紙芝居ゲー衰退論争についての雑感

人々が紙芝居ゲーに飽きてきていることが指摘されている。
その原因は「メーカーが提供するシナリオの質の低下」と「消費者が求めるシナリオの質の上昇」によるところが大きいとされる。

私が考えるには、1年に1本名作が出れば十分だと思っているが、商業上それすら危険視される状況にある。それは「良いシナリオを書くこと」に対して商業側の熱意が余り感じられないということである。勿論ライターの皆さまは(世の中に売れる事と自分が表現したい事の間を揺れ動きながら)良いシナリオを書こうとしているだろう。しかし商業側は「商品を多く売り利潤をあげる」ことからは逃れられない。

では手っ取り早く商品を売るためにはどうすればよいであろうか。それはオマケ商法である。どこのメーカーを見ても予約特典・初回特典・店舗特典・期間限定ダウンロードなどが盛んである。今の時代でオマケ商法をやらないところは殆どないだろう。また過去に人気の出た続編をちらつかせて新作を買わせるメーカーなども存在する。そのため新作発売日の次の日にPCゲームショップに行くと、昨日発売された新作が、特典だけ抜き取られて半額に近い値段で未開封状態で売られているのである。

つまりはメーカー・小売業者・転売屋が結託することで商業上の利益だけあげる体制が構築されているのである。すなわち、ゲームをきちんとプレイしない特典転売屋さんが、店舗ごとに違う限定品を手に入れるためプレイしない商品を大量に買うので、メーカーに充分な利潤が出てしまい、メーカーは「シナリオの質を高める」努力をしなくなってしまうのである。故に消費者が欲望する記号や属性のパーツを組み合わせてキャラクター造詣を行い、それを消費者が欲望するシナリオパターンに組み込ませて紙芝居が量産されていく。こうして「どこかで見たことのあるようなキャラ」が「どこかでみたことのあるような物語」を消費するだけの粗製乱造品が巷に溢れることになるのである。

こうするともう負のスパイラルに陥ってしまう。シナリオの質が低いから本当に作品をプレイする消費者が紙芝居ゲーから離れていき、商品が売れなくなるからこそメーカーはますます小売業・転売屋さんと結託してオマケ商法に力を入れ当面の生き残りを図り将来の滅亡から目を背けようよする。こうしてさらにシナリオの質は下がっていく・・・。これは石油危機に際してオイルマネーで利益を上げたロシアで技術革新の必要が生じなかったため結果的に産業全体が衰退したのと似ている。また、日本のケータイ業界が年数縛りや料金プランなどで利益を上げた結果ケータイ本体そのものはガラパゴス化して衰退したのとも似ている。