、「チョコレート」の授業展開例を提示している。